第24話 ソロ対パーティ
ヨミはランキング7位を倒し、休んだ後に1つのパーティを見つけていた。誰も『隠蔽』を持っておらず、名前とレベルが丸見えだった。名前には興味がなく、レベルだけを確認すると一番高いのがレベル9で平均レベル7のパーティだった。
それに対して、ヨミは先程のPKで1つ上がり、レベル9になっているが、1人でパーティに挑むのは自殺行為だろう。もちろん、正面から挑むようなことはしない。まず、死角から『魚群アロー』で気付かれるまでは身を隠しながらHPを削っていた。
ーーー暫くすると、剣士の人が先に気付いた。
「お、おい! お前達のHPが半分になっているぞ!?」
「お前もだぞ! 毒……いや、状態異常になってないからーーー」
「攻撃されているぞ! 周りを警戒だ!!」
「きゃぁ! なに、この小魚!?」
「これよ! 当たるとダメージを受けている……今まで気付かなかったなんて!!」
「すぐポーションか回復魔法をーーーッ! マオ、後ろ!!」
「何が……キャッ!?」
神官だと思える少女を先に片付けるべく、回復される前にマオと言う少女の後ろへ回り込み、ドルマを突き刺した。
心臓に一撃、クリティカルが入って、HPを0にした。
「なっ!?」
「次は貴方よ」
今度はマオの近くにいた魔術師の格好をした男性の首へドルマを振り抜いた。仕様により、首が落ちることはないが、生き物の急所である首を斬られてしまえば、必然的にクリティカル扱いとなる。元より、HPが少ない上に『魚群アロー』で減らされていたので、別に首を狙われなくてもDEFが低い魔術師にドルマの威力に耐えれる可能性はなかった。
ヨミが現れて、たった数秒で後衛の2人を倒されてしまった。ヨミの存在に気付けなかった盗賊の少女は憤りを押さえつつ、前衛の2人に声を発していた。
「落ち着いて! 先に回復よ!!」
「ッ、すまない!」
「お前!! 何者だ!?」
「……あら、向かってこないのね。思ったより冷静に行動しているわ」
思ったより冷静で、盗賊の少女がポーションを投げたことで大分回復されてしまった。無理に攻め込むよりも隙を窺ったほうがいいと思い、脚を止めていた。
さぁ、どう攻めようかしら?
《『もののふサークル』視点》
「やっぱり、プレイヤーか?」
「わからねぇ、仮面以外がはっきりしてねぇ……。声から女性なのはわかるが……」
「何故か、名前が表示されていないけど、間違いなくPKプレイヤーよ」
「くそっ、油断したか……」
相手のパーティにとっては、後衛の2人を先に倒されたことは痛手だった。あの2人はベテランで頼りになるプレイヤーだったのだ。それをあっさりと倒されたのは、油断があったことと目の前に立つ少女の腕が立っていたということ。
「仮面の少女を倒して、仇を取るわよ」
「駄目だ、『鑑定』が通らない。レベルに差があるか、高レベルの『隠蔽』を持っているか」
「……両方を仮定して動くぞ。ミアはナイフで牽制、遠距離攻撃が来たら、頼む。ロブスタはいつも通りで」
「はいよ」
「ファイマは隙を見つけたら、高威力のをぶちこんでやれ」
リーダーであるファイマは剣を持ち、頷く。ロブスタは大盾を構え、少女を睨んで警戒し、ミアは両手にナイフを構えてじりじりと横へ動いていた。
「もう会議はいいかしら?」
「わざわざ待ってくれたのか。その油断に足を引っ張られないといいな?」
「ふふっ……ふひぃぃぃっ!!」
「ッ!?」
笑い声を上げたのと同時に|剣(ドルマ)を投擲の体勢に入っていたことにより、狙われている盗賊のミアは呆気に取られ、避ける時間を無駄にしてしまっていた。剣が少女の手から離れたのと同時に、ファイマが大声で叫んだお陰でーーー
「早っぐ、がはっ!?」
本来なら、心臓を貫くのだったがファイマの声により、身体を少しだけ動かせたので、当たった箇所が心臓ではなく、左腕を斬り落とされるだけで済んだ。だが、部位破壊となるダメージは最初の街にあるポーションでは直せない。つまり、生き残っても左腕なしで戦わなければならない。
「馬鹿め! 武器を捨てたことを後悔しろ!!」
「ふふっ……」
大盾で半身を隠しながら、片手剣を少女に振るうが、地面へ転がることで避けたが、それではバランスを大きく崩して、立ち上がる為の時間を使うことになる。すぐ、追撃をしようとしたが、脇腹と脚に痛みを感じていた。
「な、何故、ナイフががぁぁ!?」
「大盾に隠れても、ある程度の場所が出ているもの。そこを狙えばいいだけよ」
「くぁ! よ、鎧の間に!!」
「ロブスタ! 下がれ!!」
「次は貴方ね。……うん、この剣で充分ね」
そういい、アイテムボックスから出されたのは、最初に支給される一番弱い剣だった。
「『スラッシュ』……アーツチェイン『エッジブレイク』!!」
