プロローグ②
「じゃあとりあえず、スルメの炙り焼きと天ぷら、焼き鳥の盛り合わせ、唐揚げ、ポテトフライ、チーズグラタン、それから何かスッキリできる酒を人数分たのむ」
「あと炊き込みご飯と、この炒め物も気になるな」
「お、いいな。それももらうとしよう!」
ミステリアとベルンは、メニュー表を見ながら次々と注文を入れていく。
「ち、ちょっと2人とも、そんな頼んで食べきれるの!?」
「いやいや俺らなら余裕だろ。なに女子ぶってんだ」
「そうだぞアルマ。せっかくの食べ放題飲み放題だ、遠慮してどうする」
「私はれっきとした女子よっ!」
アルマは真っ赤になって頬を膨らませる。
アルマは美しい赤い髪にスラっと引き締まったスタイル抜群の体をしていて、おまけにかなりの美人だ。
普通であれば、もっとちやほやされてもおかしくない。
――でもまあ、それをしないベルンだからこそ、長続きしてるのかもな。
「はっはっは。仲良しだなあ。でも嬢ちゃん、我慢はよくねえぞ」
「もうっ、家具屋のおじさんまでっ!」
「あ、このキノノンのバター醤油焼きも1つ!」
「ちょっとベルン!?」
受けた注文はリュミエがメモしてくれているし、念のためにオレ専用のナビシステム・メカニーにも記憶させている。オレはそれに従って作るのみだ。
作った料理をテーブルに運ぶと、その場にいる全員が歓声とともに目を輝かせる。
飲み物は、リュミエが運んでくれた。
「それじゃあ戦いの終結、そして《ラスボスの家》のオープンを記念して、カンパーイ!」
「カンパーイ!」
ミステリアとウルド、それからベルンを始めとした何人かの冒険者たちは、乾杯から一気に中身を飲み干し、豪快にドンっとテーブルに置く。
「くはーっ! なんだこの酒は! 疲れた体に染みわたるぞ」
「ソータ、おかわりもらえるか?」
「俺にもくれ!」
「ビールっていう酒だよ。いくらでも作れるから好きなだけ飲んでいいぞ」
一から作ろうと思うと大変だが、スキル【料理】なら材料さえあれば一瞬だ。
材料は、今日に備えて山ほど用意してある。
「んーっ! 焼き鳥おいしいっ♪ ベルンもお酒ばかり飲んでないで食べなさいよ。ほらほらっ」
「うん? お、おう。……つかアルマ、おまえ酔ってねえか?」
「もう、酔ってないわようっ」
焼き鳥を口に押し当てられそうになり、慌てて口を開くベルン。
「お、うめえ! このニワトルに絡むタレ、たまんねえな」
「でしょ? ほら、こっちは塩なんだって!」
「お、おいちょっと待て。まだ食ってる途中――むぐ」
どうやらアルマは酒に弱いらしい。
いつもは我が強いベルンも、完全にアルマに押されている。
「ソータ、どうしたんだ? 羨ましいのか? なんなら私があーんしてやってもいいんだぞ? ほら、あーん♡」
「ちょ、おまっ……むぐ」
席に座ったところで後ろからミステリアに抱きつかれ、口にスルメの炙り焼きを押し込まれる。
「というかおまえこんなに酒に弱かったっけ?」
「うん? いや、私は酔ってないぞ?」
「酔ってなくてそれかよっ」
まったくどいつもこいつも……。
周囲では、早くも酔っ払いたちが騒ぎ始めている。
場所、テラス席にして正解だったな。
――まあでも、たまにはこういうのもいいかもな。
ラスボスになったときはどうしようかと思ったし、いろんなことがあった。
でもだからこそ、こうして笑い合える仲間ができたのかもしれない。
今なら、すべての元凶であるあの女神にも感謝できる気がするな。きっと。多分――。
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