~12~黒龍の感情 後編 編集済

黒龍がいる洞窟に来た光司の分身。 

この洞窟は画面の向こうから何度も見たが、とても大きくて自分なんかちっぽけに感じる。

SAN値がゴリゴリに削られるような、発狂してしまうような気持ちになる。


吐き気が出て来たりしたが、気合で乗り越える。

それほどのことがあっても黒龍に会うためにここまで来た。

ここまで来たのに戻るのは自分が許さない。


中にいる黒龍の場所が近いこともはっきりとわかる。

これからあの黒龍に会う。


そう思うと心臓が速く動く。

ドクン、ドクンと。


自分でもわかるほど速かった。

そして洞窟に入ると光司に黒龍の感情が流れ込む。

怒り、悲しみ、辛さ、そして大きな憎悪。


それでも光司はゆっくりと歩く。


今からでも帰って寝たい。こんな思いするくらいならと頭に過ったがすぐさま忘れる。

そして何度もあの見た洞穴につく。


中に入ると何度も見た『』の姿が。




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あの感情は今でも覚えている。


「…………すごい、カッコいい……!」


心から声が漏れ出す。

光司は咄嗟に口に手をあてる。


だってあのギラギラした眼、何もかもを噛み砕く歯。硬くどんな矛でも通さない鱗。

黒く綺麗な鱗の中に深緑のようなものも感じる。


黒龍がこちらをギロッとした眼で睨んでいた。

初めてのドラゴンとの邂逅に心が震えた。


頭がこちらに近づいてきた、俺を観察するかのように。

だけどその視線はただ重く、見つめ合う時間がとても長く感じた。



今流れている時間を忘れていた。



そんな言葉が今の状況にぴったりだった。

ただ見つめ合う。



「…………そうか、」

先に口を開いたのは黒龍だった。

「……はい、すごくカッコいいです。その鱗とか凄く透き通った黒曜石みたいで、あの。……はい」

そんな事を光司が言うと黒龍は恥ずかしさを隠すかのように腕で顔を隠した。



なぜか光司は思ってもなかったことを口走る。

「黒龍さんは誰かに話したいことがあっても恥ずかしくて言えないの?」


言ってしまったがやっちまったと思いつつ黒龍を見つめる。

黒龍は顔を隠しつつもコクっと頷く。

「相手が本当は怖いの?」


光司は続けて質問する。

少し間があいて「……そうだ」と黒龍は返事をする。

そんな事を聞くと光司は全てを悟ったかのように近づきながら話し出す。


「俺も最初はそうでした。でも話してみるとすごく楽しいかもしれませんよ? 俺でよければなんでも話してみてください」

そう言い近くの岩に腰掛ける。

そういうと黒龍は少し驚いたようだが、ぽつりぽつりと自分の事を話しだした。

「神が……すごくカッコよかったんだ。話しかけたくても話せん。そんな状態が続いてつらかった……本当なら話しかければよかったのに、」



うん。

これ陰キャの神様としてはすごくわかる。


俺が人間だった頃はいつも三軍的な感じだった。

いてもいなくてもいい存在。

そんな俺が一軍に話しかけるのと同じ。


それは一般人がエベレストに登るくらい難しい。

挑戦すればできる可能性もあるかもしれないが、無理な可能性の方が高いのだ。


『俺が考える隠キャが陽キャに感じることTOP100』の中でダントツ一位。

【話しかけにくい】


なんでかって言われると感覚的だからなんとも。


でもわかるぞ。陽キャは話しかけにくい。

それだけは言える。


「後光が刺しているかのよう……。というか神だから後光が刺しいてもおかしくないかも」


「わかるか。わかってくれる人がいて嬉しいぞ」




黒龍との話に華がさいた。

一時間ほど話し続けた時にアリスからの呼び出しがかかった。

いつまで話をしているのかと。でも二人ともその時間はとても楽しかったのは今も覚えている。


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読んでいただきありがとうございます。


面白ければ★★★、面白くなければ★。


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