~12~黒龍の感情 後編

黒龍がいる洞窟に来た光司の分身。

この洞窟は画面の向こうから何度も見た。

だから中にいる黒龍の場所が近いこともはっきりとわかる。


これからあの黒龍に会う。


心臓が早く動く。

ドクン、ドクンと。

自分でもわかるほどだった。


そして洞窟に入ると光司に黒龍の感情が流れ込む。

怒り、悲しみ、辛さ、そして大きな憎悪。


ゆっくりと歩く。

そして何度も見た洞穴につく。

中に入ると何度も見た……。


』の姿が。




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あの感情は今でも覚えている。


「すごい、カッコいい」


心から声が漏れ出す。

光司は咄嗟に口に手をあてる。


黒龍がこちらをギロッとした眼で睨んでいた。

初めてのドラゴンとの邂逅に心が震えた。

だけどその視線はただ重く、見つめ合う時間がとても長く感じた。



時間を忘れていた。



そんな言葉が今の状況にぴったりだった。

ただ見つめ合う。



「……そうか」

先に口を開いたのは黒龍だった。

「……はい、すごくカッコいいです」

そんな事を光司が言うと黒龍は恥ずかしさを隠すかのように顔を隠した。


光司は言った。


「黒龍さんは誰かに話したいことがあっても恥ずかしくて言えないのですか?」


黒龍はコクっと頷く。

「相手が怖いのですか?」


光司は続けて質問する。

少し間があいて「そうだ」と黒龍は返事をする。

そんな事を聞くと全てを悟ったかのように話し出す。


「俺も最初はそうでした。でも話してみるとすごく楽しいかもしれませんよ?

俺でよければなんでも話してみてください」

そういうと黒龍は少し驚いたようだが、ぽつりぽつりと自分の事を話しだした。

「神が……すごくカッコよかったんだ。話しかけたくても話せん。そんな状態が続いてつらかった」



うん。

これすごくわかる。


俺が人間だった頃は3軍的な感じだった。

いてもいなくてもいい存在。

そんな俺が1軍に話しかけるのと同じ。


『俺が考える隠キャが陽キャに感じることTOP100』の中でダントツ一位。

【話しかけにくい】


なんでかって言われると感覚的だからなんとも。


でもわかるぞ。陽キャは話しかけにくい。

それだけは言える。


「後光がさしているかのよう……というか神だから後光が刺しててもおかしくないかも」


「わかるか。わかってくれる人がいて嬉しいぞ」




黒龍との話に華がさいた。

最終的には1時間ほど話し続けた。

その時間はとても楽しかった。


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読んでいただきありがとうございます。


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