第20話 仮面ゲットぉ……えぇっ!?
レベル上げも終わり、ログアウトして風呂と夜ご飯を終わらせたら、すぐログインする。
『旅立つ青鳥』との待ち合わせ場所へ向かうと、今度は全員いた。
「早いね」
「お、ヨミさんも少し早めに来ているじゃないですか。『毒の沼』はハズレだったのな。すまんな」
「構わないわよ。目的の物は手に入れたのだから」
「そうなのか?」
ヨミはヒーロー達と出会って譲ってもらったこと、初めて聞いたスキル取得方法の件を話すと……
「えっ! 女神からメールが来たの!?」
「今まで聞いたことがないな……」
「マジか、ヨミちゃんスゲーな」
「……どんなスキルを貰ったの?」
一番驚かれたのは、女神イルミナというか、この世界を統率するAIからメールを貰ったことだった。ハーミンだけはマイペースだったが。
「詳細は秘密ですが、上位スキルでしたよ」
「羨ましい」
「2日目で上位スキルゲットとか、運が良いな!!」
「また知らない情報を教えてくれたお礼をしないとな。あ、漆黒の嘴は別の取引として扱うから、報酬として扱わないよ」
「それでいいわ。混同するのは良くないしね。『毒の沼』もちゃんと払うわよ」
「いや、それは……」
「いいのよ、私は場所を知らなかったのだから、わかっただけでも3000ゼニの価値はあるわ」
「多分、この子は自分の言葉を曲げないと思うから、ちゃんと受けとりましょう?」
「……わかった、そうしよう。まず、漆黒の嘴と『毒の沼』の取引を終わらせよう」
ヨミは漆黒の嘴を受け取り、2000ゼニと情報料の3000ゼニを渡した。
「確かに貰った。次はスキルについての情報だが……少しパーティで話すから待ってくれないか?」
「あら、構わないけど……」
「すまんな」
『旅立つ青鳥』はヨミから少し離れて、話し合っていた。盗み聞きしようと思えば、出来るがヨミはそれをせずにベンチへ腰を掛けた。しばらくすると、ハーミンだけが戻ってきて、こちらをじーと見つめ始めたのだ。
「ど、どうしたの?」
「……質問、見たところ、腕の装備は着けてないけど、これから買う予定とかない?」
「腕の装備かぁ、まだ決めてないよね。この服装からかけ離れた装備はちょっと嫌だからね」
「うん、オシャレが大切なのは理解出来る。ありがとう」
そういうと、とてとてと小動物のように『旅立つ青鳥』のところへ戻っていった。その姿を見るととてもではないが、斥候をやっているようには見えない。そんな失礼なことを考えていたら、皆が戻ってきた。
「待たせてすまない。報酬に何を渡せばいいか困ってな、話し合っていたんだ」
「別に法外な報酬を求める訳じゃないから、深刻に考えなくてもいいじゃない?」
「いや……正直に言うと、この情報は戦闘職や生産職など個別の職業だけに関わらず、全プレイヤーに有益な情報だ。だから、その分だけ高くなるのさ。…………だから、これから言う正当の情報料に驚かないでくれ」
「……なんか、怖くなったわね」
「怖かろうが、聞いてくれ。最低でも………………5000000ゼニだ」
「は? …………またまた、冗談を~」
「……冗談じゃない。最低で5000000だけど、もしかしたら10000000ゼニに届くかもしれない。それほどの情報だと判断していい 」
「またまた………………え、マジ?」
皆の表情に冗談の文字は書かれていなかった。ということは、マジと書いて本当なのだ。
「えええぇ……ふがっ」
「……騒がれると困る」
ヨミの絶叫を先読みしたハーミンが口を塞いでいた。同じ小さな女性だったから良かったが、男性のタクヤやヤルドだったら、GMの事案になっていただろう。
「落ち着いてくれ。これからが取引の話だが…………流石にこの金額を払うことは出来ない。だが、その情報を俺達が知ってしまった。だから、代わりに何かを払う必要になる」
「いやいや、私が勝手に喋ったんだから、無しでいいのよ?」
「それはいかん、俺達には情報屋、探検家としてのプライドがある」
「そうね、正当な報酬を払わないと私達は気が済まないわ」
「……だから、お金が足りない分は装備で
払う」
だから、さっき腕の装備のことを聞いてきたのだろう。
「……これなら、ヨミも気に入ると思う」
「それと2000000ゼニを渡しておく」
タクヤから2000000ゼニ、ハーミンは自分が着けていた腕装備を外して渡してきた。
ハーミンからの腕装備はーーー
充体のミサンガ レア度:A
現実時間の換算で1日に自分のHPの10%を充電出来る。ダメージを受けたら、そのダメージ分だけ肩代わりしてくれる。(状態異常によるダメージは肩代わり不可)
「ーーーレア、ふがっ」
「その先も言っては駄目よ♪ これもβ版からの引き継ぎだから、最低でも3000000ゼニの価値はあるわよ」
レア度:Aと言い出す所に、今度はローランが後ろから口を塞いできた。
「……これはステータスの強化が付いてないから、引き継げたけど効果はとても良い物。ただ、自分から充電しないと装備しても意味はないから、忘れずに毎日、HPを注ぐ」
