第14話 東の中ボス
突然に中ボスとの戦闘が始まったヨミはまだ呆気に取られていた。何せ、大量の魚が出てきたかと思えば、集まって3メートル並みの巨大な魚が出来上がったら、誰でも呆気に取られるだろう。
サテライト レベル12
「っ! いきなり中ボスと出会うなんて!!」
『ゴギャァァァァァ』
レベルは12! 私より格上ーーー
鑑定を発動して、レベルが12なのはわかったが、口から水鉄砲を吐き出してきたので、ヨミ流の回避術ーーーーー飛び出し転がりで華麗に範囲から逃れた。
「はっ!」
上手く受け身を取り、すぐ態勢を立て直したらドルマでサテライトの腹に突き刺した。だが…………
「なっ!?」
当たった。確かに当たったのだがーーーーーー当たった瞬間に、その箇所だけが小さな魚へなって小さな魚を何体か消し飛ばしただけで終わった。さっさと頭の上にあるHPを見るが、二本あるHPバーの一本目がちょっぴりと減っているだけだった。まるで雀の涙程だ。
嘘っ!? ATK200以上の攻撃がこの程度のダメージしか与えられないのッ!!
尾びれでの振り払いが来るが、また転がることで避けることに成功する。だが、ヨミの表情は良くなかった。
「なんなのよ、魚の癖に防御力が高いと言うの…………いえ、この中ボスもドルマと同じタイプと考えるべきね」
最初の街、そのフィールドにある中ボスがそれだけ高い防御力を持っているとは思えない。それに、さっきのは堅かったからダメージをあまり与えられなかったというより、幻影に騙されたような感触に近かった。
「ドルマみたいにダメージを受ける箇所が少ないかもね……はぁぁぁぁぁぁぁ!!」
投げられるだけのナイフを取り出して、サテライトの様々な場所へ当てていく。当たった先に、先程のように小さな魚が現れて消えていくの繰り返しが行われた。徐々にダメージを受けているが、それでもナイフを40本程投げて、ようやく一本目のバー、その十分の一を削っただけだ。
「うざったいわね! その水鉄砲!!」
『ブシャァァァッ!!』
何が厄介なのかと言うと、それは攻撃の範囲だ。水鉄砲を吐き出すのを察知して、すぐに動かなければ間に合わないぐらいにそこそこ早く、広いのだ。
「はぁっ!」
ドルマと初期の剣を二刀流で隙を見つけたら斬りかかっているが、まだ大きなダメージになるような場所を見つけてはいない。サテライトは浮いているが、陸地から少し浮いている程度なので、攻撃が届くのはいいが、一番高い場所にある背鰭(せびれ)を斬っても変わらない。
「はぁっ、はぁぁっ!」
ずっと動き続ければ、プレイヤーだって疲れるのだ。範囲が広い攻撃から逃れるには、走り続けるしかない。だが、一本目を削りきる前にヨミはスタミナ切れで倒れるのが早いだろう。
「一人で挑むのは無茶だったかしら………」
もう諦めて死戻りでもしようかと思っていたら、サテライトの眼を見て気付いた。
…………あら、両眼の輝きが違っている?
よく見ないと気づかないが、サテライトの赤い眼、右目の方が輝きが強い。何故、違うのかと思ったが、サテライトと言う名前にライトがあることに気になった。
もしかして、輝きが強い場所が弱点?
思い出してみれば、ここに気付いたのも、光っていたのを見たからだ。そして、名前の中にあるライト、右目の輝きが強いこと、様々なヒントがあったことにヨミはもしかしたらと思い…………
『ゴギャァァァァ!?』
「当たり!?」
回避した瞬間にナイフを取り出して、右目に投擲すると、さっきのように小さな魚が出ずに絶叫を上げて、HPも見違う程にグンッと減ったのだ。
「いける!!」
まだ絶叫を上げて暴れているサテライトへ向かい、ドルマを強く握りしめて右目へ突きを放った。投擲ではなく、直接にドルマで攻撃したからか、一本目があっという間になくなり、二本目へ突入した。
『ゴガァァァ!!』
「尾びれの攻撃はわかりやすいのよ!!」
サテライトの攻撃パターンが2つしかないのはわかっていた。というか、このパターンしかしてこないので、誰にもわかりやすいだろう。むしろ、厄介だったのは、右目という弱点を見つけることだった。もし、弱点を見つけられないままだったら、スタミナ切れで倒れてやられるパターンになっていただろう。
試しに左目にも攻撃してみたが、これも小さな魚が出てくるだけだった。
「弱点を見つけるまでが大変だけど…………それが見つければ、脆い!!」
『ブシャァァァッギャァッ!!』
水鉄砲を吐き出した後の隙を突き、また右目にドルマを突き刺す。これで一本目もあと僅かだけで、あと一撃で終わる。弱点も露見し、攻撃パターンも見切った。もうサテライトに出来ることはない…………
と、そう思っていた。
「まだ何かあったの!?」
急にサテライトが光り出し、黄金色の小魚へバラけてこっちへ飛んできたのだ。
触れるとヤバい!?
