第19話 経験値



 夜まで狩りをすることに決めたヨミは西のフィールドにいた。経験値が高いモンスター探しの続きを開始した訳で、オークの群れを狩りつつ、地面を注意深く見回していた。


「見つからないな……」


 ヨミが探している経験値が高いモンスターとは…………




「……あ、あれじゃない!?」




 地面に盛り上がった土があった。それこそ、経験値の高いモンスターがいる目印となる。


 本当にいるのかな? ワーム……


 探しているモンスターの名前はワームと言い、ミミズのモンスターだ。人間の腕や足を余裕で丸のみできる大きな口を持ち、地面から襲ってくる。

 ワームはあまり地上へ出てこないので、なかなか見つからないが………倒せれば、いい経験値になると言われている。


 この土を崩せば、現れると書いてあったけど、本当に?


 掲示板で手に入れた情報でまだ半信半疑だが、見つけたからにはやらないでいられない。ドルマを装備して、土を蹴って払った。


 来るか!?
















 ……ド、ドォォォ


 !? 小さな音だが、確実に地面から来ている!!




 音がだんだん大きくなり、地面が揺れ始めた瞬間に横へ飛び込んで転がった。そしたら、さっきまでいた場所から茶色の柱のような物が現れた。

 よく見れば、柱ではなく探していたワームだとわかった。



ワーム レベル10



 そこら辺のモンスターと比べると強いとわかる。こっちへ顔? を向ける前に、『魚群アロー』で少しでもHPを削ることが出来ればいいなと思ったら、5体の小魚が当たっても十分の一しか削れなかった。オークと大違いだ。


 魚群アローのダメージ計算がよくわからないんだよね……。ただワームのHPとDEFが高いから減りが少ない?


 そんなことを考えるのを後にして、ワームが潜ろうとしていたのでドルマを『武具化』して、隙だらけの腹に『スーパースラッシュ』を喰らわしてやった。


「ぴぎ!!」

「これは……HPが多い方が濃厚かな」


 ドルマを装備したヨミの攻撃は、オークだったら半分以上のHPを減らし、『スーパースラッシュ』だと一撃必殺となる。だが、ワームのHPはまだ三分の二も残っていたのだ。

 続けて『スーパースラッシュ』を喰らわしてやりたいところだが、めちゃくちゃに身体を震わせて暴れているので、回避に専念しないと重量から来る攻撃で自分のHPが全て吹き飛んでしまうのが怖い。ワームの攻撃はどれくらい強いかはわからないが、当たらない方がいいと判断していた。


「こ、この! 大人しくしていなさい!!」

「ぴぎ!?」


 え、さっき自分のHPを確認して驚いていなかった!?


 クールタイムが終わった『魚群アロー』で少し減らしたが、その後にワームが妙な動きをしていたことに気付いたのだ。目があるようには見えないが、頭の上に何があるのかわかっていて、それを見るような動作を見せていた為、モンスターもHPバーがあるのを理解している証拠になっていた。


「そんな知能があったことも驚いたけどね……」

「ぴぎ!? ぴぎぃぃぃ!!」

「私の言葉がわかったの!?」


 そんな訳がない。ただ、ヨミの馬鹿にするような目線から読み取っただけなのだ。それでも、充分凄いが……空気を読めるワーム、誰得だよ?


 HPバーが見えているなら、ギリギリまで削ると逃げられそうね……でも、私は逃がすつもりはないわよ?


 ワームはヨミの殺気に気付いた為か、暴れるのを止めて距離を取るような動きをし始めた。まだ下半身が埋まったままなのに、後ろへ進めるのかと思っていたら、なんと穴ごと動いているのだ。


「土魔法? 面白いモンスターだね、テイム枠が空いていたら、テイムしていたかもしれないけど……残念だけど、私達の経験値になってもらうわ!!」

「ぴぎぃぃぃ!」


 やはり、土魔法を使えたようで、小さな石が複数、『ロック』を発動してきた。


「はぁっ!!」


 当たりそうな攻撃だけをナイフの弾幕で落として回避する。転がるだけのヨミじゃないわよ! と叫びつつ、ドルマで連続突きを放っていたが、剣の形状が突きには合わなかったようで、切った時よりダメージが少なかった。そのことに舌打ちをするヨミだったがーーーーーー



 ーーーヨミ様は『必中』のスキルを取得致しました。



 はえ!? こんな時にアナウンスとメールが来ている!?


 戦闘中にアナウンスはともかく、メールが来るとは思わなかった。フレンドからのメールは戦闘中に通知されないように設定してあるのだから。誰からのメールか気になるが、今は新しく得たスキルとともに放っておく。


「突きが駄目なら、斬るか押し潰すだけ!!」


 峰の方が『スーパースラッシュ』の威力が高くなると書いてあったので、その通りにすると、斬るのと違った感触を味わう。


「ぴぎゅ!!」

「とても効いているわね……あと一発!!」


 もうすぐでHPがなくなるのが見えたので、逃げられる前に『スーパースラッシュ』で頭を押し潰した。カエルが出すような声で潰れ、光の粒になって消えた。


「お! レベルアップ!!」


 ヨミだけではなく、ドルマもレベルアップしていた。確かに経験値は高いようだと関心していたら、メールが来ていたのを思い出す。


「そういえば、新しいスキルを手に入れたよね……。あれ、こんな取得方法があったとか聞いたことがないんだけど……?」


 本来の取得方法はスキルオーブを使うか、称号の効果で添付されている場合の時だけ。称号の効果なら、称号もアナウンスで通知されていないとおかしい。

 とにかく、来たメールを確認したら…………思ってもいなかった相手からメールだった。その人とは…………




『素晴らしかったです。スキルの補助なしに『投擲』スキルと同等かそれ以上の技術と精度を見せて頂きました。

凄かったです。なので、『投擲』の上位スキルになる『必中』をプレゼントさせて頂きます。これからも頑張ってくださいね。

           女神イルミナ』



 まさかの女神からだった。正確には、この世界を統治している女神役をやっている高性能のAIと言えばいいだろう。


「なんか、少し子供っぽいのは生まれたばかりだから? う~ん………まぁいっか。早速、スキルの効果は!?」



『必中』

 投擲された物が狙った場所へ向かう。スキルレベルが特定レベルへ上がることで、追尾効果が付く。



 へぇ! いい効果じゃない!! 流石の上位スキルね。……って、私は素で『投擲』スキルと同等のレベルで投げていた? 投げる才能があったのかしら……?



 物を投げる機会なんて、日常ではあまりなかったので、才能があるとかはわからなかった。


「えっと、これで新しい取得方法を手に入れたことになるよね……これもまた『旅立つ青鳥』に渡せば、また報酬が貰えそう……うひっ」


 最近は良いことづくめだったので、ヨミの口は笑みを浮かべていて、まさに令嬢のような絵になるのだった。












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