「いいの? こんなに良い物を」
「構わない。ヨミの情報はどれも新鮮でこっちは助かっているから……あ、もう装備しない時は誰にも売らずに、私達に売ってくれると嬉しい。しばらくは無理だけど……」
「わかったわ。その時は言うわね」
充体のミサンガはダメージを肩代わりしてくれる代物で、満タンにするには現実時間で10日は必要だが、HPが少ないヨミにしたら助かる。
「じゃ、俺達はしばらく金稼ぎに行くからな。また新鮮な情報があったら、また連絡をくれ」
「ええ……でも、しばらくは新しい情報なんて、すぐに見つからないでしょう」
「あははっ、ぽんぽんと見つけられては、俺達の立つ瀬がないからな」
いい取引が出来たことにタクヤは朗らかな笑顔で、ヨミと別れるのだった。ヨミも目的の物を手に入れたので、寄り道をせずにクエストを出したNPCのおじさんのとこへ向かう。
「おじさん!」
「む、おおっ、あの時のお嬢ちゃんか! 今度は何を買いに来たんだ?」
毒消しはここで買っていたので、また何かを何か買いに来たと思われているようだ。クエストの件だと思われていないのは、このゲームの時間で言えば、まだ一週間しか経っておらず、この期間で手に入れることなんて、考えてはないからだ。
「いえ、もう集まったので」
「はぁ?」
「あ、アルティスの仮面はちゃんと取って置いてあるわよね!?」
「あ、あぁ、報酬を勝手に売ることはしねぇよ…………それよりも集まったって」
「はい、これですね?」
台の上に漆黒の嘴と大きな毒袋を置くと驚かれた。
「マジか、お前さんのレベルでは厳しい筈だ。前よりレベルがあがっているが」
「え、レベルが見えているの?」
「そうだ。名前とレベルしか見えないけどな」
『鑑定』かな? まぁ、NPCだし、見られても困ることはないからいいか……
「勝手に見てすまんな。レベルがわからないとクエストを発注出来ないからな。それにしても、よく倒せたな?」
「気にしていないからいいわ。まぁ、私が倒して集めた訳じゃないわ。私ではせいぜい東の中ボスを倒すだけでギリギリだったし」
「それでも凄いと思うが…………………ジュンの奴、プロゲーマーにでも頼んだのか?」
最後のは声が小さくて読み取れなかったが、アルティスの仮面を出して来たことにより、意識が向いた。
「はい、報酬のアルティスの仮面だ」
「ありがとう!! やっぱり、カッコいいわぁ~」
「気に入って貰えたみたいだな。で、買い物をしておくか?」
「うーん、今はドロップ品が溜まっているから、売りたいけどいいかな?」
「そういいや、東の中ボスを倒したと言ってたっけな。それも売るか?」
今まで気にしていなかったが、サテライトのドロップ品はアイテムボックスの中に入っている。紅目と黄金色の鱗だが、何に使えるかわからないので、おじさんに聞いてみた。
「黄金色の鱗は観賞用にしか使えないが、貴族には人気があるから高く売れるぞ。紅目は……錬金術師が使う素材だな。何に使われるか知らないが」
「詳しいね」
「これでも商人なんだ、アイテムの詳細がわからなければ、買収も出来んさ」
「それはそうね。じゃ、紅目以外を売るわ」
「はいよ」
黄金色の鱗は思ったより高く、4000ゼニで売れた。おじさんの話によると、漆黒の嘴や大きな毒袋はその半分、2000ゼニで売れるらしい。
買い物を終わらせて、露店から離れた後に手に入れたアルティスの仮面を取り出す。
「ふわぁ、カッコいい……」
見た目だけで虜になったヨミは手に入れたことで満足感を味わっていた。効果内容は聞いていたから知っているが、一応確認してみるとーーーーーー
「ファッ!?」
口から乙女らしくない声が出てしまった。たまたま周りに誰もいなかったのは運が良かっただろう。何故、そんな声が漏れてしまったのかは、この仮面の詳細にあった。
アルティスの仮面 レア度:SSS
耐久力:破壊不可
【プレイヤー専用】
詳細はわかっていないが、隠者の神が作ったと言われている仮面。
『隠者モード』
アイテムボックスに入れても、装備出来る状態にすることが出来る。その時は自分の名称を完全に隠すことが出来るようになり、プレイヤーやNPC相手からは見破られることない。
『隠邪モード』
仮面を被ることにより、このモードへ切り替わる。その時は『隠蔽・絶』、『無音・断』、『意識誘導・集』、『認識障害・惑』が自動発動される。名称も表示されない。
※ペナルティ
装備した状態でプレイヤーやNPCにHPを0にされ、教会へ送られた場合は装備欄からアルティスの仮面が消滅する。そして、もう二度と装備出来なくなる。
※譲渡・売却・強奪不可能
ーーー何処から突っ込めばいいのよ!? 装備とアイテムのレア度はSまでじゃなかった!? それに、効果も桁外れだし!! ペナルティもあqふbwjじこg…………
流石にこの詳細を見て、正気でいられなかった。頭がショートしてしまったヨミが落ち着くまでに十分もかかったのだった…………
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます