(3)

「ぎゃあああああ〜ッ‼ たすけてたすけてたすけて……死にたくないいいいッ‼」

 ロープで崖から吊された「他の世界版の私」は泣き喚いていた。

「おい、少しは冷静になって、仲間に伝えろ。『太い動脈を断ち切ってるのは、小さい傷の方だ。デカい傷から先に治療しようとしたら出血多量で死ぬぞ』ってな」

「無駄です無駄です無駄無駄無駄無駄ぁッ‼」

「諦めるのが早い。仲間を助けたくないのかッ?」

「死んでます、死んでます、死んでます……どう考えてもッ‼」

「根拠は?」

「下の川が真っ赤ですぅッ‼ 血染めですぅ……」

 あ……っ。しまった……。

「あ……ああ、そうか。私のミスだ、すまないな。出血多量で意識を失なうのが、私の予想より早かったようだ。そうだ……あいつが地獄で寂しい思いをしないように……」

「違います、違います、違いますぅッ‼ あいつは、ただの短期の仕事で一緒になっただけで、友達でも仲間でも恋人でもありませんんんんッ‼ 私が一緒でも、あいつは喜びませんんんんッ‼ この世界に来るまでは、見ず知らず同士ですぅ〜ッ‼」

 やれやれ……。

 私は最後に生き残った馬鹿1名を引き上げて、縄を解いて……押し倒した。

「えっ?……ちょ……」

「あ〜、勘違いするな……私は、女にしか恋愛感情を抱いた事は無いが、お前は好みじゃない。自分と同じ顔の奴をレ○プするなんて……」

 ぐさっ……。

「ぎゃあああ……」

 私は奴の片手にナイフを突き刺した。

 でも、自分で言うのも何だが、私は優しい女だ。

 例の「治癒魔法を阻害する呪いがかかる短剣」とは別の短剣だ。

「そこまで悪趣味じゃない」

 ぐさっ。

「ぐええええ……」

 更に、もう片手にもナイフを突き刺す。

 これで、こいつは両手を地面に縫い付けられたような状態だ。

「ああああ……ッ」

 ドゴォッ‼

 私は、奴の顔を踏み付ける。

「すまん、落ち着いて冷静になってくれ。冷静になってくれないと……痛い目を見るぞ」

「……は……は……は……はひ……」

「質問だ……?」

「へ……? え……? ちょ……なにを言って……?」

「そうか……それが、私とお前たち……『別の世界版の私』との違いなのか……? おい、私を消したがってる神様から何か聞いてないか?」

「な……なにをでしょうか……?」

「その神様が私を失敗作と見做した理由は……?」

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