勘がヤバいと警鐘を鳴らし、転がって回避をしたが……僅かに足が触れたようで、HPがほんちょっとだけ減った。
「なに、この弾幕ゲー!? ゲームを間違えていない!? うきゃぁぁぁぁぁっ!?」
黄金色の小魚に触れると、ダメージを受けるので触るわけにはいかない。その小魚が大量にこっちへ向かってくることに恐怖を浮かべるヨミ。
「っ、あれは! あれが本体なのね!?」
周りが黄金色で輝く中で、ただ一匹だけが赤い色の小魚が浮いていた。右目と同じ輝きを放っていたから、あれを倒せば終わる。アイテムボックスに残っているナイフを使いきるぐらいに弾幕を張ったが…………
「っ、盾にも出来るの!?」
投擲されたナイフは黄金色の小魚が盾になって弾いていた。防いだ小魚が消えて、復活しているようには感じられなかったから、黄金色の小魚は有限であるのはわかった。そして、攻撃を当てれば、消えることも。
しかし、周りにいる黄金色の小魚は100と言う数では足りないぐらいに沢山いるので、いなくなるまで防ぎきるのは無理だろう。
「なら、短期決戦しかない!!」
ナイフが弾かれるなら、近づいて攻撃するしかない。が、やすやすと近づかせてくれない。
「っ! 上からも!?」
もし、戦いの前に『泥臭い戦闘者』の称号を手に入れていなかったら、立ち上がる前に突撃されて終わっていただろう。其ほどに回避に忙しかった。近付けず、ナイフを投げるだけの余裕があっても弾かれる。
サテライトは黄金色の小魚に守られて、低空に浮いていたままだった。もし、上空や水中に避難されたら、戦士系には成すこともなくやられていただろう。そこまで運営は鬼じゃないようで、地上から近い場所で浮いていた。
ヨミはもうスタミナに限界が近付いているの理解していた。
だから、賭けに出ることにした。
「ふーーーーはぁぁっ!!」
|ドルマ(・・・)を投擲した。当たれば、確実に一撃で倒せる。ナイフと違って、重量もあるので弾かれないとの考えで、武器を手放す賭けに出たのだ。
もちろん、サテライトだって生き残る為に必死だ。サテライトの周りを囲んでいた全ての小魚を盾にして防ごうとしていた。
盾にされた小魚を減らして、本体へ近づいていく中ーーーーーー
軌道が変わった。本当に僅かな軌道だった。投擲されたドルマは本体を貫くーーーーーーこともなく、横を通り抜こうとしていた。その時、サテライトの表情に笑みが浮かんだような気がしたが、笑みを浮かべていたのは、ヨミもそうだった。
「『武具化』解除ぉぉぉ!!」
スパッ!!
音が響いたかと思えば、サテライトの本体が真っ二つになってHPも0になっていた。真っ二つになったサテライトは訳がわからないと呆気に取られるなか、消え去った。
ーーーヨミ様が東の中ボス、サテライトをソロ討伐に成功致しました!
アナウンスが世界へ響くなか、ヨミは握りこぶしを上げて…………
「勝った…………勝ったわぁぁぁぁぁ!!」
ふぅっ……、本当にギリギリだったわ。二つ目の賭けに成功して良かったわ。
ヨミが言う二つ目の賭けとは、投げた後に避けられた場合、手元から離れたドルマを『武具化』を解除して、ドルマが油断したサテライトに攻撃させること。もし、サテライトが油断をせずに小魚を周りに再び展開させていたら、ヨミの負けだった。何せ、投げた後に大量の黄金色の小魚が全方向から向かってきていたのだ。その前に、サテライトを倒せたから良かったが、あと数秒でも遅れていたら、HPが0になるのはこっちだった訳だ。
本当に、最初のボスだと思えないぐらいに強かった……………………うひっ、でも、勝った!! しかも、初回、ソロのボーナスも手に入れたーーーーーー!!
…………あれ、何か忘れているような?
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