第5話 九尾の狐は何者?




「妖人たち大丈夫かな〜」


 私、川石 姫華(かわいしひめか)は山にいる妖怪を探すため組織の先輩の世煌 優(せきら ゆう)さんと一緒に山を登っている。


「心配するのは分かるけど、大丈夫だろ」


「でもすごい仲悪そうだったよ」


「あの2人なら上手くやれるさ」


 山と言ってもあまり高くないけど、だいぶ登って流石に少し息が切れてきた。


「はあ、そこのベンチで少し休憩するか〜」


 優さんはベンチに近づいたにも関わらず地面に座った。


「いや、ベンチあるんだからベンチに座って」


「よし、ナイスツッコミ!」


 この人面倒臭いなぁ……

 私と優さんは近くにあったベンチに座った。


「あと少しで山頂か、そこまで行って特に何も無かったら妖人達と合流するか」


「そうだね」


 ベンチに座って一息ついていると突然森の草むらが音を立て中学生ぐらいの女の子が出てきた。


「お願い! 助けて! 変なお化けが!」


「え!? どうしたの!?」


「森でお化けが出てきたの! お願い助けて!」


 女の子は怖がり慌てた様子で言う。

 お化けってもしかして山にいる妖怪?

 

「大丈夫お姉ちゃんたちが助けてあげるから」

  

 私は女の子が言う森の中を目を凝らして覗いて見た。

 妖怪を探していると後ろから突然、

 

「姫華危ない!!」


 優さんが声が聞こえた。


 振り向くと女の子が両手の手のひらを見せていた。

 手から炎が吹き出した。


「やばい!」


 急いで私は水の壁を作り、防いだ。


「お姉ちゃん、水が操れるんだね」

 

 優さんは雷を操る能力で拳に雷を纏わせてその子にぶつけようとしたが、その子は優さんの拳を受け止め手を離して距離をとった。


「うわー、すっごいピリピリするー」


 その子は手を振って顔をしかめて言った。


「やっぱり、怪しいと思った 君、何者?」


「アタシは『九尾の狐』の破火(はび)、よろしく」


「九尾の狐……厄介だな…… 君が登山客を襲った妖怪か?」


「いいや 襲ってるのはアタシじゃないよ」


「ってことは襲ってる妖怪を知ってるのか?」

 

「知ってるよ だって、アタシが封印解いたんだもん」


「なんでそんな事をした……」


「だって人間邪魔なんだもん それを邪魔する辻も邪魔」


「それなら、俺は君を祓う」


「やってみなよ」


「姫華! 俺の後ろで援護!」


「わかった!」


 優さんは一瞬で破火と名乗る九尾の狐に近づき雷の拳で殴ろうとしたが簡単に避けられた。そして破火は手のひらを優さんに向けて炎を出した。

 炎は優さんに当たり吹き飛ばされた。

  

 破火は倒れた優さんに近づきまた手のひらを向けた。


「バイバーイ、お兄ちゃん」


 破火が炎を出そうとした瞬間、私は破火の手を水の玉の中に入れた。


「え? 何コレ 邪魔ー」


 破火が機嫌の悪そうな顔で言った。

 

 優さんはすぐに雷を纏った足で蹴りを入れてハビを吹き飛ばした。


「いったー それが子供にやる事?」


「何となくわかるけど君、子供じゃないだろ」


「えーバレたかー これじゃあ戦えないし……」


 破火は自分の手を包んでいる、私の作った水の玉を見て言う。


「本気出しちゃおっかなー」

 

破火は笑うと全身が炎に包まれ大人の女性の姿に変わり、私の付けた水の玉は消えていた。


「いきなり妖気が強くなったな」


「殺してあげる」


 お互いが戦いの姿勢に入った。その時

 

「ちょっと待った この山ごと焼き尽くすつもりかよ破火」


 いきなり男が現れた。

 その男はボロボロのコートを着て帽子を被って髭を少し伸ばしていて、ホームレスの様な見た目をしていた。


「酒カスは邪魔しないでよ」


「お前が妖怪の封印を解くとか勝手な事しなけりゃ良かったんだよ! ここには居なかった、帰るぞ」


「うるさい アタシはこの2人を殺すから」


「お前、俺たちの目的を忘れたのか!? 確かに人間を滅ぼす事だが、今じゃない」

 

「……はぁ、わかったわかった 帰りますよ」


「おいおい、ちょっと待ってくれよ お前ら何者なんだ?」


「辻、宣戦布告しとくぜ、俺たちは人間を滅ぼす者『耕子』(たがやし)だ その日までせいぜい用心しておくんだな」


「じゃあね、お兄ちゃん、お姉ちゃん」

 

そう言って男は指を指し、女は手を振ると2人は火に包まれて消えた。

 

「あいつらなんなんだろう……」


「悪霊組織、『耕子』か……早く妖人たちと合流しないとな」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る