第16話 「王女様の逆襲」
「オリビア?どうしてここに?」
王子様を聞いて驚いた王女様なんだけど、ついでに私たちも見つけたようだった。
「お兄さまこそ、どうしてここに?それに聖女様まで、それよりフリージアはどこ?お兄さまをたぶらかしたあの悪女!!」
王女様がキョロキョロとしていると当然のようにみんなの自然が私に集まった。その視線に気付いた王女様は私を見た。
「何故?皆様は聖女様をご覧になるの?」
すると王子様は静かに暴露してしまった。
「聖女様の名前がフリージアだ」
「・・・」
王女様の目が点になっている。
「ということは、お兄さまを誘惑したのは聖女様なの」
それを聞いたクラウス様が
「そうだ。エドワード様を誘惑したのはこいつだ」
その言葉にはびっくりしたんだけど、その横でクスクスと笑っている腹黒の三遊亭レオン!!笑っている場合じゃなくて…と思っていると
「エドワードの奴、ここ最近、ずっとフリージア・フリージアだったもんな」
「な!!」
王子様の顔が真っ赤になっている。敏感に反応したのは、王女様だった。
「聖女様!!見損ないましたわ」
「私は何もしていません。王女様、信じて下さい」
私の言葉は、無情にも静けさしか生まなかった。横で見ているお父様とお母様もオロオロとしているだけ、もう…本当に役に立たないんだから、けど、今そんなことを言っている場合ではない。どうする?このままだと国外追放になってしまう。しかし、どうしたら?
すると王女様はうつむいてしまった。
「せ…聖女様が相手ではかないませんわ…ひっく…ひっく」
私はそっと王女様を抱きしめた。
「せ…聖女様」
「王女様…王子様をとったりしませんから、安心してくださいませ」
「本当に?」
「本当よ」
すると王子様が近くに来られて、王女様に手を差し伸べられた。
「オリビア…帰ろう」
「はい…お兄さま」
こうして王子さまたちは帰られたんだけど、帰るときの一言が気になった。
「また来る」
嵐のような出来事はこうして終わって、一晩を実家で過ごすことなく帰ることにした。それは、聖女様が帰ってきているという噂で、病気を治してほしいという人たちが集まりだしていたからだった。当然、来た時と同じ服装をして、
「ここの召使でしょ?聖女様にとりついでほしいんだけど」
「すみません。あのお屋敷にはいませんよ」
するとその場にいた人たちがざわめき始めた。
「うそをつくな」
「そうだそうだ!!」
「さっき、王子様、王女様がこられていたではないか」
「確かに、王子様、王女様は来られていましたが、今現在、あのお屋敷には聖女様はいません」
だって、私はここにいるんだもん。嘘はついていません。しかし、この人たちは引き下がらない。
「嘘をつくな!!」
「聖女様は偽りか!!」
今にも暴発しそうな連中の中には怪しい輩もいた。
「だいたい、こんな中流貴族から聖女様が出るはずもない。ドラボール家は、俺たちを騙したんだ」
「そうだ!!こんな貴族はいなくなればいいんだ!!」
いつの間にか彼らは武器を持って構えていた。おかしい、この人たち…ものすごい悪意を感じた途端、
「まずは、この召使を血祭りにあげちまえ!!」
暴徒と化した人々が私に迫ってきたその時だった。晴天のはずだった空が一瞬で暗闇になって、稲光を落と大爆音とともに地面が少し揺れた。私はそのまぶしさに目をつぶってしまったんだけど、目を開けると悲惨な光景がそこには存在していた。雷で怪我をした人々の阿鼻叫喚が渦巻く中、黒い物体が人々を襲っていたのだった。すると、私の体が自然と輝き始めた。やがてその光は人々を包み、黒い物体をも飲み込んだのだ瞬間に、暗い物体は消滅したのだった。
光が消えてからしばらくして気付いた。そこにいた人々のケガは完治していた。更に、彼らは、私の方を見て、
「聖女様!!」
そう言って、手を合わせ始めたのだった。やばい、人々は手を合わせてひざまづいて、祈りを捧げ始めた。
どうしよう?
私がこうして考えている間にもあたりの人たちが更に集まって来ている。取り敢えず、この人達の記憶を消そう。
『パラライズ』
『メモリーイレイザー』
『オーバーライト』
こうして、彼らの記憶を消した私はその場から逃げたのだった。
『テレポーテーション』
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