第9話 セイキを思いっきり吸った!?
何やら、まあるいモノがふたつ。ふるふると、背中でゆっくり
――んっぐっつ!! く、苦しい・・・。
今度は背後から、首に大蛇のようなものが、いきなり巻きついてきた。
――た、助けて~!
そう叫んで目が覚めた。
****
何だろう…。この心地良さ。永年の闘いでの傷が、癒されていくような、まるで甘美な酒の海にぷかぷかと浮かび、幸福感に包み込まれていくような…。
荒々しく、人を寄せ付けない魔王様のそれとは違い、あたたかく、心を和ませる。
――そうか…、これは勇者どのが放つ、精気の波動……。
そう気がついて目が覚めた。
「んがぁあ~」
女は、にこりと笑い、男の眼を見つめながら、
「やっと目覚めたか、勇者どの・・・」と言った。
「なんで? どうして? 昨日のお姉さんがここに……」
「勇者どのが気を失ってしまわれたのでな、私がここまで運んだのだ。そのままなかなか目を覚まさぬから心配したぞ」
ゆっくりとベッドの上に身を起こしたミィーリィーが言う。
「そう言えば俺、あの後、急に目の前が暗くなって…」
「そうだ。そのまま倒れ込んで、赤子のように私の胸に顔をうずめて寝ていたぞ」
「えっ? 胸に・・・」
思わずタクヤの視線が豊満なミィーリィーの胸に注がれる。
「ハッ、ハッ、ハッ、どれ、ご所望ならもう一度やってやろう!」
ミィーリィーが両手を差し出した。
「いえ、いえ、いえ。と、とんでもない、た、たいっへん失礼しました!! どうか、警察に突き出すのだけは勘弁してくださぁ~い。
俺には年老いた母親と、まだ幼い妹が~~。二人が世間の人たちから、後ろ指をさされるようなことだけは~~」
べッドの上に正座し、両手を合わせて拝むように頭を下げる。
「いや、いや、勇者どのが気を失ったのは、恐らく…、ほとんど私のせいだ。だから、気にせずともよい」
「えっ?」
「うむ。勇者どのが発する香りがあまりにも
「なっ!? お、俺の
青ざめたタクヤが、自分の股間に手を当てて確認しようとする。
「痴女??? 勇者どの・・・。何か勘違いをしてはいまいか?」
ミィーリィーが首を傾げ、タクヤの顔を覗き込む。
「
「な、なぁ~~んだ。そうか、焦っちゃいましたよ。・・・って、精気を吸うって何?」
「まあ、勇者どのがお望みとあらば、上からでも下からでも、私は一向に構わんのだが…。その時には痴女だろうが淫魔だろうが好きなように呼んでくれても構わんぞ……」
そう言うと、ぽっと頬を赤らめ、妖し気な眼をしてタクヤに
とん、とん、とん、と、軽やかに、誰か階段を駆け上ってくる音が聞こえる。そのままカチャッとドアが開き、
「お兄ちゃん、朝ご飯出来たって!」と妹の妙子が叫んだ。
次の瞬間、妙子の表情が凍り付き、固まった。
とろん、とした目、絡まるように抱きつき、半開きの唇をタクヤの頬に軽く押しあてる、ほとんどハダカ同然の黒いビキニ姿のミィーリィー。身動きできず、硬直するタクヤ。
二人、いや、三人の眼が合った。
そのまま、自然にカチャリ、と静かにまたドアが閉まり、
「お母さん! お兄ちゃんがベッドに女の人連れ込んでる~~!!!」
どん、どどん、どん、どんと、今にも転げ落ちそうに、叫びながら階段を駆け下りて行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます