第一章 転生したらラスボスだった⑤

『……かしこまりました』

 ダンジョンから出るなら、金貨と何か使えそうなアイテムを持っていこう。


 オレは宝物庫へと戻り、スキル【鑑定】を使って財宝を1つ1つ確認する。

「さすが、ダンジョン最下層のラスボスエリアにある財宝だな。どれもこれも、チート級のアイテムばっかじゃねえか」

『ここにたどり着く冒険者は、百戦錬磨の手練ればかりです。当然装備品も、高級品や伝説級のものしかありません』

「そ、そっか。まあラスボスだしな」

 つまりここにあるアイテムは、ラスボスに敗れた冒険者たちの遺品ということか。

 そう思うと勝手に使うのは忍びないな。

 でもまあ、オレはオレで死にたくないし。

 ここは大人しく使わせてもらうことにしよう……南無……。

 オレは財宝の中から、念のための資金として金貨を百枚、それから護身用に《認識阻害ローブ》と《龍の短剣》をアイテムボックスへ収納した。

 ちなみにシステムやアイテムの使用は、ステータス画面に表示されるアイテム一覧から選んでもいいし、メカニーに頼んで出してもらうこともできるらしい。

 どうやら異世界でもAIのような技術が発達しているようだ。

「――ん? これは何だ?」

 宝物庫を漁っていると、大きな麻袋を二つほど発見した。

 縛ってある口を開けると、中には何やら小さな箱が大量に投げ入れてある。

『その箱は食料です』

「え? は? カロ○ーメイトみたいなやつか?」

『そのカロなんとかは分かりませんが、一本で一食分の栄養が摂れるように作られています』

「な、なるほどそんなものが……」

 オレは試しにひと箱開けて、中身を食べてみることにした。

 箱も劣化していないし、しけっている様子もない。匂いも大丈夫そうだ。

 恐らくそんなに古いものではないだろう。

 そう思ったのだが。

「――まっず!? え、何だこれ!?」

 その転生前の世界にあった某携帯食のような食料は、味がないくせにえぐみだけはしっかり残る、パッサパサでひたすら食べにくい代物だった。

 いったいどうしたらこんなまずいものが作れるのか。

『この世界ではごく一般的な食料です』

「はあ!? みんなこれを食べて生活してんのか?」

『はい。このコンフードと呼ばれているもの以外は、貴族の贅沢品です』

 き、聞いてないぞ女神いいいいいいいいいいいい!!!

「ま、まあいいや。飢えて死ぬよりはマシか。ダンジョンの外がどうなってるか分からないし、とりあえずこれも二箱ほど持っていこう」

 ダンジョンから出て街に行けば、おいしいものがいくらでも手に入ると思っていた。

 しかし、そう簡単にはいかないらしい。

 食材が手に入らなかったらどうしよう。

 スキルの選択、間違ったかな……。

 というか異世界転生者って、もっとこう勇者っぽい感じに王城で歓迎されて、親切にレクチャーされるもんじゃないのか!?

 そうじゃなくてもせめて地上で平和にスローライフとか!

 なんで敵キャラで、しかもダンジョン最下層を支配するラスボスなんだよ!

 誰か助けて!!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る