第7航 歓迎会
「はぁあぁしかし、あたしの自己紹介の途中に攻撃が来るなんてやんなっちゃいますねぇ」
「そうだね、ちょっとあれはないかなぁ」
「まあでも、ナギ…さんの初戦無事勝ったし、先輩としての動きはまっとうできたんじゃねえの。」
「わあかっこいいアクア。でも今日あんま戦ってなかったけどねえ〜」
「おまいは黙りやがれ」
そんなまるで移動教室の帰りのような会話に、「いつもの日常」が戻ってきたようで安心する。
…いつもの日常が、きて安心する。
こんなこと初めてだった。
いざ離れてしまうと、わからないものなんだな。
非日常すきず、通常すきず。それぐらいが一番いいのだろう。
そう思った。
※
自分の新たな部屋、『05号室』へと来る。
扉を開けば、まるで空の色をそのまま染めたようなベッドや、クリームのような水色の壁紙がお出迎えしてくれた。
「すごい、綺麗な部屋だね…!」
「んふふ、でしょう?私は普段は
ちょっとしたお布団を執事さんに持ってきてもらって正解だったよ〜」
「ありがとう」
「んーん!全然!!それよりあとからパーニーも来るっぽいから、先にジュースで乾杯しちゃおうよ!」
「やった!」
今取ってくるね、そう言って冷蔵庫を漁るミズを横目に、目の前の雰囲気を感じ取る。
なんて心地よいのだろうか、まるでホテルのようだ。
…言ってしまえば前はすごく息がしにくかった。
重たい都会の雰囲気に押しつぶされていたのだろうか、それに比べればすごく息がしやすかった。
生きている。私も、こんな私でも、生きていけている。
そういう感情が芽生えてくるようで、嬉しかった。
「はーい、これジュースね。パーニーの分も…っと。お布団の上にクッション置いちゃえば完全な女子会だね!」
「ふふ」
「んもー、笑わんでよっ」
「ごめんごめん」
そう二人でやっぱり微笑みつつ、パーニーを待っていると。
数秒後にちょうどやってきて、お布団の中に入っていった。
「ということで…第3部隊入隊おめでとう、初戦勝利おめでとう!!!」
かんぱーい、そうグラスを合わせたのだった。
「そういえばさ。ナギさんって耳生えてないんですね。」
そう言われ、そういえば、と気づく。たしかにという顔をミズも浮かべた。
「まあでも…イコク?の者だし。ほらアクアもそうだったじゃん?初日は生えてなかったけど、あそこいったら自然に生えてきてた。」
「そういうことですか。成程です。」
「アクアさんも最初は異国の人だったんですか」
唐突に会話に入る私に少々戸惑いつつ、パーニーがはい、と答える。
「確か海女王様から回ってきたデータだとそうでしたよ。確か『カナダ』?というところからでしたわね。」
カナダ。
日本にいる時に習った国名。
アクアは元々はカナダ人だったのだろうか。
新たな「元の世界」と関連する情報が出てきて、もしも現実の世界に戻っていってしまったらどうしようとも考えた。
まだ初日。
たくさんできることは、たくさんミズたちとできることはきっとあるし、これからも戦いたい。
できることなら海女王様のことについてもちゃんと知りたかった。
いろいろな気持ちを胸に、またジュースをおかわりする。
今日の朝、ミズと出会って心を落ち着かせられたあのジュースの味だった。
まるで思い出をさらに深く刻み込むように、私の喉をジュースが流れていった。
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