完璧な母親
母親のキルトと息子は二人暮らしだ。
夫とは数年前に別れて、母親のキルトが生計を立てている。
キルトは息子が苦労しないように懸命に働き、家事も完璧にこなした。
朝早く起き、掃除をして、息子の朝食の準備をし、自分の身支度を済ましたら息子を起こす。
そして、息子の朝の準備を済ましたら学校へ送り、自分は仕事へ行くといった。完璧な朝のルーティンを済ます。
ここでは省くが夜のルーティンも完璧だった。
側から見れば完璧で素晴らしい母親のキルトだが、キルトはかなりこだわりの強い母親だった。
家のありとあらゆる物の配置まで決めていて、床の僅かなチリカスのゴミや、洗濯物を干す服の順番まで、家の事は自分でやらないと気がすまなかった。
こうなると、息子の介入は許さなかった。
母親を気遣って家事を手伝うとしても、「いいよ!お前がやると余計面倒くさい!」と激昂し、箒や洗濯物を触ることさえ許さなかった。
こうなると息子も母親には強いこだわりがあると、家事は一切手伝おうとしなかった。
むしろ自分がやらなくても母親がやってくれると、楽でよかった。
ある日の梅雨のこと。数日続いた嵐の影響で、家の窓が壊れてしまった。
キルトは工具を持って窓の修理に取り掛かるが、慣れない作業で手こずる。
そんな様子の母親を見ても息子は一切手伝おうとしなかった。
ソファーで漫画を読んでいた。
キルトは自分がこんなに大変なのに手伝おうとしない息子をみて、ついに「少しは手伝ったらどうなの!!」とハンマーを振り回しながら怒鳴った。
一瞬驚いた様子の息子だったが、こだわりの強い母親のことだからと、関わらないようにして漫画に目を向けた。
キルトの中で何かが切れた。
キルトは息子に近づきハンマーを振り下ろした。
頭を何回も。
何回も。
何回も。
その間。息子は叫び声をあげ、自信の頭蓋骨が粉砕されていく音を死ぬ間際の土産として聞いてしまったであろう。
キルトは我に帰った時は、もう息子は頭に血を流しながら無言の状態だった。
息子の頭の出血を手で抑えようと息子を抱き抱えるが、もうすでに遅かった。
キルトは自ら警察に自首し逮捕となった。
近所の人達は、さぞ驚かれたであろう。
あんなに完璧で非の打ち所がない母親が息子を殺すとは。
キルトの逮捕の一件は小さな町の中で広まり、しばらくみんな話題に困らなかった。
奇妙な人達 ナマコ @yominokoe08
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。奇妙な人達の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます