第3航 所有物の私

「え…買った…?」

「うん。あれ、覚えてない?」

「私、東京に行った時に男性に殴られて…意識失っちゃって…」

「あー…訳あり商品か。」

「どういう感じだったんですか、あれから」

「私が今、一から説明できる余裕があると思う?」

逆にそう聞かれ、一瞬何が起きたのか分からなかった。

なんなんだ、この人。

「なんなんだ、この人って顔してるね」

「…」

「まあいいや。これから貴女は『孤城連隊第3部隊』に所属してもらうから。あと、このベルト首につけてね」

「えっ」

「あなたは私の所有物なんだから、私から言われたことは絶対。いいね?」

「っはい」

所有物。

人身売買でもされたのだろうか。

ゾッとする想像までいって、思考を停止し、宙に投げられたベルトを取る。

「偉い子だね、さすが私の所有物もの。じゃあ、私はそろそろ行くから」

海女王様が立ち上がるとともに、彼女が一言声をかける。

「会議ですか?」

「…ミズ、貴女は凪を孤城第3部隊の手続きを手伝って。あと、私たちになれるようにお世話しておいて。」

「わかりました」

どこからか取り出したのか、海女王様はセーラー服から上に上着を着てこちらに向かってきた。

ベルトをつけた私を見て、通り過ぎると同時に『似合ってる』という言葉を残して、出ていく。隣を見れば、そういえば彼女もおなじ黒いベルトをしていた。

彼女も、ミズもあの人の所有物なのだろうか。

考えれば考えるほど、ここの景色とは裏腹の闇を見ているような気分になってくる。

一呼吸して、ミズをしっかり見てみる。

群青色の猫のような耳が生えていて、右には三つ編みを結んでおり、左下の髪を三つ編みをして垂らしていた。向日葵の髪飾りをしており、その後ろには結い髪をしていた。瞳には一つずつ黄色い光があり、より不思議さを放っている。あの人と同じ、黒いセーラー服を下に、青いパーカーを上に着ていた。


こんなまじまじと人を見るのはなくて、自分でも戸惑う。

不思議そうな顔をして、「こっちだよ」と呼びかけられた。

私はまたミズと手を繋ぎ、城の中を歩いていった。




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