第2話 青鷺火は青く光る





「川石さん!! 早く逃げて!!」


「逃げない! ――この鬼を……封印するから!!」


「封印?」

 

「お前ェ、ツジかァ?」


「そう、私はツジの川石姫華…… あなたを封印する!!」


「ならァ、お前から喰ってやるゥ」


 もしかして、さっきの封印しなきゃってこの鬼の事だったのか……?

 ていうか、ツジってなんだ?

 

 ――あれ? 川石さん……怖がってる……?

 

 そんな疑問を浮かべた瞬間、彼女は鬼の方に手を伸ばし、周りに透明な液体が出現した。その液体は形を変え矢を数本作りだした。そして夕日に反射する矢が素早く鬼の体に突き刺さった。

 

 鬼は矢が刺さり多少体が押されるも効いていない様だった。鬼は余裕の笑みを浮かべて素早く距離を詰めて彼女に蹴りを入れた。彼女は吹き飛ばされて木にぶつかった。


「がはっ!! ぐっ…⋯⋯」


 まずい! 川石さんが! ――どうすれば、何も出来ないなら早く逃げた方が……


 鬼は川石さんに近づいて頭を握った。


「川石さん!!」

 

「ゔっ……ゔゔっ……」


「じっくり痛めつけてからァ、喰ってやるゥ」

 

 何かしなければいけないのに何も出来ない。自分の無力さに絶望してる、そのくせ何もせずに逃げようとしようとしてる。 最悪だ……死ぬのが……恐い……


「たす……けて……」


 川石さん……「助けて」……そうだ、あの時から、自分の生き方を決めていた。「死ぬのが恐い」なんて思うんじゃない、自分の生き方を貫くんだ。


 僕は鬼に向かって走り、


「うあああああ!!」


 鬼の腹を殴った。 

 

「なんだァ? 俺の腹に拳を入れてもォ、痛くも痒くもないぞォ」

 

「たとえ、何も出来なくても……! 困ってる人がいたら助ける!! それが僕の生き理由だ!!!」


 その瞬間、鬼の腹にぶつけた僕の拳は突然青い炎が燃え上がり、鬼の腹を焼いた。


「ぐああああっっ!!」

  

「何だ……? これ……」


「お前ェ、妖術使いだったのかァ!!」


 拳の炎は目の前で集まり、青い炎の中から人の大きさ位の1羽の青い鳥へと姿を変えた。


「グワーー!!」

 

 鳥はひと鳴きして僕を見つめている。


「君は……確か……」

 

 次の瞬間、鳥は手のひらサイズの青い羽に変わった。


「羽に変わった!?」


 僕は驚きながらもその青い羽を手に取った。

  

「殺してやるゥゥ!!」


「やばっ!」


 鬼の拳から身を守るために背中を向けてしゃがんだ瞬間、羽から線を描くように炎が現れた。


「そういう事か!」


 すぐに振り返り、炎に当たってよろけた鬼に羽を剣のように振るった。


「はぁ!!」


「ぐはっ!! ――こうなったらァ……!!」


 鬼は両方の手のひらから紅い炎を出して投げつけた。

 僕は実際には速いはずなのに何故か遅く飛んでくるように見える炎を羽を振るって青い炎で防いだ。 


「お前を止める!!」

 

 羽の先を鬼に向け後ろに強く引き、羽の先から炎が吹き出した。

 羽を前に突き出し鬼を貫く。

 

 鬼の全身が青い炎に包まれた。


「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 鬼の断末魔が森中に響き、やがてやんだ、

 鬼はズシンという音を立てそのまま倒れ、鬼の角が折れた。


「終わった……?」


 安心したからなのか、力を使い果たしたからなの か分からなかったが、力が抜けて尻もちを着いた。

 

 謎の鬼を謎の力で倒すことが出来た。


 ――それにしてもずっと青い炎が燃えている。あれは自分で消さなきゃいけないのか?

 

 そんな事を考えた時、燃えている倒れた鬼の体が突然動き出し、手をこちらに伸ばして来た。


「ゔァァァァ!! よくもやってくれたなァァ!! 絶対に殺してやるゥゥ!!」


 倒せてなかったのか!? まずい!! 早く逃げなきゃいけないのに体が言うことを聞かない!!


 終わった。


 と思った瞬間、


「悪霊⋯⋯退散」


後ろから発射された高圧力の水噴射が鬼を消し飛ばした。


困惑しつつ急いで後ろを振り向くと川石さんが手を広げて手を伸ばしていた。おそらく先程の水噴射は川石さんが手から放ったのだろう。


「あの鬼は強力な妖怪で封印するしかなかったんだけど⋯⋯君のお陰で力の源である鬼の角が折れて倒すことが出来た⋯⋯」


 ボロボロな彼女は息を切らしながら僕に説明して質問をしてきた。


「そういえば、君、妖怪使いだったの? さっきの鳥は青鷺火(あおさぎび)?」


「あおさぎび? いや……僕にもよく分からなくて……」


「そっか、なら着いてきて貰いたいかも 私のいる組織、ツジに」


 彼女は笑顔で言った。


「え? 組織……? え、ちょっ

 疲れてるんだけど〜! 引っ張らないで〜!」


 僕は彼女に腕を引かれながら山を降りて行った。



 

 ――

 2人がいなくなった森の中で1人の青年、新園響生がいた。

 

「やはり力を宿していたんだね、狭間くん、封印を解いた甲斐があったよ……」


 彼は残った鬼の角を拾い上げた。


「俺も早く、力を集めないと……」

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