第13話 「ビンセント家のメンツ」

しばらくして、オリバーは見知らぬ公園で部下に起こされ目を覚ました。


「ここは?」


記憶を探りながら何故ここで寝ていたのかがわからない。


「オリバー様、どうやら公園のようです」


「そのようだな?俺たちは何故、ここにいるのだ?」


「ドラボール家に行く途中まで、覚えているのですが、この公園にたどり着いた途端、気を失いまして」


「そうか、他のふたりは?」


「私と同じことを言っています」


オリバーは、違和感を感じながらも記憶をたどり、一つの結論にたっした。そうだ、確かに、俺はドラボール家に向かう途中、この公園にきている。これは所謂、白昼夢というやつか。


「これは、白昼夢というやつだ」


「流石、オリバー様、我々も同意見です。ところで今からどうされますか?予定通り、ドラボール家に向かいますか」


オリバーは少し考え


「予定通り行くぞ!!」


こうしてオリバー達は我が家に再びやって来た。丁度その頃、私は両親から驚愕の真実を知ることになる。それは、あの貧楚なオリバーが私の婚約者であったこと、そして、婚約を破棄された私は自暴自棄になって、馬車に引かれたということだった。


「そんな…あんな奴に婚約破棄されていたとは」


今の私からは想像がつかない。しかし、両親の話を聞くと私がそんな行動を起こした理由は、社会構造にあるという。女性は基本的に仕事につかない。特に貴族の女は、結婚適齢期までに結婚できなければ、庶民と結婚するか、貴族の妾になるしかないと聞いた。だから、私は自暴自棄になったのだろう。しかし、今の私にとって、結婚に何の魅力もない。だって、治療するだけで十分食べていけるようになったからだった。

するとそこへ召使の一人が入ってきた。


「大変です。ビンセント家の方がまたやってきました。どうなさいますか?」


「追い返すと厄介だ。もう一度家に入れろ」


「どうします?」


「厄介なことになったな」


「大丈夫ですよ。私に任せてください」


それは、マーリン様から何かあったら、現在修行中ですと押し通せと言われたのだった。だから、絶対に大丈夫だと思っていたんだけど…




「フリージア、まさか、君が聖女になっていたとは」


本日2回目の台詞、記憶を消したことを知っている私にとっては、想定内だけど、両親は呆然としている。ま…とうぜんだけど、そのことは置いておいて、


「そうですか…」


「元婚約者のよしみだ。今や上流貴族ビンセント家の俺様の妾にしてやる。光栄に思え」


「お断りします」


「そうか‥そうだよな…」


一人勝手に納得してくれた、これで帰ってくれれば、っと思っていると護衛の一人がオリバーソースに耳打ちをしている。


「な!!今、何と言った?」


「お断りします」


「はぁ~?フリージア!!正気か?」


「正気ですが…なにか?」


オリバーソースの顔が面白いくらいにゆがんでいる。完全に怒っているみたいなんだけど、今の私にとって、結婚なんてどうでもいい。しかし、私の言動に彼のプライドを思いっきり傷つけたようだった。


「断るか!!このビンセント家の申し出を」


「はい。マーリン様から修行中の身と言われておりますので」


この言葉がトリガーとなったようだった。


「この中流貴族のくせに!!こやつを捕まえろ」


彼の護衛が私を取り囲んだ。


「あなたは、王宮筆頭魔導士様の命令を無視されるのですか?」


「やかましい!!ここまでコケにされて、黙ってられるか?」


両親はこの光景におびえている。当然だろう、上流貴族ビンセント家の命令だ。貴族社会においてこの上下関係は破ることができないことなのだ。しかし、私はこんな理不尽なことは許すことはできなかった。


「そうですか…残念ですね…『パラライズ』」


すると私を取り囲んでいた。護衛が一斉に倒れ込んだ。


「な…何をした?」


「正当防衛です。か弱い私に3人もの男性が剣を振りかざして襲ってこようとしたのですよ」


「やかましい!!ここで俺の剣の錆にしてくれる!!」


彼は剣を抜いて構えた。一応、中流貴族出身だから剣の腕はそれなりになっている。けど、私には魔法があるので、どうとでもなるんですけど、するとそこへ別な人物から声がかけられてきた。


「そこのもの待ちない!!」


「何奴」


そこには3人の男性が立っていたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る