滅びゆく世界と創世の神々
幸崎 亮
第1話 〝過去へ〟滅びゆく世界
神によって創られた、植民世界・ミストルティア。
この世界は神々による〝世界創生計画〟の初期段階に生み出され、老朽化によって滅びゆく
ミストルティアに残った唯一の大地であるユグドラシア大陸には、フレスト聖王国とラグナス魔王国の二国のみが存在しており、それらは相互非干渉を
しかし、この日――。
均衡は前触れもなく破られることとなった。
なぜ、これほどまでの大軍勢に気がつかなかったのか。それは魔王国のみが用いる〝
「国境の様子は?」
神殿としての意匠を多く取り入れた、荘厳なる〝玉座の間〟にて。
フレスト聖王は直属の近衛騎士団長、ムダールに状況を
「
おそらく魔王軍は国境の目前にて、兵らの〝
突如として眼前へと突きつけられた、圧倒的な兵力。
これはいわば、聖王国への降伏勧告。
そして
最悪の状況を想像し、王は
「ダンディ神官長からの連絡は?」
「ハッ! 現在、調整の最終段階に入っているとのことです!」
「そうか……。我らに抗える手段があるとすれば、彼の
バルド・ダンディ。二十歳という異例の若さにて、聖王国の宮廷神官長にまで上りつめた経歴を持つ、天才的な男。
彼が研究中の〝時の
「まさか、魔王国は
現在、両王国の間には、一切の国交が無い。直近の交流として記録されているものでさえも、二百年前のフレスト神聖大学とラグナス魔術大学による〝交換留学〟が最後となっている。
聖王が思考を巡らせていると――。
取り乱した様子の兵士が一人、玉座の間へと飛び込んできた。
「申し上げます! ラグナスの魔王軍めが、国境を破って進軍を開始しましたッ!」
その一報により、空間内の空気が一気に張りつめる。
近衛騎士長ムダールは即座に防衛の指示を出し、伝令の兵を走らせる。周囲に控える側近らは明らかな
王は
「間に合わなかったか……」
「ああ、そのようだな? 愚かなる聖王よ」
ムダールの口から発された、男とも女とも判らぬ不気味な声に、聖王は
「きっ……さま……!? 魔王か……!?」
「ホホホ、この者の肉体を
魔王は悪意に満ちた笑顔を浮かべ、怯える側近らを
近衛騎士らは震える手で剣を構えるも、もはや守るべき王はない。
そして
――しかし、その時。
絶望が支配する玉座の間に、若者の大声が響き渡った。
「陛下! 完成いたしました! これこそが、〝時の
しかし若者は目の前の光景を見るや、青ざめた顔で言葉を失う。
目を見開いたまま、床に伏した王。
「ほう、貴公がバルド・ダンディか? これは
「ムダール騎士長――ではないな? まさか、魔王か!?」
バルドは両手で持っていた
「ホホホ、
「必要ない。魔王の言うことに耳を貸すほど、俺は愚かではない!」
「
魔王は立ち上がり、ゆっくりと剣を抜く――。
その時、彼の足元に倒れていた聖王がバルドに向かって腕を伸ばしながら、
しかし、聖王は
もはや彼の
「まだ生きておったか。死に損ないめ!」
魔王は虫ケラを見下すかのように
「ふん、ゴミめ。……さあ、
異変に気づいた魔王の表情が、
「貴様! 何をする気だ!?」
「これを渡すわけにはいかない。――陛下の最期のご命令だ。魔王に渡すくらいならば、
「やめ――ッ!」
決意の表情と共に。
バルドは思いきり、
周囲の
そしてバルドの意識は吸い込まれるように、白き闇へと消え去った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます