その84 グレリア一家
グレリアの娘であるパティが、俺と分かった瞬間ダッシュで飛び込んで来た。
「大きくなったな、元気そうで良かった」
「うん! 六歳になったよ!」
俺の膝の上に乗り、満面の笑みで頷いていた。そこへセリカが微笑みながらパティに声をかけた。
「初めまして、パティちゃん! 私はセリカっていうの。よろしくね!」
「……あなたラッヘ兄ちゃんのなに?」
「え!?」
するとあからさまに嫌そうな顔で俺の首に抱き着いて来た。
「はっはっは、パティはラッヘが大好きだからなあ」
「ラッヘ兄ちゃんはわたさないもん!」
「あー、こっちだったかあ」
「なんだ? パティ、セリカは仲間なんだ、そういうのはよくないぞ」
「う……ごめんなさい……」
セリカが仕方ないなあと言いつつ苦笑していた。よく分からないがパティが謝ったのでこの話は終わりだ。
そこで俺の胸元がもぞもぞと動き、フォルスが肩に乗って来た。
「ぴー!」
「ひゃあ!? なあに?」
「おお、またなんか出て来たぞ」
フォルスはすぐにパティの手をぺちぺち叩き抗議の声を上げていた。
もちろん痛くない。パティは目をパチパチさせながらフォルスを見つめる。
「わあ、可愛いよー! ラッヘ兄ちゃんの?」
「ああ。こいつはフォルスという。ママにこいつとそこにいるフラメを紹介しに来たんだ」
【よろしく頼む】
「わあ、喋った!?」
親子らしく同じような反応をしていた。俺がパティを下ろすと、フォルスが膝に鎮座して満足そうに鼻を鳴らす。
「ぴゅひゅー♪」
「あ、ずるい」
「こら、パティ。ラッヘとセリカお姉ちゃんを困らせるんじゃない。こっちへおいで」
「はぁい」
「ふふ、可愛い」
大人しく母親の言うことを聞いて隣に座るパティ。
さて、ようやく話ができるかと思ったところで、また扉が開いた。
「グレリアぁぁぁぁ! パティが居なくなったよぉぉぉ!」
「うわ、なに!?」
「ぴゅいー!?」
叫びながら入って来たのは長身の眼鏡をかけた男だった。もちろんこの人はこの家の住人である。
「あら、おはようテリー。パティはここにいるけど?」
「おはようパパ」
「良かったぁぁぁぁ!」
「パパ、うざい」
ということで旦那のテリーさんだ。嫁と娘が好きすぎていつもこういう感じになっている。セリカとフォルスはびっくりし、フラメはあくびをしていた。
「おう!? パパはショックだよ……」
「それよりお客さんだよ」
「ん? おお、これはラッヘ君! 久しぶりだねえ」
「どうもテリーさん。お邪魔しています」
「初めまして! セリカといいます。ラッヘさんの彼女で冒険者をやってます」
セリカが挨拶をすると、テリーさんが眼鏡をくいっと上げながら口を開いた。
「ラッヘ君に彼女……! なんと、これはめでたい! グレリア、今日はお祝い……いだっ!?」
「落ち着きなってテリー。今から事情を聞くところなんだからさ」
騒ぎ出したテリーさんの頭にグレリアの拳が突き刺さり、パティに脛を蹴られていた。
【ふむ、にぎやかだな】
「置物が喋った!?」
「もうそのあたりはやったから早く座りな」
グレリアに座らされ、ようやく落ち着いて話ができる環境になった。
グレリアとテリーさんの間にパティが座る形だ。
「ということで、改めて話をするがこっちがフレイムドラゴンのフラメで、こいつがクイーンドラゴンの子供でフォルスだ」
「ドラゴン……!?」
「それももうやった。それで、
「それなんだが――」
ということでいつもの話を三人に聞かせることにした。フォルスとの出会いからフラメを正気に戻したあたりはさすがにグレリアも驚いていた。
バスレの話は割愛である。
「なるほど……その竜鬱症という病気のせいでフラメは暴れていたというわけか。それをフォルスの唾液で治した」
「ということにしているんだが、それが真実かどうかはわからないだろ? だから依頼を頼みたいと思ったんだ」
「僕達に、ということは病の研究だね。でも自国でやらなくていいのかい?」
俺の言葉にテリーさんが心配してくれる。知り合いではあるが他国に依頼したら揉め事になりやすいことを知っているからだ。
「大丈夫。フォルゲイトの陛下には依頼することを告げている。一応、向こうにも素材は提供しているから角は立たないよ」
「さすが、手回しはちゃんとしているね! そういうことならいっちょやってみますか!」
「ありがとう。報酬ももちろんある」
「ははは、ドラゴンの研究ができるんだ。そういうのは二の次さ!」
テリーさんが笑いながらそんなことを言う。金よりも研究だからなあこの二人は。
【よろしく頼む】
「ママ、この子も可愛い!」
「そうだねえ」
「ぴゅーい」
そこでフォルスも一声鳴いて頭を下げた。やはりフラメの真似をしているようだ。
「あはは、可愛いチビちゃんだね!」
「ラッヘ兄ちゃん、その子を抱っこしてもいい? こっちのも」
「フラメは大丈夫だ。フォルスは?」
「ぴゅい? ……ぴゅ!」
俺が尋ねると、フォルスは俺とパティの顔を見た後フラメの隣に二本足で立ち、またも「どんとこい」のポーズで待ち構えた。
「わーい!」
「それじゃ、パティが満足するまでちょっと話でもしようか。お茶をもってくるよ」
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