第6話 全ての悪霊は俺が祓う
「猪笹王、今からおめぇを祓う!!」
俺、片桐 仁(かたぎり じん)は山で暴れている妖怪『猪笹王(いのささおう)』に宣言した。
そして猪笹王は後ろ足を蹴り俺に突進してきた。
俺は自分の術で土の壁を作り猪笹王にぶつけようとした。
だが土の壁は簡単に壊された。
さっきは壊されなかったが猪笹王は地面から生やした竹で壁にダメージを与えたことにより、突進のダメージで壁が壊せたのだ。
「何!?」
俺は猪笹王にぶつかりそのまま森の中へ連れていかれた。
「片桐くん!」
「くっそ!」
このまま木にでもぶつかったら勢い良く挟まれてタダじゃ済まない
……てかこいつ……片足も無かったが片目もねぇじゃねぇか、こんなの妖怪でもいてぇだろ……
俺は猪笹王から離れるために自分の後ろに土の壁を作り、杖を捨て猪笹王の牙を持って足を浮かせて壁に足を付けた。
そして猪笹王を思いっきり押し返して体当たりを抜け出した。
押し返す力がいきなり消えた猪笹王は勢い良く壁にぶつかった。
やばい……抜け出したは良いがさっきので握力が無くなった。
土の壁から抜け出した猪笹王は鼻息を荒くしてこちら見ている。
このままじゃ……やられる
その瞬間、青い炎が飛んできて猪笹王に当たった。
「片桐くん! 大丈夫!?」
「……鳥野郎」
「はい、杖」
「……チッ」
「え! 舌打ち!? まあいいか で、どうやって封印する?」
「封印はしない」
「え? なんで?」
俺はまた猪笹王が動き出す前に術で火に当たって弱った猪笹王を土で包んだ。
「あいつは片足も無い、片目も無いでずっと動き続けてる、なんでかわかるか?」
「えーっと、妖怪だから痛くないとか?」
「確かに妖怪は体を再生すれば痛みは無い、だがおそらくあいつは力が弱くて再生出来てない、それでも動き続けるのは人間への怨みが積み重なった結果だろうな」
「人間への怨み?」
「妖怪や霊は人間への怨みが積み重なると自分でも
コントロール出来ずに暴走する、おそらくあいつもそうだ」
猪笹王が包まれていた土から出てきた。
くっそ、こいつと喋りすぎた。
鳥野郎が青い羽を振って猪笹王に青い炎で攻撃している。
「片桐くんには何か考えがあるんでしょ!」
「……はぁ、仕方ねぇ! おめぇ猪笹王をここで足止めしとけ、俺はさっき所でちょっと準備をしてくる、合図したらこの妖怪をあそこまで連れてこい!」
「わかった!」
俺はさっきいた荒地まで戻ってきた。
「さてと、そんじゃ……」
俺は杖を地面に突き猪笹王がいる方向以外を土の壁で囲い自分を中に入れたドームを作った。
「よし……」
杖を突き土の塊を1つ鳥野郎がいた場所に飛ばした。
そして少し待っていると鳥野郎が猪笹王に追いかけられながら走って来た。
御守りの力で足が速くなりイノシシに追いつかれないようになっている。
「猪笹王をこん中に入れろ!」
そう伝えると鳥野郎は土のドームに入るギリギリで避け、猪笹王はそのまま突進して入ってきた。
俺はまた土の壁を作り猪笹王は勢いをつけすぎたのかさっきみたいに竹は生やさずにぶつかった。
しかしすぐに壁から抜け出した。
「猪笹王……おめぇを祓う!!」
猪笹王が吠えて俺に向けて竹を生やした。
「それはもう見飽きてんだよ!」
俺はそれを避けながら杖を地面に突いた。
そして周りにあった土の壁が崩れ回りながら猪笹王にくっつき動きを封じた。
杖の先を猪笹王に向けてから空に向けると1本の棒に繋がっているかのように猪笹王が浮かんだ。
杖を引くと猪笹王くっついた岩が自分の方に近づく
「悪霊……退散!!」
自分の目の前に近づけた猪笹王を杖の先で勢い良く突くと塊猪笹王に紋章が浮き上がる。
