第27話 ほんの小さな恩返し

「じゃあさっそく始めよっか!」


 俺達はBBQができる場所までやってきた。


「了解だ。」


 とりあえず両手に持っていた食材の袋を地面において手を洗う。


「とりあえず野菜から焼いてくか。」


「え~お肉から焼こうよ。」


「だめだ。そんなことしたらお前肉しか食べなくなるだろ?なんでお前はいつもは家庭的なのにこういう時は栄養とかを考えなくなるんだ。」


「え?それって私が家庭的すぎるからお嫁さんにしたいってこと?」


「なんでそうなる。次元を一落としてから出直してこい。」


「それってどうすればいいの?」


「しらん。」


 次元の落とし方とか俺だって知りたいしな。


「何よそれ。」


 月はそう言いながら笑っていた。


(楽しんでくれてると思っていいのかな?とりあえずゴールデンウイークが終わったら対策を考えないとな。)


 虐めがいつ悪化するかわからない以上対策をするに越したことは無いだろう。


「ほら、野菜焼けたぞ~。」


 俺はそう言いながら月の皿の上に人参と玉ねぎを乗せた。


「お肉は?」


「今焼いてるからそれ食って待ってろ。」


「私も焼こうか?」


「いあや、いいよ。いつもは俺が飯を作ってもらってるしこういう時くらいはやらせてくれ。」


(借りを作りっぱなしっていうのもなんだか居心地が悪いしな。)


「そう?じゃあお言葉に甘えて今日は全力で食べまくろうかな!」


 目をキラキラさせながら皿の上に乗せた野菜を平らげてゆく。

 そうこうしてるうちに肉も焼けたので皿の上に載せていく。


「やった!お肉だぁ~」


 月は皿の上に載っているものをどんどん食べていた。


(一体その細い体のどこにそんな量入るんだ?)



 ………………………………………………………………………………………………


「うまかったな。」


「だね!今日は私食べるだけだったけど。」


「いつも作ってもらってるからな。食材を焼く程度なら俺にもできるから日ごろの恩返しだ。」


「別に私が好きでやってることだから恩返しとか気にしなくてもいいのに。」


「それじゃあ、こっちの気が済まないんだよ。」


「そうなんだ?星乃君って意外と律儀なんだね。」


「そうでもなさ。そんなことよりもこれからどうする?」


 時刻は一時ほど。

 BBQを開始して三時間ほどが経過していた。


「そうだね。まだコテージに入るのも早すぎるし散歩でもする?」


「それいいな。今日は快晴だしここは空気がきれいだからきっと気持ちいいだろうな。」


「うん!じゃあ行こうよ星乃君。」


 ウキウキしながら月が見つめてきた。

 不覚にもドキッとしてしまった自分がいた。


(おいおい。何をドキッとしてるんだ俺は。こいつは三次元。俺が好きなのは二次元だろう。)


 俺は自分にそう言い聞かせ、月と一緒に山に散歩に行くことにした。

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