第2航 私が買いました
「ほら、ついたよ」
歩くこと数十分。
目の前には物々しい空気をまとっている、一つの大きな大きな城があった。
もう建てられてから何年も経っていそうなのに、新品同様のような塗装で、まるでアニメか小説の中に入り込んだようだった。
「すごいお城でしょう?」
私の様子に自分のことのように喜んでいる彼女の姿を見る。
「うん…なんていうか、すごい貫禄あるね」
「でしょでしょ。このお城、今からもっともっと前の初海王様と海女王様が一緒に造ったって言われてるの!もうその技術はあんまり残っていないんだけど…すごくすごく感動するお話なんだ!」
「そうなんだ…今度、教えて」
「もちろん!」
そんな話をしていたら、いつのまにか彼女が城の門番と執事に話をつけ、海女王様、という人がいる場所にたどりつく。
「海女王様はとっても優しい人だから、安心してね。」
「ありがとう」
そう一言ずつ会話し、ついに海女王様と対面する。
大きく放たれたドアの向こうには、いかにも女王様が座っていそうな椅子に着席している海女王様がいた。
「待っていたわ。はやくこちらにきて。」
鈴のような音色の声が響き渡る。
繊細なのに、まるで太い糸で操られているかのような感情になる。
気がつけば、海女王様の目の前にいた。
鮮やかな海の海水をそのまま染めたような水色の髪、花形の髪飾り、そして、なにより動物のように鹿の角が頭に生えており、目を閉じていたが、私が分かるようだった。
「こんにちは、凪ちゃん」
「え…あ、」
「名前…ていうか商品番号ぐらいは把握しておかなくちゃね。」
「ど、どういうことですか、私は買われたんですか」
なんで名前を知っているの?どうして商品番号?訳もわからず、しどろもどろになる。
そんな私の様子を見て、にこっと不自然に笑う。そして、一言私の耳向かって言う。
「そうだよ。」
「私が凪ちゃんを買ったんだよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます