~11~黒龍の感情 前編

どうしよう。

黒龍が隠キャだったなんて。


歴史上の衝撃的事実だ。



「大丈夫かな声をかけたいな……」

そんなことをポツリと呟く。


「……マスター、アースに行ってみますか?」

するとアリスがそんな事を言ってきた。

最初は耳を疑ったが、行きたいという気持ちが湧き上がる。


「行こう」



「はぁ……。分かりました、マスター。準備します」

サッとアリスは準備を始める。

球なのにどうやって物を動かしているか気になる。(後で聞いたら、念力のようなもので動かしているらしい)


そして、おもむろに誰かに連絡したアリスが持ってきたのはこれだ。



『幻影オブジェクト』



今回はこれを使いアースに行くらしい。

形は正方形。無色だが不透明の箱。

装飾は何もない。


これが幻影オブジェクト。

幻影オブジェクトは、非常時に神が星に降りる際使う道具だ。


神の幻影を作り出しそれを動かしているので、

本体である神が死ぬことはないという。(アリス情報スゲー)


アリスが幻影オブジェクトを触るようにと言ってきた。

光司がゆっくり触れると幻影オブジェクトに何かが吸われたような気がした。


……幻影オブジェクトがうねるように動き始める。



最後まで待つと光司そっくりの幻影ができた。

触れることはできるようで、見分けはつかない。

専用のヘルメットを被って同期すれば感覚も共有できるようだが


死んだ時に怖いから致命傷を超える痛みは無効化にしといた。

死ぬのを2度も味わうのは嫌だからな。


「行ってらっしゃい」


本体の光司に言われる。

なんだか自分に見送られるのって変な感じだ。



「いや、俺は本人だぞ」

「マスター、これが神ジョークですよ」


ふーん。

意味がわからん。


幻影がパソコンに吸い込まれていく。

光司はヘルメットを被り直し、幻影と同期し始めた。

これで黒龍にあえる。




======

光司の幻影が降りた場所は洞窟がある山の麓。

岩肌が剥き出しており、奧には杉のような木が見える。

アリスいわく杉の仲間らしい。


ここから10分ほど山を登れば目的の洞窟に着くらしい。

登っていく途中、動物1匹すら見つからなかった。


なぜだろう。


5分ほど登ったあたりから強い風のようなものが吹き付けるようになった。

へパイトスさんが言うには黒龍の殺気のようだ。


登っていくと憎悪のような感情がまとわりつくように感じる。

これも神になるとできるようになる、心を読むことの第1歩らしい。


殺気の圧力は徐々に増していく。

後少しのところでは殺気に押し潰れそうだった。



そんな時、一気に視界が広がった。

パソコン越しにみていた洞窟は近くで見ると思っていたよりも大きく、

小さなビルなら入ってしまいそうなほど。

しり込みしそうになる気持ちを何とか奮い立たせて

前に1歩、1歩と歩みを進めていった。


奥にいくほど黒龍の感情は流れ込む。

どろどろとした黒いような感情。

心が押しつぶされそうになる。


大丈夫だ、大丈夫だ。

そう自分に言い聞かせる。


だけど、怖い。

ただそれだけで死にそうだった。




だが一つ言えることがある。

あの黒龍はこれ以上の感情に苦しめられているのだろう。

ということだった。

そんな事を心にしまいながら洞窟に入っていく。


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読んでいただきありがとうございます。


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