第5話 パーティを組む
洋館で戦い続け、『テイム』のレベルが1つ上がったがプレイヤーレベルはなかなか上がらなかった。ドルマと分配されているから仕方がないのもあるが、バットやミイラでは経験値が少ないので、別の場所へ向かおうかと思ったら……
ん、音が聞こえる? もしかして、私以外のプレイヤーが来ている?
ここは良い狩場だとは言い難い。ヨミの様な目的を持っているならともかく、他のプレイヤーにとっては質の悪い物ばかりが入っている宝箱があるだけの洋館には旨味がないのだ。ボスがいるとは聞いたこともない。
何のようでここへ来たのか気になったヨミはドルマを帰還させ、音がする部屋を覗いてみることにした。
「ーーー、さっーーーれーさい!!」
そこには、槍を持った女性がミイラと戦っている所だった。
「さっさと倒れなさいよッ!!」
槍の捌きから、経験者であるのがわかる。始まったばかりだと考えれば、レベルはミイラの方が高いのは確実。しかし、ミイラがタフでなかなか倒れないだけで、女性の方が押しているように見えた。
あら、HPがもう少ないじゃない。ポーションを買うの忘れたかしら?
よく見ると、女性のHPが僅かしか残っておらず、回復をしないことからポーションを買うの忘れたか切れているのどちらかで、女性から焦りが見られる。放っても良かったが、最初に出会ったプレイヤーということで、特別に助けることにした。
「ほい」
「キャッ、冷た!? ……これは!」
女性のHPが少し回復した。
「ポーションを投げたから、やっちゃいなよ」
「君が!? ありがとう、ちょっと待ってて!」
HPが回復したことで、アーツが使えるようになり、『刺突』で三分の一は残っていたミイラのHPが0になった。アーツはHPを少し削ることで発動出来るが、さっきはギリギリだったので使えなかったのだ。
「ふぅ、ありがとうね。えっと……」
「ヨミです。一応言っておきますが、成人していますからね」
「歳上!?」
ヨミは驚かれることに慣れた様子で、話を続ける。
「ポーションを忘れたの?」
「あ、はい。急いでここに来たので」
「ふーん? ここの旨味はあまり無かったと思うけど」
「いえ、ここのミイラは低確率ですが、綺麗な包帯を落としますので、それを狙ってきた……きました」
「あ、敬語とかはいいから。違和感を感じちゃうでしょ?」
「あ、いいの? 助かるわ。あ、名前を言っていなかったわね。私はメルナと言うわ。メインは裁縫師をやっているわ」
ヨミの見た目は中学生にしか見えないので、敬語で話すのは違和感を感じてしまうので、敬語無しを認めた。
「裁縫師なんだ。私は魔物使いよ」
「あ、それでここのモンスターを狙って?」
「ええ、もうテイムしたから街に戻ろうと思っているわ」
「あ、街に戻るまでパーティを組んでくれない? 回復してくれたけど、夜になりそうだから一人で戻るのは厳しいかも」
窓から夕陽の赤い光が差し込んでいるのが見えたから、街へ帰り道の途中で夜になるのは間違いない。
「夜の方が強いんだっけ。構わないわよ。綺麗な包帯は手に入れたの?」
「ぜんぜんだよー、低確率でなかなか出なかったわ。でも、いいのよ。次はポーションを買ってからまた行くから」
「そう。じゃ、組みましょうか」
帰り道だけパーティを組むことになった。メルナもヨミと同じレベル4なので、帰り道であっさりとやられはしないだろう。
「あ、ポーションは街に着いたら返すでいいかな?」
「別にいいわよ。ここの宝箱で見つけたし」
「それでもよ。もし一撃でも喰らったらやられていたのだから、そのお礼ぐらいはするわよ。もちろん、ポーションだけで終わらせようとは考えていないわ」
「いいと言っているんだけど……」
「そうだ、布装備になるけど『裁縫』で防具を作るわよ?」
