第17話 西と南へ
ドルマが進化した後、ヨミは経験値が高いと言われているモンスターを探し続けていた。途中で会うのはオークばかりで、さっさと見つけ出したいヨミは『武具化』で装備し、風の如くに切り伏せていた。オークはパーティで連携してくれば、手強いが…………
「連携をしてこないのは、まだレベルが低いか、この前のグリムウルフみたいなリーダーがいないからかな?」
連携してこないオークは怖くもなく、更に上がったATKで棍棒ごと叩き伏せていたら、オークのHPが半分以上も減った。2撃目を繰り出そうと思ったらーーーーーー虚空から斬撃が現れ、オークの腹を切り裂いていた。
「おおっ! これが『追斬』よね!?」
低確率で発動するパッシブスキルが発動したことにより、HPが三分の一しかなかったオークは光の粒になって消え去っていた。
出てくるまでラグがあるから、反応の良いプレイヤーには防がれそうよね…………って、防げるスキル? それか、防御無視できるスキル?
そこまで詳細に書かれていないのでわからないが、防げると仮定して動いた方がいいと考える。
「あと、このスキルも試してみるかぁ」
「ブォォォォォォ!!」
「うるさいわよ、『魚群アロー』!」
『魚群アロー』、中ボスから手に入った報酬。手を突き出さなくても、前方から出るのは決まっているようで、前方から黄金色をした5体の小魚が速い泳ぎでオークへ向かっていった。
「ブギィ!?」
オークは棍棒で撃退しようと振り抜いたが、小魚には当たらず、すり抜けていた。そして、擦り抜けた小魚がオークに当たりーーーーーー
小魚は当たった瞬間に小さく弱々しい光の粒になって消えていた。それと同時にオークのHPが減っていた。
「??」
攻撃が当たったオークは何が起こったのかわからないと顔に浮かんでいた。つまり、痛みや衝撃がなかったということ。それどころか、感触さえもあったかも怪しいところだ。
これは…………凄いスキルじゃない!?
放ったヨミもオークの様子に驚いていた。悪い意味で驚いた訳でもなく、序盤からこんなスキルが手に入ったことに驚いたのだ。
痛みがない、当たってもわからないと言うことは…………暗殺し放題じゃない!?
ヨミが考えていたのは、このスキルがあれば死角から攻撃されても気付かないし、自分のHPを見ないと何をされたかわからない。黄金色で目立つのは玉に傷だが、それを隠すスキルや道具を使えば…………どうなるかは想像できるだろう。
ふひぃ、スキルレベルが上がれば、能力も増えるとあったし、これは悪役プレイヤーには凄く有益なスキルじゃない!!「ブヒィィィィィ」うるさい!!
呆気に取られて、考え事をしていたらクールタイムも終わっていたので再び、『魚群アロー』で攻撃した。オークは痛みや衝撃がないのを理解しているからか、避けようもせずに真っ直ぐへ向かってくる。だが、オークのHPはぐんぐんと減り…………
「ぶひぃ?」
自分が死んだことに気付かないまま、光の粒になって消えた。身体が消えていくことに呆気に取られ、疑問を浮かべる表情に笑えた。
「確か、最初の5体全て当たって……半分程減っていたわよね?」
ちらっと見ただけで確実じゃないが、2回目の『魚群アロー』も5体とも当たっていたから、オークぐらいの敵なら2発、10体当たれば倒せる。
プレイヤーはどれくらい減るか試したくなるが、我慢我慢と自分を押さえるのだった。
「まだ我慢よ、ストレス解消までもうすぐだけど、今はまだよ…………ふひっ」
中二病のように右腕を押さえて、不気味に笑うヨミだった。別に復讐をしたいとかではないが、パァッと暴れたいだけなので、我慢は出来る。
ーーー『旅立つ青鳥』様が北の中ボス、サテクロウを初回討伐に成功致しました!
お? あの人ら、見つけて…………倒しちゃったんだ? やるじゃない。
アナウンスが聞こえたかと思えば、知り合いが北の中ボスを倒したことがわかり、そこそこ有名であって、やるじゃないかと感心していた。
「あ! 北の中ボスを倒したらドロップ品を拾っているはず!」
タクヤに交渉して譲って貰おうと思った先に、メールの着信音がなった。
『よう、漆黒の嘴が必要だったよな。2000ゼニで買うか? タクヤより』
「買うに決まっているじゃない!!」
買うと返信し、現実の時間で夜8時に噴水前で待ち合わせをすることに決まった。
少し雑談をし、何処にいたのかとそれなくと聞いてみたら、あっさりと教えてくれた。
「北は薬草の畑と呼ばれていた採集に便利な場所から離れていなかったか………確実に生産者と非戦闘者を殺しに来てない?」
居場所が居場所だったので、そう思われていても仕方がないだろう。そこで、タクヤ達から推測が生まれ、中ボスはβ時代ではあまり重要ではなかった場所か生産者や非戦闘者が好む場所の近くで構えているじゃないかと。その可能性を捨てきれないので、確かめに行くと言っていた。
ヨミも南の中ボスがドロップする物を手に入れたいので、南は自分が行くと伝えて、いそうな場所を教えて貰った。その情報で更に3000ゼニを払うことになったが。
ヨミはすぐ西から南のフィールドへ向かい、β時代では重要されていなかった場所であった『毒の沼』の前にいた。
1つだけある小さな沼、周りで出てくるモンスターは全く変わらない。宝箱が隠されてもいなく、毒の沼へ潜って調べたチャレンジャーもいたが、何も見つからず死戻りしたことから、何故あるのかはわからないままだった。
「もし、中ボスがいたら本日2回目になるんだよね……。確か、β時代では南の中ボスは毒を持っていない大きなカエルのモンスターで、レベルは15。最初のフィールドでは2番目に強い中ボスだったはず」
念のために毒消しの補充もしてあるので、戦いになっても大丈夫のようにしてある。戦う覚悟を決めたヨミは毒の沼へ近づいていくーーーーーー
あれ? 何も起こらない?
既にあと一歩で沼へ入れそうな所まで行ったが、演出が起こらない。中ボスがいるなら、周りに赤い線が出るはずなのだ。それがないのは…………
「ハズレか」
そう、ここはハズレなのだ。何も起こらないなら、ここにいても無駄なので街へ戻ろうとしたらーーーーーー
ーーー『赤青黄緑桃ヒーロー見参!!』様が南の中ボス、サテヘドロを初回討伐に成功致しました!
ファッ!?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます