ー第一章 ようこそ、孤城へ。ようこそ、第3部隊へ。ー

第0.5航 異常事態

「…疲れた…」

電車から降り、ため息混じりに言う。

学校の後、急に一人の友達が東京に行こうと言い出し、東京に着く。

学校の後なもんだから、頭が重くなるような疲れ具合だ。

さらに人混みの中で電車に揺られるもんだからたまったもんじゃなかった。

「まあ電車の醍醐味でしょ、あれは。」

「そうだけど…流石に疲れるのは疲れる…」

「あははっ、まあ元気出して、ほら行くよ!!」

元気に私の手を取って歩き回る友達は、まるで初めての遊園地でつぎはそこ、つぎはそこ!と目を輝かせながら走り回る幼児のようだった。

でも、そんな友達のおかげでもあるのか、いつもの平凡な日常ではなく、非日常なことが結構嬉しい…と思う。

いつもならこんな気分はしないだろう。

街の雰囲気の明るさに心を持ってかれそうな部分もある。

そんなこんなで、友達と歩いて数分。

かわいいぬいぐるみやキーホルダーが売っているショップの前に辿り着いた。

中にいざ入ってみると、まるで夢の世界に入ったような光景が目の前に広がっていた。

今度は私が、初めての遊園地デビューの子供みたいだ。

たくさんの可愛いキャラクターや癒されるものに囲まれて、私の家とは大違いだなんて思ったりした。その時は、私がすごく迷って買った友達とお揃いのキーホルダーを買って、店を出た。

白いくまの、きらきらした目は私や友達のあの目に似ていた。

こんなことは今までなかったので、私は初めての嬉しさをかかえながら大切にそのキーホルダーをリュックにしまう。

こんな幸せ、あっていいのだろうか。

それさえ思った。


けれど。

私はさらに非日常な目に遭うことになってしまう。

「電話…繋がらない」

携帯で連絡を取ろうとしたけれど、友達は電源が切れてしまったのか、なぜか応答してくれなかった。

『いきたかったタピオカの店行ってくるからここでまっててー!』

そう告げられ、約20分。

まったく来る気配もなく、ただただどうしようか戸惑っている。

連絡ももうたくさんかけて見たけれど、ずっと応答しない。

友達になにか危険なことがあっただろうか。

心配になってくる。

そんな時。

「姉ちゃん、こんにちは」

後ろから声をかけられ、振り返る。

そこには大きな図体をした男がいた。

後ろにも二人おり、さらに怖くなってしまう。

「こ…こんにちは。どうしましたか?道案内ですか…?」

「あー、そうそう道案内。あのさ、ここ教えてくんない?」

「わ、わかりました。」

なんだ道案内かと安堵しつつ、わたしもわからなかったので地図アプリを使って案内していく。

ちらりと後ろを振り返ると、そこには少し不吉な笑みを浮かべた男性がやはりそこにいた。このままで大丈夫なのだろうか。

そんな考えをしながら、「もうすぐですよ」と声をかけた時。

私はもう意識がなかった。

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