第一章 転生したらラスボスだった④

「……この財宝ってオレが好きに使ってもいいのか?」

『はい。すべてラスボスである蒼太様のものです』

 転生したばかりでこの世界の所持金ゼロだし、これは助かる!

 というかこれだけあれば一生困らないんじゃないか?

 とりあえず、資金には困らなさそう――か。

 なら次は、衣食住の確保だな。

 それから、このだだっ広いラスボスエリアのリノベーション。

 とはいっても、まさかこんなダンジョンの最下層に業者を呼ぶわけにもいかない。

「メカニー、普段の生活はどうしたらいいんだ?」

『はい?』

「いやいや、このフロア、どう考えても住居としては使えないだろ?」

『……居住、ですか。以前のラスボス様が使われていた休憩室でしたら、宝物庫から玉座を挟んで右側の壁にございます』

 つまり、居住エリアは特に用意されていない、と。

 まあ休憩室でもないよりマシか。

 オレはメカニーに言われるまま、壁を探ってみる。

 すると壁に、先ほどと似た黒い石が埋まっている部分を発見した。

「あった。これか?」

 石に触れると壁の一部が消え、その先に広い部屋が現れた。

 少し埃臭いが、部屋には立派な椅子とテーブル、大きな棚、ソファー、それからベッドまで揃っていた。

 床には高そうな絨毯も敷かれていて、しばらく暮らす分にはまったく困ることはなさそうだ。

 が、食料や衣類、日用品などのこまごまとしたものは見当たらない。

「……というか、買い物はどうするんだ?」

『ダンジョン内には、蒼太様が簡単に倒せる弱い冒険者やモンスターがうろうろしています。適当に襲って強奪すればよいかと』

「そんなことできるかっ! オレの快適ライフ計画が台なしになるだろ!」

 くそ……こいつ案外使えない!

 まあラスボスのガイド役だしな!!!

 何か使えそうなスキルは――。

「そうだ、【探知】ってのがあったよな。まずはこれでダンジョン内の様子を探って、それから良さげなポイントがあれば【転移】で――」

 スキルの使い方は、不思議とすんなり分かった。

 先ほどのインストールには使い方も含まれているらしい。

「おおお、すげえ! ダンジョン内の様子が手に取るように分かる!」

 が、しかし。

 ダンジョンはどこまでいってもダンジョンでしかなく、めぼしいものは何一つ見当たらない。

 ところどころに宝箱も設置されているが、今ほしいのはあくまで飲料水と食料だ。

 マンガや小説ではモンスターを食べて生き延びる展開もあるが、ただの会社員だったオレにはそんなこと到底できない。

 生き延びるために冒険者を襲うか?

 いやいや、そんなことをしたらすべてが終わってしまう。

 それなら――外に出るしかないな!

「メカニー、ラスボスに挑む冒険者ってどれくらいの頻度で来るんだ? 冒険者が来た時にオレがいなかったら困るよな?」

『ラスボス不在の場合は、入り口の鉄扉は開きませんのでご安心ください。それに、ここは地下三十二階層です。ここまで来られる冒険者はそういません』

「ダンジョン踏破って、けっこう難易度高いんだな……。というかオレ、実は結構ヒマ?」

 まあでも、時間があるのはありがたい。

 幸い今は、一番頑張っている冒険者でも地下十二階層付近をうろついていて、しかも引き返そうとしている……ように見える。

 当分ラスボスエリアにたどり着くことはないだろう。

「メカニー、ダンジョンの外に食料調達しに行くぞ!」

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