第9話 結局
おさめられてしまったとはいえ、醜態を晒した殿下は十日間の謹慎となった。物理的な実害がないので、過去の事例からそうなったらしい。
精神的な害はあったけれど、ご令嬢方の自業自得な部分も多くて、考慮しないことになったとか。うちの父の笑顔が怖かったので、詳しく聞くのは止めた。
マクレガン家は今回の嫡男のやらかしを償うために、街道の警備と整備を再開した。
「セレ、セレ。なにか、困ったことが?」
私にぴったりくっついてソファーに座る婚約者が、私の肩を抱き寄せ、私の頬を撫でながら私の髪に顔を埋めている。
名前も、いつの間にか愛称呼びだし。
別人かと疑いたくなる変貌ぶりに、笑うしかない。
ちゅ。
「!」
油断すると、髪や頬に口付けが落とされる。
ーー本当に!ダレ!?この人!
2日ごとに私の部屋にいて、本人曰く私を愛でながら執務をこなしているらしい。
「仕事は、お済みになったんですか?」
「セレに会うため、目一杯こなしてから来ているよ。どうしても終わらない時は持ち出せるものだけもってきているから、大丈夫。ーー早く婚姻を済ませて、名実ともに結ばれたい……」
ちょ、色気が駄々漏れすぎる……っ!
「いやー、拗らせが一周回って溺愛とか、すごいですね」
殿下を見送った後、にやにやするロボスが部屋の前にいた。
「別人かと思う程の変わりようですが、おそらくあちらが本性ではないでしょうか。王家の血は一途に過ぎると申します」
ラミアまで。
ん?
「ねえ、拗らせって?」
「殿下は元々お嬢様に対して、好きを拗らせてましたからねー」
若いなぁ。
ロボスとラミアによると、殿下が私を好きなのは分かりやすかったらしい。拗らせているのがわかっていたが、そのせいでこちらに被害が及ぶので許せるものではなかったとか。
「これからもっとひど……愛が重……深くなると思われます」
ラミア、誤魔化せてない。
〈完〉
最後までお読みくださり、ありがとうございます。
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