どうしてもお礼をしたいようで、何も言っても無駄だとわかりつつ、そのお礼を受けとることにする。ヨミはタダが好きだが、お礼とかは素直に受け取ろうとはしない面倒な女性である。
「わかったわよ」
「ええ、お礼は素直に受け取るものよ」
そう言い、メルナは胸を張るとぷるんと揺れ、その大きな胸にイラッとするヨミだった。メルナの容姿はボーイッシュな髪型で引き締まった脚をしていてスポーツが得意そうなキャラに見えるが一部分だけは女性だとハッキリと表現としているぐらいに大きな物をお持ちであった。
ヨミは胸から視線を外して、さっさと出ようと足を進めた。
「よ、ヨミさん? なんか、雰囲気が……?」
「いいから、さっさと出るわよ」
「何が起こったのー!?」
いきなり、ヨミの様子が変わったことに混乱するメルナだったが、離されないように慌てて着いていくのだった。
「へぇ、サビソドをテイムしたんだ。でも、なんでサビソドを選んだのか聞いてもいい?」
「誰もテイムをしなそうだから。他の人と同じモンスターを連れていくとかつまらないじゃない?」
「そう? 同じモンスターでも強さが違うし、スキルも全てが全く同じとかはないから同じモンスターとは言い難いじゃない?」
「そこまでは考えてなかったわ。ただ、そう思ったからサビソドを選んだだけよ」
メルナと話しつつ、魔物使いらしくモンスターに戦いを任せるヨミ。メルナとパーティを組んだといえ、『武具化』のことは見せるつもりはなかった。もし、こっちに向かってきたら初期の剣でも露払いして、ドルマにトドメを刺せてやれば、メルナには普通の魔物使いにしか見えないだろう。
夜になった外はモンスターが変わり、レベルも昼のと比べて1~2は高くなっていたが、レベル6のドルマには苦戦するほどではなかった。ドルマはダメージ判定の部分が他のモンスターより少ないので、敵のモンスターは戦いづらそうにみえた。
「ドルマが倒しちゃうけど、いいよね?」
「うん、今は一体しかいないから任せるわ」
「そうか。『パワースラッシュ』だ!」
ヨミの指示でドルマの刀身が、淡く光ってモンスタースキルが発動した。指示をしなくても、ドルマの判断で発動もできるが、指示をした方が効果的なタイミングで発動できる。もうHPがなかった敵はドルマのスキルで地に伏せて消え去るのだった。
「お、ようやくレベルアップしたわね。ドルマは……まだか」
「レベルアップしたんだ。おめでとう」
「ついでにドルマもレベルアップしてくれれば良かったけどね」
この調子で帰り道を進んだけど、一体以上は出てくることなかったので、ドルマが全て片付けていった。30分程で洋館から街へ着く事が出来た。
「ふぅー、ようやく街に着いたわ! ヨミさん、ありがとうね!」
「私は何もしてないわ。お礼はドルマに言ってね」
「ドルマ、ありがとうね」
ドルマはメルナの言葉がわかったのか、ぷるぷると刀身を震わせていた。顔どころか目もない浮いている剣のドルマだが、感情はあるようだ。
「私はまだ店は持っていないから、作業場を借りて『裁縫』をしているの。お礼のことだけど、装備は頭と体、どちらがいい?」
「頭だとリボン、バンダナ?」
「そうね、まだレベルは低いからAGIを上げるバンダナしか作れないわね。効果なしならリボンも作れるわ。体ならDEFを上げるワンピースぐらいかな」
「ワンピースでお願い。色は任せるわ」
「ええ、わかったわ」
ワンピースが完成するのは、現実の時間で明日の昼になるのでフレンドコードを交換して、都合が合ったら貰いにいくと約束した。そして、パーティを解散してヨミはログアウトした。
もちろん、ポーションをくれるのも忘れなかった。3つも貰えた。
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