第4話 自分の秘密と他人の秘密は別物で。

 先生からの問い詰めから解放され、トボトボと太郎のいる公園に帰る。

 そのまま家に帰ってもよかったが、そんな気分ではなかった。

 兄貴姉貴より、太郎に会いたかった。

 あたしの友達の太郎に会いたかった。


「そこのお嬢さん」


 突然声をかけられてふり返る。高身長の男。仮面をしていて、顔はよく見えないけれど、若く見える20代か、老けて見える大学生か。そんな感じだった。


 明らかに怪しい男。


「なに」


 もし不審者だった時のために、防犯ブザーを握りしめる。

 この現代で、仮面にマントのしっこくの男……不審者以外の何者でもない。

 男はあたしと目線の高さを合わせるため、目の前でしゃがみこんだ。


「あなたが連日会っているあの奇妙な犬についてお聞かせ願いたく」


 太郎のことだ。きみょうな犬…ということは、太郎がただの犬ではないとバレている。この男、何者……?


「まず、あなただれ。あたしには正直、あなたがただの不審者にしか見えないから、会話したいと思えないんだけど」


 それを聞くと男は、小学生らしからぬあたしの言動が面白かったのか、くすくすと笑いながらも答えてくれる。

「これは失礼。わたくしは……」


 防犯ブザーをにぎる手が汗ばんでくる。あたしは息をのむ。


「あの犬…かの大罪人、魔法使いヴァルトに異世界救済の刑を執行した処刑人、カルージュと申します」


 ……大罪人、ヴァル…ト…?

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