第13話 捜索
買い物も終わり、普通ならレベル上げに向かうのだろうが、ヨミは違った。
中ボスに挑んでみるかぁ~…………うひっ、試して勝てればいいけど。
そう、ルイスから貰った薬を試す為のもあるが、自分より格上のモンスターと戦ってみたくなったのだ。これから探す中ボスは、β版では一番レベルが低かった東の中ボスだ。
今はモンスターが変わっている可能性があるといえ、どのゲームでも東にいるボスが一番弱いという風潮があるので、それに賭けて、探すことにした。一番レベルが低いとはいえ、中ボスは推奨レベル10からなので、格上の相手なのは間違いはない。
まず、見つけないと話にならないよね。
もちろん、中ボスを探す道中に全くモンスターが現れないなんてことはあり得ない。
「ドルマ」
早速、複数のモンスターが現れた。
グリムウルフ レベル7
ウルフ レベル3
ウルフ レベル4
ウルフ レベル3
ウルフ レベル2
ウルフの群れで、グリムウルフがウルフの進化系でリーダーなのはすぐわかった。
「ドルマはあのグリムウルフをやれ。スキルは使っていい」
リーダーはドルマに任せて、その子分達は自分がやることに。ドルマを戦わせてみてわかったことがあるが、ドルマは1対1なら強いが、複数相手になると弱点が露見してしまう。
ドルマは1本の剣だ。刀身はダメージを受けず、ダメージ判定範囲が狭いので1対1なら技術がなくても力押しで行ける。だが、複数だと身体が剣1本だけのドルマは攻撃と防御を同時に出来ない弱点が露見してしまい、前後や左右から同時に攻撃されたら避けるしか出来ず、反撃も難しい。
なので、複数相手にはヨミが相手をするしかない。さっきまでのヨミだったら、素早いモンスター相手には苦戦していたかもしれないが、今は違う。
「はっ、はぁっ!!」
「「ギャッ、ギャァッ!?」」
さっき買ったばかりのナイフが大活躍していた。まだ『投擲』のスキルはないが、そこは高いATKでカバーしていける。急所には当たらずとも、DEFが低いウルフには結構なダメージを与えていた。
フリーのウルフがこっちへ向かってくるが、転がりながら避けていく。ついでに、ナイフを投擲しながらだ。
「凄い、やり易いわ!」
『泥臭い戦闘者』と投擲の相性は良かった。もし、スキルを手に入れたら、どれくらい命中率が当たるか楽しみになるヨミ。剣を使わず、ナイフを投げるだけでウルフの群れは一体一体と減っていく。最後のウルフも倒れ、ヨミは気付いた。
「うわぁっ、片付けが大変だ……」
そこらに散らばったナイフ。自動的で投擲した物がアイテムボックスに入ってくればいいのにと愚痴りながら、ナイフを拾っていく。ちらっとドルマの戦いを見てみたが、ドルマのHPはまだ満タンで、グリムウルフは小さな傷が出来た程度でHPも少ししか減っていないのがわかった。
あら、AGIは互角っぽいけど、グリムウルフの方は回避が上手いのね。ドルマはダメージを受ける箇所が少なかったから良かったけど、普通にダメージを受ける設定だったら、不利になっていた?
地力では、グリムウルフの方が上。そんな戦いだったが、じりじりと少しずつこの場から離れようとしていることがわかった。
子分が全滅したから、逃げようとしている!? 逃がすわけにはいかないわ!!
「ふっ!」
「ぎっ!?」
ナイフでグリムウルフの脚を狙ったが、擦っただけで動きを阻害するには足りない。
「こっちを見ていなかったのに、避けた!? 回避のスキル持ちなの!?」
「グルルゥ」
ヨミから攻撃をされたことで、グリムウルフは更にヨミ達から距離を取って警戒していた。後ろを向いて走り出しても、ドルマに追い付かれる可能性があるからじりじりと距離を取るしかないと言うような動きだった。
「ドルマ! 逃がさないように足止めを!!」
ドルマを武具化して、一気に終わらせたいが、それだとグリムウルフに追い付けず、逃げられてしまう可能性があるから出来ない。武具化させても自身のAGIは上がらないのだから……………………
ーーーって、私のAGIはドルマを超えているじゃん!!
今までAGIのことを気にしていなかったが、レベルアップや靴のお陰でドルマを超えるスピードを持っていたことに気付いたのだ。さっきも戦う時は脚を使うことよりも転がって避けていたため、実感することはなかったのだ。
ステータスの内容を思い出したことにより、ようやく気付いたヨミだった。
「恥ずかしいなっ、私は! ドルマ、『武具化』!」
「!?」
グリムウルフは嫌な予感を感じ、振り返ってこの場から離脱したが…………
「遅い…………なんで、気付かなかったんだろうかぁ。はぁっ」
「ギッ、グルァァァ……」
グリムウルフのAGIは40ぐらいに対して、ヨミは77もある。だから、あっさりと追い付いてドルマを振り落としていた。更に、切り上げで首を切ってHPを消し飛ばした。
転がるばかりに熱中していたから、忘れていたとか……こんな羞恥、誰も見ていないだけでもマシかと考えていないとやってはいられない。
「はぁっ…………あれ、なんか光っている?」
グリムウルフが逃げようとしていた方向に眼を向けると、遠くで何かがキラッと光ったような気がしたのだ。気になったヨミはドルマを装備したまま、歩き出した。
おー、綺麗な湖だわ。太陽の反射で光っていただけなのね。
見つけたのは、広大な湖だった。透き通っていて、魚が泳いでいるのが見えた。深さはどれくらいあるのか、更に湖へ近付こうとしたらーーーーーー
「!?」
ヨミがいた陸地と湖の一部を囲む赤い線が現れ、アナウンスが流れた。
中ボスの住まう縄張りへ入りました。『サテライト』との戦闘が開始されます。
はぁぁぁぁぁぁぁっ!?
驚きに固まっていると、湖に影が現れたかと思えば、小魚程度の大きさしかないモンスターが次々と空中へ飛び出してきた。その数は10,100程度ではない。其ほどの小魚が空中に集まり、形を作っていく。
「は、はぇ……?」
『ゴギャァァァァァ!!』
サテライト レベル12
小魚が集まっただけだと思えないぐらいに、形が出来上がった巨大な魚が空中に浮いていた。このモンスターこそが東の中ボス、『サテライト』だ。
ーーあとがき
暫くは昼12時にも2話ずつ投稿しようと思います。
なので、1日で5話になりますね。
読み忘れなくように〜。
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