第25話 狩りの後



 パーティを全滅させた後は、手に入れたアイテムの確認していた。殆どは消費品や素材だったが、1つだけ当たりが混ざっていた。それが、これである。



七つの不思議な鍵Ⅲ レア度:D

 不思議に包まれた鍵。もし、7つの鍵を集めた場合は何かが起こるかも……?

※譲渡・売却不可能



 説明がこれだけで良くわからなかったので、wikや掲示板で調べてみたら……わかったのは同じ鍵、七つの不思議な鍵である綺麗な鍵か古い鍵を七個集めれば、中身がランダムの宝箱が現れるらしい。名称に付いている数字は集まっている鍵の数になり、レア度も最初はFだが、綺麗な鍵を見つけることで、ランクが1つ上がる。汚い鍵は数字が上がるだけで、レア度は上がらない。

 それらの鍵は何処かの宝箱に入っており、その宝箱を開けて見つけた瞬間に吸収されるので、綺麗な鍵だけを狙うのは不可能になっている。譲渡と売却は不可能だが、奪うことは出来るようだ。

 そして、7つの鍵を集めてレア度を上げていけば、宝箱の中身が鍵のレア度以上の物が入っているのだ。つまり、レア度:Aなら、AかSのどちらかが入っている訳だ。レア度:Fであっても、Sのチャンスもあるが、それは極僅かな確率なので、難しいらしい。


「これはⅢだから、あと4個集めればいいのね」


 意識して宝箱を探し回るのもゲームを楽しんでいると言えるが、ヨミにしたら宝箱を探すよりもプレイヤーを襲って奪った方が楽しいし、楽だ。


「ふんふん~~あ…………」


 アイテムリストを見ていたら、1つの物に目が着いた。




毒薬×30




 ルイスから貰った毒薬、今まで一回も使ってこなかったことを思い出した。


 やっぱり、私は毒を使わないんだよねぇ……。


 このまま、持っていても勿体ないだけなので、帰り道にモンスターを見つけたら、使ってみようと思った。

 いざと、使ってみようと思った先にモンスターがなかなか現れない。夜も近いので、プレイヤーも見かけない。そして、誰にも会わないまま街の近くまで着いてしまった。


 なんで、こんな時に何も現れないのよ!? ……おっと、仮面を外さないと。


 街に入る前に、仮面を外しておく。顔から仮面を外してアイテムボックスへ入れるが、装備欄からはステータスカードを操作して外さない限りは、装備されたままとなっている。


「おおっ、ちゃんと名前は出ないのね」


 イエローやレッドになったら、必ず名前が出る仕様だが、『隠者モード』のお陰で名前は隠され、フレンドリストにも色が出ないようにされている。『隠邪モード』ではないので、鑑定されたら名前は見られるが、色は変化しない仕様なので、うっかりと装備欄からアルティスの仮面を外さないように気を付ければいい。


 街に帰ったのはいいけど……ログアウトするにはまだ早いし。


 現実時間では、まだ16時なのでログアウトするには早い。露店でも回ろうかなと思ったら、マミのことを思い出して、フレンドリストにマミがログインしているのを確認した後に広場へ向かうことにした。


 前のとこにいればいいけど……あ、ついでにナイフでも買っておくかぁ。


 先に、この前で初期のナイフを買った武器屋の露店に脚を向けた。


「あ、いたいた」

「あん? この前のお嬢ちゃんじゃねぇか。ナイフの件か?」


 武器屋のおじさんはこっちのことを覚えていたようで、すぐ用件のことを当ててきた。


「えぇ、時間を空けたから大分は溜まっているよね?」

「そうだな。全部買うなら、142本の7100ゼニだ。ついでに、他の見ていくか?」

「安いのはとっても助かるわ。そうね、見せて貰えるかしら?」


 ドルマがあるから、他の武器はいらないと思うが、掘り出し物があったら買っておくのもいいかなと思った。βプレイヤーをPKして奪ったお金、『旅立つ青鳥』から貰ったお金があるので、所持金が凄いことになっていた。


「ナイフを使うなら、こういうのはどうだ?」

「何これ? ナイフなのはわかるけど、持ち手のとこに蓋みたいのがあるけど……」

「まぁ、見てみろよ」



ポインズナイフ レア度:E

 持ち手のところに液体を流すことが出来る。液体の殺傷能力の強さにより、攻撃力が変わる。

耐久力:30/30



「スキル付きの武器……ではないよね?」

「そうだな。これの場合は、魔道具の類に近いな」

「へぇ、こういう魔道具もあるんだ」


 ヨミは魔道具の存在は知っていたが、こういうタイプの魔道具があるのは知らなかった。


「これ自体に殺傷能力はないが、中身の液体を流し込むだけの傷ぐらいなら出来る。つまり、斬るよりも刺す方が合っているな」

「注射みたいなナイフね。もしかして、その液体は別売り?」

「それは錬金術師の店で買えば、毒ぐらいは買えると思うが、悪いことには使うなよ?」

「あははっ、使いませんよ」


 まぁ、悪いことに使いますけど。毒かぁ、あれを使えばいいし、なくなったらルイスに頂戴すればいいから……


「買うわ」

「まいどあり! サービスして、12900ゼニで初期のナイフも合わせて20000ゼニでいいぞ」

「あら、ピッタリに合わせてくれたのね。はい」


 大量のナイフとポインズナイフを手に入れた。


「もし、ポインズナイフの耐久力が0になったら、動作不良になるからな。動作不良になったら、鍛冶屋で『リペア』を使って直してもらうといい」

「『リペア』? 鍛冶のスキルには詳しくないけど、武器を直してもらうのと違うの?」

「そうだな、『リペア』は耐久力を回復するスキルで、武器を直すスキルは『修復』だ。武器は『リペア』で耐久力を回復することも出来るが、刃こぼれや折れた武器はそのままの状態になっている。だから、『修復』を使い、武器その物を直してから『リペア』で耐久力を回復させるのさ」

