インターミッション



「もう、ピーターたら、乱暴なんだから…」


 召喚室から自分の部屋に戻ったエリカがボヤく。左手でまだ頭をさすっている。小さくてもナーザルに戻って力を取り戻したピーターの拳は強力だ。


「俺はもう二度とニーポンなんぞに行かんぞ!」

「あら、どうして?」

「思い出したくもない……」

 しかめっ面でつぶやく。


 狭くて暗い家の形をした箱の中で、脱出しようと15時間もがいていたことは言えなかった。


「しっかし、相変わらずピンク一色だな、お前の部屋は。頭痛くなるぜ。目がチカチカする。」

 ブンブン飛んで、部屋中を見回して言った。

「そうかしら? かわいいと思うけど」


 エリカはピンクと、かわいいモノが大好きだ。部屋中ピンク色のかわいいグッズで溢れている。


「お前、もしあの勇者と一緒に暮らすことになったら、ここに住むのか?」

「それでもいいけど、新居も桃色にして、愛の巣を新築したいわねえ」

「そりゃぁ、勇者も気の毒なこった」


 早速、エリカがピーターの撮ってきた『これっきりちぇっけ』の写真を確認する。


「まあ、勇者さま!! ――少し憂いのあるお顔、個性的なヘアスタイル。ステキ……」

 不老毎度フロウマイドに写る、寝癖のついた髪、寝起きのタクヤの冴えない表情を、どうやらエリカは気に入ったようだ。


「こちらは目を閉じて、寝顔かしら。カワイイ~。うふっ!」

 幼い頃から恋い焦がれてきた憧れの勇者。初めて見たのにこの思い込み、恋は盲目とはよく言ったものだ。


「でも、ピーター。この不老毎度フロウマイド、2枚しか勇者さまが写ってないんだけど・・・。もう1枚のこの家みたいのは何?」

「ああ、それは脱出の記念に…。ああ、いや、勇者が住んでる家だ。記念に撮ってきた」

「まあ! 小さくてかわいらしいおうち。屋根をピンクに変えたらもっとかわいいわね。でも天井が低くてちょっと狭そう」


「そうだな、そん中で二人くっ付いて、ベタベタしてれば、二度と離れられなくなるだろうぜ」

「やだ、ピーター、ヤキモチ焼いてるの?」

「けっ!」

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