第5話 異世界転移から2年後の日常

 <サイド 祝田咲>


 ネコの異世界に来て2年が経った。


 各地を周り、集落近くの河川や海辺に居着き警察権が行使できない状態になってしまっている地域を制圧し、リザードマンやともに悪事を働く猫人にゃんとを征伐する毎日を送り、街道沿いにある川辺で襲ってくるリザートマンを制圧し、危険箇所をマップにして近隣の集落に配布する。


 各集落で、征伐しにきたと述べると歓迎して貰えるし、食事やちょっとしたお土産くらいは貰えるのだけど、はっきり言って儲からない。猫神様マリン様も神託として私達が勇者だと伝えてくれるが、猫人にゃんとの皆にとっては、絶対視してくれるほどのものではなかった。


 ある程度大きい都市はそれぞれの集落から集まった代表の合議制で色々なことを決めている。小さい集落だと1人の代表者で決めている。代表者の決め方は、かなり適当で、なんとなくで決まる。投票とかはないけど、人望?、ともかく猫人にゃんとから信頼を集めている人が代表になる。ネコらしい緩い民主主義である。


「勇者なんだ。凄いね。で、何ができるの?」

 という代表からの反応が最近は、

「勇者様、お待ちしてました。早速ですが、この地域が我々が手を出せなくなっており困っておるんですけど・・・」

 という反応に変わったくらいだ。多分、私達を便利屋と思っているんだろう。危機感がなさ過ぎるとは思うが、焦って孤立することは避けたい。


 各地で討伐実績を繰り返して信頼を地道に得る。なかなかしんどい。


 最初に訪れた都市と呼ぶべきところは、猫人にゃんとが250万人(匹?)を超えて生活していて、この世界で最も栄えた文化の中心地であったので、拠点となる家を確保していて、そこに定期的に戻るようにしている。(この都市をニャントーキョーと私たちは呼んでいる。)


 長い剣が欲しいが、未だにルールを改正して貰えていない。


 仕方なく、木剣を販売して貰うようにした。木剣なら小さいサイズも抵抗なく作って貰えるし、それで慣れて成長していく子どもが、90cmや100cmの木剣で練習していくうちに80cm以外の鉄剣の制作を解禁して欲しいと思う猫人にゃんとも増えると思いたい。


 それから道場の振興にも尽力している。その地域の道場主や師範と一緒に征伐を行うことで信頼を得て、道場の名声を高めることで道場に通う猫人にゃんとを少しずつ増やしている。そして、信頼を得て、剣だけではなく槍の使い方を教えるようにして貰うようにお願いをする。


 ようやく子どもの頃から道場に通わせる猫人にゃんとも珍しくなくなったのが、この2年間の最大の成果だ・・と表面的には思われている。


 <サイド 祝田和馬>

 暇があればニャントーキョーで道場主として子ども達の指導をしている。


 これが楽しい。子ども達が慕ってくれる。猫人にゃんとの子達は本当に可愛い。撫で撫でしてあげると喜んでくれる。このモフモフのために日々を頑張っていると言っても過言ではない。


 猫人にゃんとの足は速い。急ぐときは手を突いて4本足で移動する。この際は時速80キロを超えるが、持続力はそれほどない。無論、地球のネコではないので、ある程度の持続力があり、1日に300キロくらい移動することもできる。


 自分達なら、時速50キロで安定的に移動することができるが、全体をカバーすることは難しい。そこで、転移特典その壱!都道府県庁のある都市間を繋ぐ転移装置の使用解禁!!である。


 本来は簡単に使わせて貰える物ではないし、各地区の代表者が集まって行う毎年2月22日開催の猫人にゃんと総会くらいでしか使われない。それを猫神様マリン様の神託で日常使いさせて貰っている。猫神様マリン様の神力を使って行う転移らしいので、猫神様マリン様が使わせてやれと神託をだせば、猫人にゃんとも納得である。


 咲が頑張ってくれているが、猫人にゃんとは気まぐれだ。どんだけルール改正の必要性を説いても、次の話し合いでは忘れてしまっていることがよくある。咲自身がニャントーキョーの区の代表になり、ニャントーキョー代表になるまでルール改正は全世界的には進まないだろう。


 次の夏にはニャントーキョーの区の代表(任期2年)にはなれそうだが、そこに行き着くまではもう少し時間が掛かるだろう。それまで地道にモフるとする・・・じゃない、征伐とニャントーキョーの道場主としての活動を頑張るとする。


 これが自分たちの表向きの活動内容だった。

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