第12話 「元婚約者ってあんた誰?」
記憶をなくしてから1か月ほどたったある日、私は、久しぶりに自分の家へと帰った。するとそこには、聖女様が来るということで病気やけがを治してほしいと訴える人々で混雑をしていた。因みに私は普段着を着ている。それは、治癒室で着ている白を基調とした服ではなくて、普通の女性が着るような服だった。
しかも、貴族は絶対に着るはずがない。一般ピープルが着る服だそうだ。それを着た私は、動きやすさと微妙な配色にある意味満足をしていた。
そんな私を見た集まっている人々は
「ここの召使か…」
などと落ち込む声や逆に
「そこの召使!!聖女様はいつ来られるんだ」
などと私に命令する人もいたが、そんな人たちを無視して家の中に入る。そして、扉の外に向けて
『ヒール』
呪文を唱えたのだった。因みにほとんどの人は自分が治ったことに気付かないでその場にとどまっていた。ということは、彼らの病気は自分自身にあるのだと思う。
そんな私にいきなり声を掛けてきた男性がいた
「フリージア、まさか、君が聖女になっていたとは」
振り返ると見ず知らずの男、
「あの〜どなたさまですか?」
「何を寂しいことを言っているんだ?フリージア、婚約者のオリバーだよ」
そんなことを言われても全く記憶がない私にとっては何が何だか、しかも、お父様もお母様もかなり困惑した表情をしている。ということはこいつは詐欺師に間違いない。私が記憶喪失だということを逆手にとってこの家を乗っ取る悪い人に違いない。
こんな貧楚な顔つきの男が私の婚約者なはずがない。そして、その男はくだらないことを言ってきた。
「元婚約者のよしみだ。今や上流貴族ビンセント家の俺様の妾にしてやる。光栄に思え」
「あんた、バカ?」
「バ…バカとはなんだ」
「どこのどなたかは存じ上げませんが、例え元婚約者であっても、いきなりやって来て妾になれなんて言うお方とは話はしたくありませんので、早々にお引き取りを、さもないと」
「何を!!このビンセント家の俺を脅すというのか?」
こんなバカ、相手にしたくない。こういう時はマーリン様に教わったヒール系の魔術、メモリークリアを使おう。まずは気絶させて
「貴様!!俺様を無視する気か!!」
オリバーとかいうあほ男は、キャンキャンと負け犬のように吠えている。
『パラライズ!!』
「あふーーん」
なんとも間抜けな声を上げて倒れ込んだ途端、周りにいた人たちが慌てたんだろう。名前のところで言葉をかんだ。
「この女!!オリバー様(ソスァマ)ににゃにをした」
「オリバーソースっていうんだこの人」
「貴様!!」
護衛らしき人達は刀に手を掛けたんで。ここは正当防衛っと
『パラライズ!!』
数人の男たちはバタバタと倒れ込んだ。さてと、記憶を消しましょう
『メモリークリア―』
ついでだ。記憶も書き換えよう
『オーバーライト』
「これでよし!!」
そして、召使たちに指示をして、近くの公園
へ連れて行って放置しておいたのだった。
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