第1話 『イルミナ世界』
『イルミナ世界』、これから冒険をすることになるVRゲームのタイトル。レベル、スキル、職業ありのゲームで最初のプレイヤーはメインとサブの職業を選び、その組み合わせで戦い方が変わる。
魔物を倒していき、レベルを上げて最終的に魔王を倒すのが目的となる。
美世が住んでいる五階建てのマンション。
「ふんふん、職業とスキルは沢山ありますね」
飲み会から解散し、美世が一先にやり始めたことはキャラを作り上げることだった。明後日から始まるゲームだが、キャラ作成だけはソフトを買ったらすぐ出来るようになっている。パソコンを開き、『イルミナ世界』のサイトを見ていく。
メインとサブは…………あら、このスキルは面白そうだね。この組み合わせなら! 最初から出るあのモンスターがいれば……ふひっ!
美世は面白そうな組み合わせを見つけ、興が乗った。美世が選ぼうと考えているスキルはβ版では不人気だが、美世が思い付いたやり方なら、もっと強い使い方が出来そうだと、悪どい笑顔を浮かべながら、β版でのデータや掲示板を見ていく。
職業とスキルを決めるだけでも、二時間は掛かっていた。容姿はあまり変えず、髪色を銀髪で目の色は藍色に変更しただけだ。ニックネームは『ヨミ』。
名前を逆にしただけだが、美世はそのニックネームを気に入っていた。
「うひっ、皆は驚くだろうねー」
金曜日も過ぎ、土曜日の昼前。イルミナ世界は12時からなので、10分前にヘッドギアを着けて、ベッドに寝転がる。きっかりと12時になったのを確認して、スイッチを入れた。
ーーーようこそ、イルミナ世界へ。
そんな音声が聞こえたかと思えば……既に広場で立っていた。
「おおっ……」
サイトを見て、知っていたが実際に見るととんでもなく高いグラフィックが使われていて、リアルのと変わらない感覚を感じていた。周りをチョロチョロと見回すが、まだ親友達は来てないのか姿が見当たらない。
このまま、待つのも暇なので作成したキャラの確認をし始めた。噴水を覗きこむときちんと銀髪に藍色の瞳になっているのがわかる。それ以外はリアルのと変わらない。
ここでも中学生と間違われるんだろうなぁ。身長と体重は変えられないからしょうがないと思うけど、せめて10センチは欲しいな……
出来もしないことを考えても仕方がないので、ステータスが作成時と違っていないか確認するーーー
ステータス
名称:ヨミ
レベル1
職業
メイン:魔物使い
サブ:剣士
HP:120/120
MP:200/200
ATK:20(+110)
DEF:17(+20)
INT:25(+100)
MDF:12
AGI:27
LUK:14
スキル(メイン)
『テイムLV1』、『鑑定LV1』、『武具化LV1』、『防具化LV1』、『|武技(アーツ)不可』、『魔法不可』、『空白×4』
スキル(サブ)
『空白×10』
スキルポイント:0
称号
なし
武器
右手:初期の剣 ATK+10
左手:無し
装備
頭:無し
身体:冒険者の服 DEF+10
右腕:無し
左腕:無し
脚:冒険者の靴 DEF+10
アクセ1:無し
アクセ2:無し
もし、他の人がこのステータスを見たら、眉を歪めている所だろう。まず、普通にやるなら、取ることはあり得ないと言えるスキルがあること、そして武器スキルが無いこと、そして……β版では使えないと言われている、ゴミスキルが載っていたから。
ヨミが選んだスキルの詳細を読むなら…………異様であるスキル群の中で普通の普通である、『テイム』、『鑑定』を先に見るとしよう。
『テイム』
魔物使い系統にしか使えないスキル、モンスターを使役するのに必要。スキルレベルが上がることにより、成功率や使役数が増えていく。(ただし、ボス類に関しては1%もないぐらいに極低確率となっている)
普通のモンスターへのテイムの成功率については、他のゲームにあるような低確率で鬼畜! と言うことはない。弱らせてからスキルを使えば、自分より弱いモンスターは成功することは可能。強いと成功率が低く難しいが、その前に後衛の魔物使いはやられてしまう可能性が高いだろう。
『鑑定』
アイテム、モンスターの情報を見ることが可能になる。スキルレベルが上がることにより情報の量が増える。
皆が必ずと言ってもいいぐらいに取るスキルであり、情報が増えるだけ有利になる分、持っていても損はしないだろう。
