【書籍版】転生してラスボスになったけど、ダンジョンで料理屋はじめます ~戦いたくないので冒険者をおもてなしします!~【試し読み】

ぼっち猫@「異世界ごはん無双」書籍化決定

★書籍版1巻試し読み★

プロローグ①

「着いたよ。ようこそ『料理屋 《ラスボスの家》』へ!」

「これが……! ソータ、改めて、開店おめでとう!」

アース帝国領内の最果てに位置するラストダンジョン最下層、地下三十二階。

そこにそびえる鉄扉の先にあるのは、ラスボスと死闘を繰り広げる決闘の場――ではなく、ラスボスに選ばれた者のみが入ることを許される豊かな農場、そして「料理屋 《ラスボスの家》」だ。

「ありがとう。このおめでたい日に無事開店できて、本当に嬉しいよ」

今この《ラスボスの家》に集まっているのは、ある戦いをともに見届けた冒険者やギルド従業員、職人や商人などなど。総勢二十人くらいだろうか。

打ち上げでもあり、この《ラスボスの家》の初お披露目でもある今回は、建物の手前にあるテラス席を増やしてそこに集まってもらった。

皆、ここがダンジョン最下層だなんて信じられない、といった様子で周囲を見回している。

「本当に素晴らしいな。見慣れたと思っていたが、ここにきてラスボスエリアであることを忘れてしまいそうだ」

本来ならば殺風景な天井が見えるはずの頭上には青空が広がり、時折どこからともなく心地いい風が吹いてくる。

これらはすべて、ラスボスであるオレ・小鳥遊蒼太の特殊スキル(とその特典)によって生み出されている。

「でもミステリア、ギルド長なのにここにいていいのか?」

「問題ない。――というか、こんな楽しげな宴に私を呼ばないつもりか!?」

先ほどから積極的に話しかけてくる金髪ツインテ美少女のギルド長・ミステリアは、不満げに頬を膨らませる。

「リュミエだって、まわりが荒くれ者の冒険者ばかりでは不安だろう。……なあ、私がいた方が楽しいよな?」

「――えっ? は、はい」

「おい、オレの大事な相棒に返事を強要するな」

銀髪の儚げな美少女・リュミエは、ミステリアの圧に気圧されつつそう返す。

ミステリアは良いヤツだし、基本的にはリュミエも懐いているが。

元奴隷ゆえに気弱なリュミエには、彼女の勢いは少々刺激が強すぎる傾向にある。

「本当にすげえな。まるで貴族の屋敷じゃねえか。腹減ったし早く食おうぜ! ソータが作る飯は絶品だからな!」

「ちょっとベルン! 少しは遠慮しなさいよ……」

「ああん? いいだろべつに。アルマこそ、さっきまで『今日のごはんは何だろうね?』って言ってたじゃねえか」

「なっ――!もうっ、ベルンのばかあっ!」

アルマは真っ赤になってベルンをポカポカ叩いているが、屈強な肉体を持つベテラン冒険者のベルンはびくともせず、ただアルマを見て楽しげに笑っている。

まあ、アルマもベルンの相棒として、一般的な人間と比べるとかなり強いんだけど。

「今日はオレのおごりだから、何でも好きに食べて飲んでくれ。メニュー表は一応そこに作ってあるけど、ないものでも言ってくれれば作るよ」

「はっはっは。相変わらず太っ腹な兄ちゃんだ!」

「ありがとうございます。ウルドさんも、《ラスボスの家》の家具を作ってくれた功労者です。今日はじゃんじゃん注文してください」

「へえ? このテーブルと椅子はおっさんが作ったのか。すげえな」

「おっ、ベテラン冒険者に褒めてもらえるとは光栄だよ。ありがとな!」

田舎町ボルドで家具職人をしている男・ウルドは、ベルンと固い握手を交わす。

ほかの参加者たちも、みんな思い思いにこの元ラスボスエリアであった場所を堪能し、和気あいあいと会話を繰り広げている。

そうしてひとしきり会話を楽しんだあとは、いよいよ――!

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