第25話 愛馬の応援
翌朝。
雲一つない青空から燦々と陽光が降り注ぐ今日。吹き抜く風も心地よく、絶好の外出日和だ。
とは言いつつも、今は宿屋裏の馬舎にいる我らが愛馬を愛でている。
「いい子だねースペランツァ」
わしゃわしゃと首元を撫で、白金色の立髪を弄る。
銀狼さん曰く旅の始まりから一緒にいる相棒だそうで、わたし自身も何度かピンチを救ってもらったことがある。もう頭が上がらないなんてもんじゃないですよ。
「銀狼さんは今日全力で楽しんでくるって楽しそうに行っちゃったんですよ。祭りの試合自体昼からだっていうのに、なんだか妬けちゃいますよね」
普段お世話になっていて助けてもらっているから、せめてもの恩返しでわたしが楽しませてあげたかった。まあでも、わたしは武人じゃないし、銀狼さんやライリーさんみたいな格闘はできないから別にいいんだけどさ。
スペちゃんのお手入れをしながら、そうため息がこぼれる。すると――、
「うっ」
わたしの顔に半ば頭突きをするように、スペランツァの顔が擦り付けられた。
「ど、どうしたんですかスペランツァ」
うっ、と声を漏らしつつも真意を問うために言葉を口にする。
当の白馬は首を無造作に振り、まるで何かを示しているようだった。わたしは困惑しつつもなんとか汲み取ろうと頭を捻り。
「う、後ろ……?」
振り返り、何かあるのかと視線を移す。するとそこにあったのは、柱に打ち付けられている一枚の紙だった。
「えっと、喧嘩祭り開催、エントリーは午前十時まで……」
今の時刻は九時前くらいだから今から向かえばなんとか間に合うくらいかな。
「えっ、こ、これにエントリーしろってこと?」
スペちゃんはそうだと言わんばかりに首を縦に振る。
「で、でもわたし腕っぷしは弱いことに定評がありまして……行っても痛い思いするだけですよ」
師匠からは魔術師だからといって格闘術の鍛錬は怠らないようにと言われはした。けど、結局魔術の力だけで生き抜いてきたわけで。純粋な力だけが求められる戦場じゃわたしは無力に近しい。
「……あれ、でも」
――『武器と殺し以外基本なんでもあり』
昨日聞いた喧嘩祭りの詳細説明。その時聞きはしなかったけど、それ以外基本何でもありならわたしも魔法で参戦できるのでは……?
「えっ、まさかスペランツァこれを知ってて教えてくれてたんですか?」
賢く優美で逞しい我らが白馬は大きく頷く。
「……ふふっ、ありがとうございます、スペランツァ」
この子の気遣いと優しさが嬉しく思わず笑みが溢れる。お礼も兼ねて優しく撫でつつ、子の子の思いを胸に覚悟を決めた。
「それじゃわたし行ってきます! 見ててくださいよスペランツァ、どうせなら優勝も狙っちゃいますよ!」
そうしてわたしは意気揚々と、いつにもなく自信に満ち溢れてコロッセオに向かって走り出した。
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