そこから強風が吹き出し猪笹王は爆発した。
爆発の中からは猪笹王が飛び出し地面に倒れた。
俺は最後に弔うために猪笹王の近くに寄った。
「もう何かを怨んで苦しむな、次に生まれ変わったら幸せに生きてくれ」
息が浅くなっている猪笹王を撫でた、身体は呼吸をして膨らんだり戻ったりを繰り返している。
猪笹王の体が少しづつ薄くなり消えている。
妖怪は死体が残らず徐々に消滅する、何度も見たことがある光景だ。
やがて猪笹王の姿は完全に消滅した。
俺は手を合わせて猪笹王が幸せになれることを祈った。
ちゃんと見ていたわけではないがおそらく鳥野郎も隣で手を合わせていたと思う。
少し経って俺は立ち上がった。
「おーーい!!」
突然山の上の道から声が聞こえた。
水の女と優さんが走ってこっちに向かっていた。
「2人とも大丈夫!?」
「うん、大丈夫」
鳥野郎が答えた。
俺たちはそれぞれにあったことを話した。
「暴走した猪笹王か……」
「人間を滅ぼそうとする組織『耕子(たがやし)』……そいつらもまとめて俺が祓う」
そう言うと鳥野郎が俺の方を向いた。
「……僕、今回の事で妖怪が人間を怨まないように、人間と妖怪が仲良くなれる世界にしたいって思った」
こいつ……生ぬるいことを言いやがって……
「俺は全ての悪霊を祓う」
「諦めないよ、仁!」
「出来るもんならやってみ……ん? おめぇ今名前で呼んだか」
「良かった〜 仲良くなれたのかも?」
水の女がニヤニヤして言う。
「こんなやつと仲良くなるわけねぇだろ!」
「あと僕のこと『鳥野郎、鳥野郎』って呼ぶんじゃなくて名前で呼んでよ 仁」
「うるせぇ鳥野郎! 呼び方なんかどうでも良いわ!」
「照れてる?」
「照れてねぇよ!」
俺はしつこい奴らに追われながら山を降りた。
「うわーん、戻ってきたー」
ナギさんは相変わらず泣いていた。
すると突然ナギさんの体が石に変わった。
「え!? 石に変わった!?」
「ナギさんは妖怪『子泣きじじい』なんだよ、だからすごい泣くと石になって重くなるんだよ」
「じじいって言わないでよー まだ若いからー」
「戻ってきたか」
ツボさんはいつもの無表情のまま言った。
「無表情なのは感情を左右されては困るからだ」
「え? どういうこと?」
「はぁ……心を読まれた」
「ツボさんは心が読めるの?」
「そうだよ、ツボさんは妖怪『覚』で心を読めるんだ」
そしてツボさんはこめかみに手を当てて言った。
「……なるほど……今回のことは私が本部に報告しておきます」
「うわー、俺の今日の朝ごはんバレたー」
「ぶふっ、パンと白米を食べたなんてことは報告しませんよ。」
優さんの下らないボケにツボさんは吹き出してからに無表情に戻って言った。
それにしても朝ごはん特殊すぎるだろ!
「それじゃ車に乗り込んで」
その言葉を聞いた時、俺は体が震えた。
「え? どうしたの? 仁」
車、それは狭い閉鎖空間で勝手に動き、人間よりもはるかに速く、俺の気分が悪くなる呪いがかけられた恐ろしい箱、もしこれに乗れば……
「仁は田舎から出てきたから車に慣れてないんだ、車に乗る時は躊躇して乗ってる時は震えながら目を瞑ってる、車酔いもするし」
「行きにもやってたけど、妖怪と戦うために気分を高めてたとかじゃなかったんだ」
「お、俺は走って帰ります!」
「そんな簡単に行ける距離じゃないし疲れてるだろ、車に乗った方が良いぞ」
「うっ……わ、わかりました……」
それから俺は閉鎖空間で不規則な揺れを体感しながら店に帰るのであった。
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