「へぇ、魔道具は耐久力が0になっても、壊れずに動作不良になるだけ?」

「魔道具のことはよくわからない物でな。壊れるんじゃなくて、動作不良になるとしかわからねぇ」

「ふーん?」


 とにかく、ゲームなんだから、そう言うものだと理解すればいいやと思うヨミだった。アレも買ってから、次へ行くことにした。







「……あ、いた」

「え? あ、ヨミちゃん! 昨日、どうだったんですか?」

「どうだったって……あぁ、ヒーローのこと?」

「そうですよ! いきなり、行っちゃって」

「ごめんごめん。それより、用があるけどいい?」

「あ、はい。あのことですか?」

「うーん、闇商人として頼む程の物はないな……」

「ついに、やったんですね!! あれ、名前が……」


 PKをしたことを悟ったが、イエローになった名前が浮かんでいないことに気付いた。


「ある物を手に入れてから、ビクビクせずに街を歩けるわ」

「あははっ……、ヨミちゃんがビクビクする姿を想像…………あれ? 出来そうな気がする?」

「お嬢様風の姿をしていれば、か弱い女の子にも見えなくはないわね……」


 ヨミは度胸があると自負しているので、強面のおじさんが急に現れても斬り込むぐらいは余裕だ。


「駄目だよ!?」

「え、声に出ていた?」

「出てはいなかったけど、顔を見たら言わないといけない気がして」


 察しの良い子だと感心したが、用事を頼むことがあったので、さっさと本題に入ることにした。


「ねぇ、『鍛冶』で武器を強化出来るよね?」

「あ、はい。出来るには出来ますが、材料はありますか? まだレベル1なので、強化は1本に1回しか出来ませんが」

「鉄屑ならあるわ。ざっと、100個よ」

「ひゃっ!?」


 マミの前に先程買った鉄屑100個と初期のナイフ100本を置いた。


「1本ずつ+1にしてね」

「お、多いですね……でも、何故、初期のナイフが?」

「NPCに聞いたら、買えたのよね。とにかく、手芸師なら他の職業より早く終わるよね?」

「はぁ、確かに早く終わりますが、質は少し落ちますよ?」

「いいの。あっという間に終わらせてくれれば」

「はい、わかりました」


 マミはすぐこの場で強化し始めた。作るならともかく、強化するだけなら場所も道具もいらない。ある装備があれば、ほんの少しだけ質が上がるようだが、最初の街にはない。


「ふんふん♪」

「……ナイフと鉄屑を重ねているだけにしか見えないわね」

「ゲームですからね~」


 ナイフと鉄屑を重ねて、『武器強化』と唱えるだけ。+1にするだけなら、失敗は必ずしないのでマミは気楽に唱えていく。『簡略化』のお陰で1本に数秒しか掛かってないので、10分も掛からずに終わらせていた。


「終わりましたー」


 強化されたナイフはこのようになった。


初期のナイフ+1

耐久力:破壊不可

ATK+6→8


 本来なら、ATK+9になっているが、手芸師のボーナスが他のより低いので質が落ちてATK+8になっていた。だが、ヨミはそれでも構わなかった。


「ありがとうね。いくら?」

「え、フレンドだから無料でいいですよ? 唱えるだけだったし」

「いやいや、それは駄目だよ。ちゃんと働いた分は貰わないと! この世、ブラック会社が蔓延している時にそんな人は色々と骨の髄までも絞り尽くされるわよ!?」

「ひえっ!? か、会社怖い……」

「あ!? ごめんごめん。ちゃんとした会社もあるから、会社は怖くないよ? ちゃんと会社を選べば大丈夫だから」

「う、うん……」


 私のせいで会社が怖くなり、ニートにさせたら夢見の悪いことになるから、ちゃんと励まして会社はちゃんと選べば、怖くないよと教えたのだった。


「あ、代金はまとめて500ゼニぐらい?」

「いいえ、+1は100ゼニが相場だから、100×100で10000ゼニよ」

「いちまッ!?」

「はい、10000ゼニを送ったから、ちゃんと確認もするのよ?」

「う、うん。こんなに貰ったの初めて……」

「そういえば……」


 敷物の上に載せている様々な物の値段を見ると、1000ゼニよりも安い値段ばかりで材料費分しか取れないように見えた。


「ちょっと、1度は相場を見た方がいいわよ。これら、ちょっと安すぎるわよ?」

「え、そうなんですか?」

「そうよ、私が奪った物を売るなら殆どは高い物になるから、これだけ安く売られると困るわよ」

「うーん、安いんですか……?」

「例えば、ポーションとかは、店のと同じ金額で売ればいいと思っているでしょ? でも、それでは駄目なの。理由は、性能の違いがあって、その差分だけ高くしたりしないと儲からないし、生産に使う材料を買えないわよ? パソコンを持っているなら、露店で発売されている物の相場が出ているから見ておくべきよ」

「はい! わかりました。高く売らないと闇商人とは言えませんからね!」


 やっぱり、初めてゲームをしているだけあって、知識が足りないようだ。ヨミは自分の為にアドバイスを送ることにした。何せ、いつかは私たちの金を得るために必要になるのだからーーーーーー










  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る