第一幕第一場

第一幕第一場

ファウスト:(書斎で机に向い、大きな本を開きながら)いくら学識があってもかえって至る所で馬鹿にされる。

あらゆる本の中を探し回っても、賢者の石は見つからない。

法学や医学は全て無駄、

黒魔術の他に救いは見当たらない。

神学が何の助けになる?

夜を徹したことに給金が出るでなし。

破れていない上着を身につけることもなく、

借金から逃げて行く先のあてもなし。

地獄と盟約し、自然の神秘なる深淵を究めるしかない。

さて、霊を召喚し、

魔術について知らねばならぬ。

左側の声:(低い声で)神学を捨てて

魔術に没頭すれば、

そなたは地上で幸福になり、

そして全知となるであろう。

右側の声:(高い声で)ファウスト!ファウスト!分別を失ってはならない!

魔術にのめり込むのはやめよ!

神学を続ければ、

最後には幸福になるだろう。

ファウスト:(飛び上がって)左から声、右から声!

どちらを信じ、どちらの勧めに抗うべきか?

しかしまあ、どちらも詳しく聞いてみねばなるまい。(*)

右側の声よ、お前は誰だ?話せ!

右側の声:そなたの守護霊である!

ファウスト:もう一方の話す番だ。

左側の声よ、答えろ!

お前は誰だ?

左側の声:プルートーの王国からこの地へ遣わされ

そなたを幸福で完全にする者。

ファウスト:もしかすると悪魔の同類かもしれん。

しかし私を幸せで完璧にしてくれるそうだ、

それは望みにかなっている。

右側の声よ、私から手を引け、

左側の声よ、お前に従うぞ。

私に無欠の幸福をくれ。

右側の声:ああ、そなたの魂の哀れなことよ!

左側の何人もの声:ハッハッハッハ!

ファウスト:なんとまあ!

私の守護霊が泣き、もう一方が笑っている。

さて、この件についてはもう十分。

私の弟子がやってきた。


*Twitterで情報をいただいて修正しました!ありがとうございます。

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