さて、2つのスキルの詳細を知れたが、あとは普通ではないスキルの紹介となる。まず、『武具化』と『防具化』だが……
『武具化』
あらゆるオブジェクトを武器として扱うことが可能となる。スキルレベルが上がることにより武器の重量が×10キロずつ減っていく。(ただし、破壊不可能のオブジェクトは不可、世界に繋がっているオブジェクトを武器として扱うのも不可)
これだけだとわかりにくいが、この世界ではあらゆるオブジェクトがあり、それを手に持てば武器にすることが出来る。世界と繋がっているオブジェクトを武器として扱うのは不可となっているが、破壊可能な壁や木は対象となる。木を武器として扱いたいなら、一度は採集で切り落としてアイテムにすれば扱える。だが、武技は使えない。耐久度も普通の武器より低い。重量が増えればATKは高まるが、普通に武器を使った方が強いと言う理由で不人気のスキルとなっている。
『防具化』
あらゆるオブジェクトを防具として扱うことが可能となる。スキルレベルが上がることにより防具の重量が×10キロずつ減っていく。(ただし、破壊不可能のオブジェクトは不可、世界に繋がっているオブジェクトを防具として扱うのも不可)
これも『武器化』と同様に不人気のスキル。オブジェクトを防具にするについてだが、例えば鉄板を腹に仕込むなどをすることで、防具として判断してくれるが……装備枠を喰われてしまうのが不人気の理由になった。腹に鉄板を仕込むと、身体の枠に鉄板と出てしまい、他の防具を装備出来なくなる。『武具化』も同様であるーーーーーー
あと2つのスキルが残っているが、これらのスキルは不人気と言うよりも、普通に冒険を楽しみたいなら絶対に取らない。このスキルはマゾ専門のスキルと言ってもいいぐらいに、縛りプレイがしたい人にオススメするスキルである。それが、制限スキルの『武技不可』と『魔法不可』ーーーーーー
あ、ちなみにヨミはドMではありません。
『武技不可』
武器スキルのアーツが使えなくなる。
ATK+100される。
『魔法不可』
魔法スキルが使えなくなる。
INT+100される。
他のスキルと比べて説明は少ないが単純でわかりやすい。このスキルは制限スキルと呼ばれ、デメリットが強いスキル。アーツと魔法が使えなくなる代わりに、ATKとINTが上がる効果はあるが、強いのは最初だけで長期的に見ると他の強化系スキルに劣ってしまう。スキルレベルがないので、これ以上に強くなることはないのを表しているので、強いデメリットがある分だけ長期的には不利だ。
だが、ヨミはそれらの詳細を知っていてもそのスキルらを選んだ。これから悪役として動くなら、それらしいスキルを取るのもいいが、それではつまらない。楽しみたいなら、今までないプレイスタイルを生み出し、突き進みたいと考え、これらのスキルを選択した訳だ。
「うんうん、問題はないわね…………あ、見つけ!」
ステータスの確認を終わらせ、周りを見たら見知った顔を見つけた。なんとなくチャラそうな顔をしている男、ゲームの世界でも七三の髪型をした男、ボンキュッボンで色気を放つ女が集まっている集団へ声を掛けるヨミ。
「おーい、本当にわかりやすいよね!」
「お、いたぞ! これだけ人が多いと小さい人を見つけるのは大変だよなぁ」
「むきぃー! 小さいと言うなー!」
「あら、銀髪にしたのね。可愛い可愛い」
「撫でるなー!」
「ようやく、皆が集まりましたか。それにしても、皆は殆ど変えていませんね?」
「こっちでも七三髪をしてくるとは思わなかったよ!?」
合流でき、皆で笑い合う。これから悪役として動く集団には見えず、和気藹々な雰囲気が流れていた。
「さぁ、ここでは大きな声で話すのは不味いよな。だから、人気がない場所を探そうぜ!」
「今なら、カフェに入る人はいないかしら?」
「そうだな。普通ならさっさと冒険をしたいだろう」
「あ、カフェなら私が調べておいたから、着いてきて!」
ヨミは昨日の内にこの最初の街、『アルトの街』の地図を見ておいたので、カフェが何処にあるかは頭の中に叩き込んでいた。皆が最初にすることは、秘密の話し合いをする為の場所を確保するのだったーーーーーー
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