第3話 えー!何すか!? (スゥーッ) それは許せないと思います、コレ
「偵察が返ってこない。」
突然、国土の大半が焼失したアカリタン王国の隣国、ユカリタン王国の王城は物々しい雰囲気に包まれていた。
長い机に王族、貴族、王都に近い諸侯など二十数人がかける。
「あれは魔の瘴気で間違いないんだな。」
「はい。その通りでございます。」
額に汗を垂らした貴族が呟く。
「あと…一ヶ月。」
「本当に、…大丈夫なのか?」
「ご心配なら、やはり勇者の召喚契約をなさったらどうですかな?」
今までぼんやりとしていた老婆が目を細めていう。
「一人召喚するのに百個の心臓が必要なんだろ。伝説でしか聞いたことがないものに、そんなに用意できるか!」
「いや、この際使えるものは使った方がいいかもしれん。」
「王国を滅ぼした何者か、解放された魔族、隣接する他の王国。敵が多すぎる。」
貴族の一部と王族のほとんどは、概ね勇者の召喚契約に賛成だった。
「奴隷は買えるだけ買え。孤児や浮浪者と併せてできるだけ心臓を集めろ。」
決定に二日はかからなかった。
4つの国に囲まれた生き残ってきた歴戦の国家といえど、新たな脅威はそれだけ恐ろしいものであった。
「若い女と健康な男は隔離棟に回せよ~。次の儀式の弾になるからな~。」
それから王国は二週間で人を収集し、200個の新鮮な心臓と年間約100個の心臓を生み出せるシステムを手に入れた。
「贄を食らい、彼のものは深淵より示現す。来たれ異界の勇士よ。」
「これで2人か…」
――――――
「お前、解毒魔術使えるんだから性病関係ないし、その辺の女とヤればすぐ脱童貞だろ。」
「普通に犯罪じゃないですか。」
「だがお前にはそれができるポテンシャルがある。それを使わず死んでいくのは損だ。」
「そうですかね~。」
牢屋を抜け出してから三時間。
俺たちはゴーレムに乗って最寄りの町に来ていた。
ところどころ焼け焦げているが、いい町だ。
森に近い町から焼けていって、広い平原を挟んだため、ここが残ったのだろう。
「とりあえず腹ごしらえだな。」
俺たちを降ろしたゴーレムは、町の入り口(焼きあと)で丸くなって座った。
「おい!誰かいないか!?」
「今、ドローン飛ばしてるんでちょっと待っててくださいっす。」
俺はドローンで探せない家の中とか探すか。
「開けろっ!デトロイト市警だ!」
いないか。
めぼしいものも特になし。
「デトロッ!開けロイト市警だ!」
こっちもなし。
「開けろっ!死刑だ!」
なし。
「死刑だ!」
なし。
「死刑だ!」
なし。
「トロトロ死刑だ!」
誰も居ない。
パンだけ貰っていくか。
本当に着の身着のまま飛び出したようで、室内からは暮らしぶりがわかった。
俺たちはこんな普通の人たちも消してしまったんだ。
でも、案外普通に生きて行くんだな。
俺が童貞を卒業したのは、誰ともしれない酔った女の先輩だった。
正直、温かかっただけでそんなに気持ちよくなかった。
自分でアダルトグッズを使って、一人で、した方が気持ちよかった。
何も変わらない。
何も変わらない日常が待っていた。
思い出の一つでもあれば、感じるものはあったのかもしれない。
でも、いい。
ない方が、今は、きっといい。
「って、おい!」
視界の端で何か動いた。
たぶん、こっちだ。
一応、警戒しながらのほうがいいか。
弓に矢をつがえ、構えながら近寄る。
おにゃのこ、だと。
くすんだ白髪の少女が、壁とベッドの支柱の隙間で体育座りしていた。
貫頭衣みたいな薄い汚れた布を羽織っている。
「お兄さん…誰?」
お、お兄さん…だと。
バリュリュリュリュリュ
おいおい勢い余って矢を空中に撃っちまったぜ。
バラバラと屋根のかけらが顔に降ってくる。
「お菓子好きかい?」
「好き。」
「じゃあ、パンを半分あげよう。」
少女は不健康な程痩せていた。
しかも、なんでまだ町に残っているんだ。
「お父さんとお母さんは?」
「いない。」
「そっか。」
「面倒見てくれてる人は?」
「いっちゃった。」
「そっか。」
おいて行かれたのか。
わかってる。
原因は俺たちだ。
「俺と結婚するか?」
「…」
「なんで?」
なんで?
