3.祈りの少女と独りの少年
———白光と黒炎が、激しく衝突した。
まるで、叫ぶように。
または、滅ぼすように。
轟音を立てて、辺りは光に包まれた。
煙が晴れる。
静寂が訪れた。
騎士団長は肉片となって崩れ落ちていて、
リンの腹には大穴が開いていた。
「———姉ちゃん!!!!」
信じられないような顔をして、カーボは姉に駆け寄った。
「…僕のせいで!なんで、なんで姉ちゃんが!!」
「あー、これは回復できないなー」
絶望した顔をしているカーボに向けて、リンはやらかした、といった顔で言った。
そして、リンは、笑った。
「カーボ、この世界はクソだよ」
「でもさ、それでも輝いている人とか、守りたいものとかってのはあるんだ」
「だからさ、もしそれらが誰かに理不尽に傷付けられたり、苦しんでたりするんだったら」
「やってやれ、カーボ」
カーボに抱き着いた。
「クソみたいなら、変えてやったらいいんだ。カーボが、決めてやったらいいんだ」
そして、魔法を使った。
「私は、楽しかったよ」
本当の笑み。だって、
「≪創造魔法:魂魔法≫」
それは、創造魔法の一種。いたって単純な魔法。
魔力器官を、誰かの魔力器官に合成する。
調魔剤を作る魔法。
そして、血の繋がった人間の生きた魔力器官を使うのなら、その効果は永遠だ、と昔読んだ本に書いてあった。
「…!!」
カーボはリンから離れようとした。リンの大切な何かが自分に入ってきてしまっていると感じて。
でもリンは離さず、言った。
「ありがとう、頑張ってね」
リンの人生は、まるでリンの願い通りだった。
———カーボとずっと一緒に居れなかったということを除いて。
カーボの幸せを願って、リンは最期に笑った。
「姉ちゃん、姉ちゃん!!姉ちゃん!!!!」
慟哭が響き渡る。
(だって、僕が守りたかったのは、姉ちゃんだったのに!)
自分を呪って、カーボは姉に縋り付いていた。
ただ、泣いて、苦しんでいた。
カーボは、立ち上がれる気がしなかった。
リンの様に、抗える気がしなかった。
(僕は、姉ちゃんみたいに、強くなれない)
現実を避けるようにして、カーボは蹲って泣いた。
どれだけ泣いたか分からないほど時間が経って、カーボは死のうかと思った。
でも、できなかった。
自分のために死んだ姉のためにも、死ねなかった。
姉の魂が、自分の中にある。
それを感じようとしても、悲しくなるだけだった。
「≪ファイア≫」
ずっと使いたいと思っていた魔法が使えるようになっていた。
嬉しくはなかったが、また涙が出てきた。
「≪イリュージョン≫」
自らの姿を別の姿に幻視させる魔法を使って、カーボは結界と逆の方向へ歩き出した。
世界が小さく見えた。
そこへ逃げ込みたくて、走り出した。
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作者より
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