第一章 転生したらラスボスだった③
今後の方向性が決まれば、次にすべきことは現状把握だ。
「おまえにも名前があったほうが便利だよな。機械っぽいし、メカニーなんてどうだ?」
『蒼太様にお任せいたします』
「なら今日からメカニーな。それでメカニー、転生前に、女神にスキルをもらったはずなんだ。それの確認方法が知りたいんだけど」
『かしこまりました。【ステータス画面】を起動します』
メカニーは、ブオン!という音とともに、半透明の画面を出してくれた。
――す、すげえ。本当ゲームみたいだな。
まあ転生とかダンジョンとかラスボスとか言ってる時点で既に――だけど。
ええと……。
【ステータス】
名前:小鳥遊蒼太
職業:ラスボス(転生者)
HP:?????
MP:?????
SP:?????
使用可能な魔法属性:全属性
スキル:【絶対防御】【鑑定】【探知】【特殊効果無効】【再生】
所有アイテム:ラスボスエリア/選べるスキルカタログ/財宝
HPやらMPやらが「?」で埋まっているのが気にはなるが。
そもそも平均値が分からないし、知ったところでどうしようもない。
この辺はおいおいメカニーに話を聞くことにしよう。
そんなことより、まずはスキルカタログだ。
「たしかこの中から五つ、好きなスキルを選べるんだったよな?」
女神が今日中って言ってたし、とりあえずもらうスキルを決めるのが最優先事項だ。
今日があとどれだけ残ってるのかも分からないし!
カタログをめくると、異世界転生ものの作品でよく見るような、チート臭がプンプンする特殊スキルがずらりと並んでいる。
恐らくラスボス不足解消のために、オレを最強のラスボスにしようって魂胆なのだろう。
だがしかし!
オレが選ぶのは戦闘スキルじゃないんだな!!!
オレはカタログを一通りチェックし、その中から【転移】【料理】【快眠】【浄化】【園芸】の五つを選択した。
『あとから変更はできませんが、この五つでよろしいですか?』
「ああ。問題ないよ」
『かしこまりました。スキルを蒼太様にインストールしますので、しばらくお待ちください』
イ、インストール……。
まあ、あれだな、細かいことを気にしたら負けだな、うん。
『インストールが完了いたしました』
メカニーがそう告げた瞬間、スキルカタログは炎に包まれ、一瞬で消滅した。
同時に所有アイテム欄からカタログが消え、ステータス画面に表示されているスキルが増えているのを確認する。
これでもう、オレの所有アイテムは――。
「――ん? 待てよ、財宝ってなんだ?」
『財宝は、ラスボスである蒼太様の財産です。奥の壁に設置されている魔術具に手を触れることで、宝物庫が現れる仕組みです』
「な、なるほど?」
オレは果てしなくまっすぐに延びている赤い絨毯の上を、ひたすら奥へと進んだ。
しばらく行くと、奥には短い階段があり、そこから先が少し高くなっていることが分かった。
そしてその上には、立派な玉座のような椅子が鎮座している。
おそらく、ここで冒険者を待てということだろう。
「――お、これか?」
椅子の後ろの壁には、メカニーが言ったとおり怪しく光る黒い石がはめ込まれたスイッチのようなものがある。
その黒い石に手を触れると、壁の一部が光って消えた。そして。
「…………え。まじか」
その奥の部屋には、金貨や銀貨、宝石、希少だと一目見て分かるような武器や防具が山のように積まれていた。
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