なんでだろう。
「そのほうが…面白い。…それだけは保証できる。」
沈黙が続いた。
途中、少女が俺の弓を見ていたのに気づいて、持っていた弓を消した。
少女の目はよく見ると青みがかっていて綺麗だった。
「やっぱり、私はいぃ…」
「うるせぇ!行こう!」
俺は知っている。
こういう勧誘の仕方で仲間になると、普段何を喋っていいかわからなくなる。
たぶん麦○らの一味だって、進捗報告と趣味の話を終えたら果てしない沈黙が待っている。
悪いとは言わない。
沈黙は雄弁に勝る、こともある。
則ち、沈黙を苦痛に思わなければ問題はないのだ。
この子なら大丈夫だ。
「そうじゃなくて…奴隷紋が…」
「大丈夫だ。切り替えていけ。」
その場で膝を突く。
「君、名前は?」
「メルシャ。」
「じゃあメルシャ。俺に乗れ。」
メルシャをおんぶして、再び家捜しを始めた。
「食べ物と服、金品。それだけでいい。」
「わかった。」
メルシャは洗っていない犬のような匂いがしたが、いい子だ。
年齢にしたら十歳くらい。
髪はぶつ切りっぽく短い。くせっ毛なのでウルフカットに近い。
俺はロリコンだからもっと興奮するかと思っていたが、そんなでもなかった。
上裸なので上半身はダイレクトにメルシャを感じるが、どう考えても痩せすぎている。
しかも、顔立ちや骨格、白髪や青い瞳が日本人とかなり離れていて別生物のように感じる。
「っ!///」
「こらこら、俺の乳首をいじるのはやめなさい。」
「やだ。」
メルシャは、おんぶしている背中から俺の乳首を触ってきた。
俺の離れ乳首が気になるのか。
くっ、こいつ上手い。
緩急をつけて俺の乳首をえぐってくる。
ゾクゾクする。
ゴーレムのところまでもつか?
もたせるしかない!
結果的に言えば耐えた。
快楽が限界に達する前にメルシャを一度降ろし、弓で自分の両乳首を撃ち抜いた。
「遅かったな…って大丈夫か?血まみれじゃないか。」
「はい。危ないところでした。」
ゴーレムの近くには、俺以外の三人はもう既に帰ってきていた。
乳首は、親不知が回復魔法ですぐに治してくれた。
「聞いて下さいっす。ダンジョン見つけたんすよ。」
「すげぇ!」
三人は俺が帰って来る前に、ダンジョンに行く算段をしていたようだった。
「ダンジョンって広いんでぇ、この重量有輪犂で耕してぇ、葉っぱ育てようと思うっす。」
「固定資産税が高そうだが良い案だろ?」
確かに良い案だ。
あの重量有輪犂は、牛ごと村から持ってきたのか。
「最高ですね。焼けた死体肥料にすればガンガン育ちますよ!」
「だろ。明日の朝一番に行って、ダンジョンボス倒してさっさと開墾するぞ。」
異世界に召喚されて約六時間。
今晩は、この町の近くに野営することになった。
野営地は、岩盤地帯を二股と俺で切り開いて雨風を凌げるくらいの場所を作った。
晩飯は二股が持ってきた家畜の鶏みたいな奴の肉とパンと目玉焼きだ。
この町だけかわからないが、調味料の味がエグい。
抹茶のお菓子腐らせたみたいな味だ。
とはいえ、親不知の魔術のおかげで風呂にも入れる。
ベッドも五人分かっぱらって来た。
明日はダンジョンだ。
俺は、割と満足して眠りについた。
その場の勢いで潰した異世界を再建する。 @yoyono_kenbou
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。その場の勢いで潰した異世界を再建する。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます