第8話 毒っ!?



「すいません! てっきり、私と同じぐらいの歳かなと思っていました! えぇと、ヨミさん……?」


 疑問を浮かべる辺り、呼び方に違和感を感じているようだ。仕方がないと思う、身長は僅かにマミの方が高い。


「別に呼び方は気にしていないわ。小さい、チビとかは許せないけど、ちゃん付けぐらいは構わないわよ。私はマミと呼ぶけどいいわよね?」

「は、はい。いいのですか?」

「構わないと言っているでしょ。時間を無駄にしていられないし、パーティを組むわよ」

「は、はい! ヨミちゃん、ありがとう! 宜しくお願いします!」


 パーティ申請を送ると、マミは笑顔を浮かべて頭を下げた。礼儀正しい子だなと思いつつ、こんな子が悪役をやることになるなんて、誰にも予測は出来なかっただろう。






「あ! 向こうに採集出来る所があります!」

「よくわかるね。私には草がいっぱいあるようにしか見えないわ」

「『採集』を持っていれば、採れる場所が薄っらとキラキラしているんです!」


 『採集』を持っていないヨミにはキラキラが見えないので、ヨミは一切も触らずに周りを警戒する。下手に手伝おうとして失敗したり、レア度が下がったりしてしまうかもしれないから。




「む、採集場所にしばらく留まるとモンスターとエンカウントしやすくなるのかな?」

「えっ! 何処に!?」


 マミが驚いて周りを見渡すが、モンスターの姿は見えない。


「何処を見ているの? あの木の上にいるわよ」

「……あっ」


 木の上からこっちの様子を伺っている虫のモンスター、イノムシがいた。森のフィールドなら何処にいるようなモンスターで、結構弱い部類のモンスターだ。だが、マミは咄嗟に採集場所から離れて、ヨミの後ろに隠れていた。


「気にしないで採集を進めていいんだよ? 沢山現れたならともかく、一体だけなんだし」

「で、でも」


 マミは先程、やられそうになっていたことで弱気になっているようだ。恐怖、トラウマを持っている程ではないが、やられそうになったのを思い出してしまうだけだ。


「大丈夫よ。よっ」


 ヨミは何回もイノムシとは戦っているので、糸を吐き出す前に一撃で切り捨てた。


「ね?」

「一撃!? あれ、魔物使いと言っていませんでした?」

「そうね、サブには剣士を付けているからある程度は戦えるわよ?」

「モンスターに任せ……あ、まだテイムしてないとか?」


 魔物使いなのに、モンスターを召喚せずに本人が直接に攻撃をしたから驚いたのだ。まだテイムしてなかったなら、しょうがないと納得していたマミだったが…………




「いや、もうテイムしてあるわよ。来なさい、ドルマ」




 ドルマを呼び出してみせたことにマミは納得していた先にまた混乱していた。


「モンスターをテイムしているじゃん!?」

「あの程度のモンスターじゃ、召喚する時間が勿体ないわ。現に一撃で終わったでしょ?」


 ATKが100以上はあるとは言ってないから、マミはどうして一撃で倒せたのかわからないようだ。まだ初日で魔物使いがATKが100以上もあるとは思わないから、余計に混乱しているようだ。


「詳しくはまだ秘密だけど、このようにイノムシ程度なら一撃で倒せるから採集に集中していいわ」

「そうですか……わかりましたぁ」


 マミはその詳しくを知りたがっていたが、まだ信頼されていないから仕方がないと納得しつつ、採集を始めた。

 ヨミはドルマをすぐ帰還させた。仮の仲間のマミはともかく、まだ他の人には見せたくなかった。悪役をやるなら秘密は沢山あった方がいい。







「あら、次が…………うわっ、毒々しいわ」


 しばらくすると、新しいモンスターが現れ、そのモンスターは蝶だが、羽がまだら模様で間違いなく毒を持っていると確信出来た。



ヴェノムバタフライ レベル4



「ドルマに任せるかな……」


 近づくと燐粉で毒を受けそうなので、鉄の剣であるドルマなら毒を受けないだろうと思い、召喚したのだがーーー






 ドルマが攻撃をした瞬間、頭の上にドクロのマークが浮かんだ。






「毒を喰らったーーー!?」

「ヨミちゃん……、モンスターだって生きているから、毒を喰らっちゃうんじゃ?」


 いつの間にか、採集をしていたマミがヨミの側へ来て疑問を口にしていた。


「いやいや、鉄の剣だよ? ……あ、毒無効のスキルがなかったっけ」

「私は初心者だから、よくわかりませんが無効や耐性のスキルがあるのは聞いていますので、それがないとダメなのでは……」

「あちゃー、物質系のモンスターだったら、毒は無効が当たり前だと思ったのは失敗だったかぁ」


 回避は高いようで、ドルマの攻撃をヒラッと避けていた。毒を受けているドルマが不利そうなので、ヨミも攻撃に加わることに。勿論、近づいて毒を受けるヘマはしない。


「森の中でも石がゴロゴロしているのは助かるわ」


 ヨミの攻撃は投石。むしろ、あまり近づけないヴェノムバタフライを倒すために準備された攻撃方法なんだろう。

 スキルなしの投石ではあまりダメージが高くはないだろうが、ヨミには関係はない。ATK100以上もあれば、レベル4のモンスターにダメージを与えられないのはあり得ない。スナップが利いた投石はまっすぐにヴェノムバタフライへ飛んでいきーーー




「!?」




 羽を撃ち抜き、バランスを崩した隙にドルマの切り落としが胴体へ直撃した。その一撃で一気にHPが減ってーーー0になった。


「わぁっ! ドルマは強いんですね!」

「うんうん、そうだろそうだろ」


 ドルマが誉められ、ない胸を張るヨミ。だが、フラフラと近づいてくるドルマを見て、さっさと毒消しを出して掛けてやった。


「大丈夫!?」


 ドルマは口がないから喋ることは出来ないが、なんとなく大丈夫~と言っているような気がした。


「HPはまだ半分以上あるけど、毒だけでこんなに減るんだ……」

「この先は毒消しがないと厳しいかもしれません」

「毒消しはあと4つしかないから、あまり先に進まないようにしましょう」


 思ったより毒のダメージが高いので、この先はまだ進まないように、森の浅い所を回って、採集と護衛を続けるのだったーーーーーー








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