epilogue
エリカの額に汗が
「我が親愛にして森羅万象
さらに左手に持つ魔枝を、正面前方の魔法陣に向け、右手の人差し指と中指、二本をたて口元に運ぶ。
「時満ちたり! 来たり給え、勇者 サイトウ タクヤ、ナーザルへ。今ここに、我を
手にした魔枝を下から上へと斜めに振り上げる。
――決まった・・・。これで召喚された勇者さまは、私をお姫様だっこして現れるはず・・・
笑みがこぼれた。
天井の大きな魔法陣が渦巻き、強烈な光を放つ。 その中から何者かが現れようとしている。
「今だわ!!」
魔法陣の中から何者かが現れた瞬間、エリカが跳び上がる。
やがて、まばゆい光の中から、エリカをお姫様だっこして現れた者は・・・
「こころよりお待ちしておりました、勇者さま……」
その顔を見上げたエリカの
「誰だ、お前は? なぜ私に抱かれている?」
訳も分からず、ミィーリィーが辺りを見回して言う。
皇帝カイエルはじめ、集まった帝都の者たちがあっけに取られている。
ミィーリィーの腕の中から跳ね下りたエリカが叫ぶ。
「おのれ! 悪魔、なぜここに!!」
「そっちこそ何者だ? ここはどこだ?」
「勇者さまはどこ!!」
「そうか、タクヤ!」
ミィーリィーが周囲を見回した。
すぐに、エリカとミィーリィーがにらみ合い対峙する。
「なによ、なれなれしく勇者さまの
「貴様こそなんじゃ?」
「さてはアンタが勇者さまに
エリカが魔枝を振り下ろす。居合わせた者たちも剣を抜き、一斉にミィーリィーに襲い掛かった。
「貴様らあぁ~~!!」
声と共にミィーリィーがインクバスに変身して、電撃を放った。返り討ちにあった者たちが吹き飛び、床に大きなクレーターが出来た。
そのまま舞い上がったミィーリィーが、王宮の天井を突き破り、空に飛び出した。
「大丈夫か、エリカ!!」
ピーターとフィリップスが駆け寄ってきた。
「一体、どういうことだ」
皇帝カイエルもエリカの傍にやって来た。
「恐らく、あのサクバスが召喚の儀の邪魔だてを・・・」
エリカがこの騒動で汚れた顔を拭おうともせず、厳しい表情でつぶやく。
「しかし、困ったことになったな。勇者の召喚に失敗したとなると・・・」
難しい顔でフィリップスが言う。
「いいえ。御心配には及びません。今度は私が勇者さまを、直接ニーポンにお迎えに上がります」
口元をキュッと締め、眉を吊り上げた表情に、彼女の秘めた決意がうかがわれる。
「俺は絶対行かねえぞ!!」
ピーターが叫んだ。
一方、帝都の王宮から脱出したミィーリィーは、一路魔王城を目指す。
――そうか、タクヤの代わりに私がとーらっくに撥ねられ、ナーザルに戻ったという訳か。だが、このままでは終われん。待っていろ、タクヤ。必ずニーポンに戻るぞ!!
第1部 完
*最後までご覧いただきありがとうございました。第2部は現在構想中です。 新作執筆中につき、投稿時期は未定です。
よろしければ新作「Libra【リブラ】」もご覧いただければ幸いです。
こちらはストーリー重視のお話になっています。
勇者になった覚えもないのに 魔王の手先のかわいいサキュバスに狙われている ながいやすみ @yasumiN1
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