第6話 ★猫トラ本 ネコ世界の安全保障

 <サイド 城島叶斗(会社員)>

「ネコ科ヒョウ属トラの巻~政治家になるための本~」

 第3話、またネコ世界かよ。ネコだもんなぁ、団結して戦うとかないなとタイトルを見ながら批判的に思いながら次の話に読み進める。 


「第3話 ネコ世界の民間防衛」

『ネコ世界の脅威は海や海岸に自分たちより強い敵がいるということである。その敵に団結して戦うべきなのだが、ネコだけになかなか団結して戦うという発想がない。


 ネコは気まぐれであり、自由を制限されることを好まない。このネコの性質が悪い方向に出た結果、ネコ世界でも少子化が進んだ。そして、敵と全面的に戦うことが100年近くなかったために、安全のためにコストを掛けることを嫌がるようになった。


 ネコ世界の敵は、南方の海や陸地にある水辺でその勢力を確実に伸ばしていたが、水辺近くに住む人や、集落間の移動をする際に敵に襲われたネコにとっては自分事であっても、大多数のネコにとっては自分のこととして考えていなかった。


 元々、水を嫌う性質のあるネコは、ネコ世界の住人であっても水の必要性は理解しても、積極的に水辺とかに寄りたがらず、水辺近くに住むネコは底辺の存在だと見做されがちでもあった。


 こうした背景もあり、安全のためにコストをかけること自体がバカバカしいと思っているネコも多く、警察権を行使できない警察組織を無能と考えるネコや、警察権の強化にお金をかけるべきではないと考えるネコも多かった。


 ネコ世界の敵は、狡猾こうかつであった。


 ネコを襲った個体について、はぐれ個体であり、そのような個体については厳しく取り締まって欲しいと敵の代表部は述べ、全面的な侵攻の意図は隠し、ネコ世界の有力者と貿易を行うなどし、利益を提供し、自分たちは仲良くしたいのだと述べ続けたのだ。


 安全のためという自分の利益に直結していないように見えるものにコストをかけることに反対するネコにとっては、この敵の言葉は信じたいと思うものだった。


 また、敵にとって都合のいい仲良くしようという言葉を信じるネコを積極的に支援した。ネコの世界にも影響力のあるメディアが複数存在し、テレビがあり、雑誌がある。


 敵と仲良くできることを信じ、自分の幸せを追求することがネコの幸せだと強く発信するネコが優先的にテレビにでることができるようにする工作が長い時間をかけて行われていた。


 雑誌は特に顕著だった。幼い子どものネコが好む雑誌にモデルとして掲載されるネコのほとんどは、敵にとって都合のいいネコが選ばれた。そういうネコが掲載されている雑誌を作れば敵は補助金を出していたし、密かに売り上げを伸ばせるよう買い支えもしていたのだ。


 こうした影響によりネコ世界のネコは安全保障を全く重視することなく、必然的に地域の代表も安全保障の話より、高齢ネコの福祉についての制度の話や、自分たちの利益に直結する経済の話を中心に行っていた。安全保障と言っても警察権が届かない場所の問題をちょっと話をして、渋りながら予算を付けるという程度という敵にとっては実に都合のいい状態が続いた。


 侵略とは、武力によって侵攻してくるのは最終段階なのである。甘い顔をして結果的に裏切り者になる者を育てることが第1段階。そして、安全について真剣に議論する者が空気を読めない変な者として捉える社会風潮をつくり、安全保障について議論すること事態を封じ込めていくのが第2段階。国の利益のことを考えず自己の利益だけを追求することが正しい。国の利益のために自己犠牲を払うなど愚の骨頂とほとんどの国民が思うようになれば第3段階である。そして、実際に侵略が武力で行われ、気づいたときには手遅れとする。


 敵が本性を見せたのは、内陸部を占拠して永続的に生活していくことのできる個体が十分な数が揃い、敵全体の数がネコの総数を大幅に超え、技術的にもネコが作成する武器を超えるものを作ることができたと的が確信してからだった。


 本性を出したネコの敵は、全土で一斉に大侵略を開始したのだ。


 しかし、それでもなおネコ達は、戦わず逃げようとするものが多く、それでいて、自分の無力さを装飾し、寛容と忍耐が大事だなどと言う者が多数であった。』


 3話まで読み終わったが、あれ、どちらかと言うと俺の思ったとおりに進んだ。ひょっとしてこの異常な世界に感化されているのか?


 ネコの世界と言いながら、結構リアルだよなと思い始めたのも毒されているのだろう。

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