弱い剣であっても、ファイマは油断しなかった。既に無傷なのは、もう自分だけになっているのだ。アーツチェインで『スラッシュ』の横薙ぎから『エッジブレイク』での振り降ろしで少女にダメージを与えようとしたが……
「遅いし、軽いわね?」
「なっ!?」
少女は片手だけで剣を受け止めていたことに驚きを隠せないでいた。片手だけで受け止めていることは、もう1本の手が空いているということ。
ヤバいと思ったのか、ミアが斬り落とされた片手を気にするの止め、ナイフを手に持つが、少女がこっちを見て笑みを浮かべているように見えた。仮面を被っているから、表情はわからないのに。それと同時に嫌な予感も感じた。
「来なさい」
『武具化』解除ーーー
少女の小さな声が聞こえたのは、近くにいたファイマだけだった。
「ミア!!」
ミアは突然に現れた気配を後ろから感じて、振り向くまでもなく前へ倒れたが遅かったようで、背中を斬り裂かれた。
「あ、ぐぅ!? な、なんで剣がーーー」
すぐ起き上がらずに首だけ振り向いたのが悪かったのか、避けることも出来ずに再び、背中を斬られ、HPが0になってしまう。
「ご、ごめんーーー」
「ミアーーーぐっ!?」
「余所見は駄目でしょ?」
空いていた手で持てるだけのナイフがファイマの全身へ放たれていた。
…………ヨミはドルマを解除したため、その強化分がなくなっているから与ダメージは結構、減っているが、ファイマは全身から感じる痛みにすぐ動ける状態ではなかった。
「こっちへ来なさい」
「い、意思を持った武器!?」
「ふふっ」
先程より小さな声だったため、何を言っていたかわからないが、剣が手に戻ったことにより、絶望な状況になったことを理解した。
「次はそっちの男もkillするから、向こうで待ってあげてね。ふふっ……」
剣が振り下ろされ、なんとか抵抗の為に剣を盾にしたが……『スーパースラッシュ』と聞こえたのと同時に何かが折れた音が聞こえた。振り下ろされた剣から逃れようと、眼を瞑っていた為…………次に眼を開けた時は既に教会だった。
「大丈夫!?」
「あ、あぁ……負けたのな」
「あとはロブスタだけど……無理ね」
「私達はすぐ退場してしまったので、わからなかったけど……そんなに強かったんですか?」
周りには仲間達がいて、1番目に退場したマオはこちらを気遣うような眼で聞いてきた。
「そうだな……対人戦に慣れている様子だった」
「PKを仕掛けてくるなんて、最悪!!」
「言うな、こっちは初心者がいないパーティだった。更に、向こうは1人だったぞ。隠れている存在がいたなら別だが?」
「……いなかったわね」
「なら、やられた俺達が悪かった訳だ」
魔術師の男性はもう切り替えており、負けたことを認めていた。
「むぅ、わかっているけど、感情が納得してくれないのよ!!」
「文句なら、PKが出来るように設定した運営に言うといい…………戻ってきたか」
「うがぁぁぁぁぁ!! 強すぎんだろ!? あの子!!」
ロブスタが漏らした言葉をミアは聞き逃さなかった。
「……ちょって待って! あの子って、どうしてあの子と言ったの!? まるで私達より若い少女だと言っているように聞こえるわよ?」
「あぁん? 剣を受け止めた時は思ったより低いとこから衝撃を感じたからだ。見た目を誤魔化しているが、打ち合えば身長が低いのはバレバレだぞ?」
「そういえば……」
戦いに夢中でそこまで気を回せなかったが、思い出してみれば剣を振り落とした時、当たった箇所が低かったように思える。
「まさか、私達より若い子に負けた訳?」
「多分な。歳で強さが決まる訳じゃないが、長くゲームをやって来た俺達よりは上手いのは間違いない」
本当はヨミの方が経験も歳も上なのだが、それを知る術がない『もののふサークル』は想像の上で推測するしかない。
「わかったことは掲示板に載せて、注意を呼び掛けよう。俺達を狙ってた訳じゃなそうだしな」
「全く知らない人でしたし、β版でも少女から恨みを買われるようなことをした覚えはありませんからね」
「ムカつくわ! また会った時は負けてたまるものですか!!」
「私は会うの遠慮したいですね……、何もすることもなく、やられちゃいましたし、PKプレイヤーはモンスターと違って成長しますから……」
「はぁ、掲示板のことはリーダーに任せることにして、俺達は所持金とアイテムの確認だ。幾つか奪われている筈だからな」
所持金は半分に、アイテムはほとんどが消費品やモンスターの素材だったが…………
「むきぃー! 絶対に許さないぃぃぃ!!」
盗賊のミアだけはβ版からの引き継ぎで持ってきたアイテムがなくなっていたのだったーーーーーー
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