第二章 ラスボス、冒険者を救う(一回目)①
ダンジョン内をしばらく歩くと、外から光が差し込んでいる場所が見えた。
どうやら入り口に着いたらしい。
なんと、入り口付近に冒険者らしきグループがいる。
「メカニー、人が! 人がいる!」
――なんて喜んだのもつかの間。
その冒険者たちは、何やらトラブルに見舞われているようだった。
「なんかあったのかな」
『誰かが負傷しているようです』
「え――」
ラスボスであるオレが近寄ってもいいものかは分からないが、どちらにしてもあそこを通らなければ外には出られない。
スキル【転移】を使う方法もあるけど――。
「……あ、あの、どうかしましたか?」
「!? あ、あんたは? 冒険者か? 見かけない顔だな」
「え、ええまあ。最近冒険者になったばかりで」
「そ、そうか。実は見てのとおり、仲間がモンスターにやられてな。傷がひどくて回復薬が足りないんだ。街までは遠いしMPも切らしてて、このままでは――」
倒れて気絶している女性は顔色も悪く、脇腹を大きく負傷していてかなりひどい状態だった。
な、なるほどこれは……。
いったいどうしたらいいんだ?
回復薬――は持ってないし、MPは使い方が分からない。
となると、残るはスキル【再生】か。使ったことないけど。
でも使用方法はインストールされて頭に入ってるし、きっと大丈夫なはず……。
「あんたも初心者ならさっさと逃げたほうがいい。つかなんで初心者のくせにこんなとこにいるんだ? ここは最難関ダンジョンだぞ! 普通なら雑魚なはずのスライムすらめちゃくちゃ強い」
――――は?
「え、ええと、このダンジョンが最難関?」
「そうだ。そんなことも知らずによく生きてられたもんだな。俺らはもう十年近く冒険者やってるベテランだ。それでもこのザマだ。悪いことは言わない、さっさとここから去れ」
冒険者の一人が荒々しくも親切に教えてくれた事実に、驚きで言葉が出てこない。
それってつまり、オレは最難関ダンジョンのラスボスに転生したってことか?
もしかして、さっきオレが食ったスライムってこいつらを……。
いや、今はそんなことを考えてる場合じゃない。
「と、とりあえずスキルで治療しますね」
「――は!?」
……え? なんだ?
早くしないと手遅れになるかもしれないし、さっさと治療したいんだが。
「とにかく治療します!」
オレは血を流して倒れている女性に手をかざす。そして。
脳内で「スキル【再生】」と唱えて傷が治る様子をイメージする。
十秒もすると、深く抉れていた女性の脇腹はみるみるうちに再生し、悪かった顔色もだいぶ回復し始めた。
苦しそうだった表情も和らぎ、今はすうすうと寝息を立てている。 ――よし、こんなもんか。
あってよかった【再生】!
今ばかりは、このスキルを選んでくれたあの女神に感謝だな……。
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