キンカン

オオカミ

感謝を込めて

 一人暮らしをして数ヶ月、一緒に暮らしていた家族に毎日嫌気がさしていて五月蝿い等と思っていたのに、今ではその五月蝿さが恋しく思ってしまう程、家族が恋しいと思っている。属言うホームシックだろう。

 しかし、それをまた家族に直接伝えるのはなんとも恥ずかしい思いが勝ってしまう。人間変なプライドが伝えたい言葉を伝えられなくさせてしまうのだなと、改めて思い知らされた。

 そこで私は考えた。世の中には花言葉というものがあると。だからそれを使って家族に伝わらないかもしれない思いを伝えようとした。そして私は花言葉なんて何も知らない事に頭を抱えた。

 今このSNSが普及している時代に生まれていて良かったと心底感謝をした。

 感謝…感謝の言葉を伝える花言葉はなんだろうと調べた私はバラやダリア等を見つけたが何か自分の中で何か違うと言う感情を抱いてしまった。

 私自身が花を好きでは無いからかもしれないが、花は何れ枯れる姿を見せてしまう。ドライフラワー等という手段もあるがそれは花としての生命の活動は終わってしまっていると、私は思っている。

 そこでもう少し調べてみると、果物の花言葉というものを見つけた。そこでキンカンの花言葉が感謝だと知り、これだ!と思ったと同時に少し喜びで笑みを浮かべている私にびっくりしていた。

 早速キンカンを調べ、新米社員には少し高めのキンカンを購入し、家族の元へに贈ることにした。

 キンカンだけでは少し寂しいかと思い、数枚の手紙を入れ、他に梨を数個入れて送った。


 それから後日、家族から電話が来た。

「あんた、キンカンなんて送ってくるの珍しいね、それに梨って組み合わせどうしたの?」

 母親からは予想が着いた不思議そうな声でそう聞かれた。

「まぁね、体にいいから食べて欲しいって思っただけだよ。梨は私が好きだから。」

「あんた梨好きだったかしら?でもまぁわざわざありがとね」

 その後少し他愛もない話をしたあと電話を切った。


 電話を切った後私は少し心が温かくなっているのを感じていた。今まで仕事ですり減っていた神経が温かく包まれて回復させてもらったようで、家族の存在がこんなに大きいとは思っていなかった。

 また明日も仕事だと少し憂鬱さを感じながら、もう少し家族からもらった温かい余韻に浸ろうとゆっくりと時間を過ごした。

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キンカン オオカミ @DendokuTOKAGE

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