第33話 いや、これ俺のせいだったのかよ、、、

「やっぱりラブコメってのは独り暮らししてないと始まらないのかもしれない。」


 海斗は腕を組みながら真剣な顔でそういっていた。

 今は月曜日

 ゴールデンウイークがあけた初日であった。


「いきなりお前は何言ってんだよ。こんな朝っぱらからさ。」


 そんな様子の海斗を横目に見ながら蒼は突っ込みを入れていた。

 蒼の恰好はすでに夏服へと変わっており半袖である。

 もちろんそれは海斗も同じ、というか大体の生徒がすでに夏服を着用している。


「いやほら、ラブコメの主人公って大体一人暮らししているだろう?」


 うんうんとうなずきながら海斗は続けた。


「それはそうかもしれないけど、お前三次元に興味なかっただろ?」


「それはそうなんだが一回くらいそういうシチュエーションに遭遇してみたいと思うのがオタク心じゃないのか?」


(確かに。というか、そういうシチュエーションを俺は最近体験しているのではないだろうか?)


 蒼は最近ずっと一緒にいる少女の顔を思い浮かべながらそんなことを考えていた。


「そういえばお前は最近ラブコメみたいなシチュエーションを味わってるんだったな。」


 ジト目で海斗が蒼を見つめる。


「それはそうだが、意外と付きまとわれるのは面倒だぞ?」


「そんなこと言ってお前は陽炎さんの今の状況を何とかしようとしてるじゃないか。三次元に興味はなかったんじゃないのか?」


「うっ、」


 痛いところを突かれて蒼はぐうの音も出なくなる。

 実際蒼は月といるのが案外楽しいとおもっているため否定はできなかつた。


「まあ、別にいいけどな。それよりも陽炎さんの状況をどうにかしたいのはわかるが、今のところはどうしようもなくないか?」


 海斗は急に話を変えて腕を組みながらそんなことを言い出した。


「確かにそうなんだよな。女子からは悪目立ちして距離を置かれてるっぽいし、男子からは例の告白騒動で完全に脈がないって思われてるからあんまり関わろうとはされないんだよな。」


 蒼は今まで自身が調べたことを海斗に話した。


「付け加えるなら男女ともに神楽澪音から多少の圧力がかけられてるんだよな。本当にお前何もしてないのか?」


 怪しそうに目線を蒼に向ける海斗。


「本当にしてないと思うんだけどな。」


 蒼は腕を組んで何かしてないか自分の行動を思い出そうとする。


「う~ん。」


 うなり声を上げながら考えるがなかなか出てこない。


「あ、」


 そうして少しの間うなっていると突然蒼が声を上げた。


「どうした?結局何か心当たりがあったのか?」


「いや、そういえば月が転校してきてから少し経ったくらいの時に告白された気が、、、」


 眼を逸らしながら蒼はそういった。


「で、どう答えたんだよ。お前。」


 少し呆れたように肩をすくませながら海斗は蒼に問いをなげたがどうやら結果は大体想像がついているらしい。


「いや、断ったな。それも結構ひどい感じに。」


「なんでそんな断り方したんだよお前。あの神楽澪音だぞ?この高校のマドンナだぞ?」


「いや、なんだか嘘告っぽかったし?」


「もしもそれが本気の告白だったら?」


「、、、」


「それが原因で陽炎さんに白羽の矢が立ったんじゃないのか?」


「でも、俺にはああいう人から好かれるところなんかないだろ?」


 蒼は少し自嘲気味に言った。


「いやいや、お前自覚ないだろうけど顔はそこそこ整ってるし、性格もそれなりにいいだろ?だからこの高校にも結構お前の隠れファンがいたりいなかったりするらしいぞ?」


「マジかよ!?」


 ここで明かされる衝撃の事実だった。

 そんなことないと思っていたからなおさら衝撃的だった。


「じゃあ、もしかして、、、」


「ああ。十中八九お前のせいで陽炎さんがハブられてるんだな。」


 うんうんとうなずきながら海斗はそういった。


「どうすればいいんだあああああああああああああああああああああああ。」


 朝の屋上で蒼の叫びがこだましていた。

 蒼の前途は多難である。

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