第23話 俺の責任だよな?

 今日からゴールデンウイークが始まった。

 が、俺は実家に帰るということもなく家でダラダラ過ごしていた。

 特に休日に遊びに行くような友達がいないため何もすることがないのだ。

 美波はきっと今頃は彼氏とどこかにデートに行っているころだろう。

 よって、俺の知り合いで遊べるような人物はいないのだ。


「でも、ゴールデンウイークは結構配信が盛んになるからいいんだよな。」


 俺はそう言いながらPCの電源をつけて配信サイトを開いた。

 すると、俺の好きな配信者がライブ配信をしていたのでそれを見ることにする。

 やっぱり配信を見るのは楽しい。

 トークは面白いし、何よりもかわいい。

 やはり二次元こそが至高。

 俺はそう思う。


 ピンポーンピンポーン


 俺が一人配信を楽しんでいるとインターホンが鳴った。

 時刻は午前十時。

 こんな時間に俺の家のインターホンを鳴らす人物など一人しかいないだろう。


「はいはい。どうした?」


 玄関を開けてすぐ俺はその人物に話しかけた。


「いや、せっかくの連休だから星乃君と一緒に遊ぼうと思って!」


「そうか。じゃあ何するんだ?」


「あれ?なんだか今日はいつもよりも素直だね。いつもなら、”嫌だよ。帰れ。”とか言ってきそうなのに。」


 少し驚いた様子で月がそういっていた。


「いや、なんかそういっても結局押し切られるからあきらめた。」


 俺はそんな月ににっこりしながらそういった。


「そっかそっか。ついにあきらめてくれたんだね。」


「それはもういいから何するんだ?」


「どうしようね?どこかに行く?」


 月は顎に手を当てながら考えていた。


「俺は何でもいいからお前は何がしたいんだ?」


「星乃君と付き合いたい!」


 自信満々にそういった。


「却下!」


「え!?即答?即答なの?」


「言ってるだろ今のところ誰かと付き合う気はないって。」


 こいつは何でこんなにも俺と付き合いたがってるんだ?


「残念。何しようか?」


「俺に聞かれてもな。別にお前がしたいことでいいぞ?」


「て言われるとこれといって何もないといいますか。」


「なんだよそれ。」


 もじもじしながらそういう月に俺は思わず突っ込みを入れてしまう。


「だって、買い物は前行ったし映画も見に行ったし海とか行くのは早すぎるし。」


 今までやってきたことをならべながら月はそういった。


「とりあえず今日は家でゆっくりするのはどうだ?」


「え?星乃君の家で?」


 少し驚いた様子で月が俺のことを見つめてくる。

 不覚にも少し可愛いと思ってしまった。


「ああ。別にいいぞ。」


「じゃあそうする!」


「即答かよ。」


「うん!星乃君と過ごすの楽しいし!」


「そうか。」


 そんなにストレートに言われると少し照れるな。


「じゃあ、とりあえず中に入れよ。」


「お邪魔しまーす。」


 月はそういって家に入ってきた。

 もう何度か入っているからか少し慣れたような様子だ。


「で、何する?雑談でもするか?」


 俺は月にそう提案する。


「星乃君から誘われるなんて、、、君本当に星乃君なの?」


 こいつ、なんでこんなに驚いてるんだ?

 俺そんなにおかしなこと言ったのか?


「そうだが?そんなにおかしなこと言ったか?」


「いや、星乃君から誘われるなんてあんまりにも珍しくて。」


 そんなに誘わなかったか?

 よし、今までの行動を思い返してみよう。

 そうして俺は今までの自分自身の言動を振り返ってみることにしよう。


(”いや、全然。俺三次元に興味ないからさ。”忘れてるっていったい何のことだ?”)


 たしかに、誘われたことは何回もあるが俺から誘ったことはほとんどなかったな。


「うん。確かに俺から誘う事なんてほとんどなかったな。」


「そうだよ。いいね!しようよ雑談。」


「ああ。」


 とりあえず何とかなったか。


 …………………………………………………………………………………………………


「で、何話す?」


「俺から一つ聞きたいことがあったんだがいいか?」


 そう。ずっと気になってたけど聞きにくくて今まで聞けなかった話。

 何となく今なら聞ける気がする!


「うん!もちろんいいよ。何でも聞いてよ!スリーサイズ?」


「違うから!いきなりなんてことを言ってんだお前は。」


「いや、気になるかなって?」


「俺をレベルの高い変態にするな!」


 全くこいつはいきなり何を言い出すんだ。


「じゃあ聞きたいことって何?」


「お前って学校に友達いるのか?」


 そう。俺はこのことをずっと聞きたかった。

 同じクラスであるのにこいつが俺以外の誰かと話しているのを見たことがなかったのだ。

 だからこそ、俺はこいつに友達がいるのか気になる。

 もしかしたら虐めにあっているのかもしれないと思うとなんだかもやもやするからだ。


「なんでそんなこと聞くのかな?」


「いや、ただ単にお前が俺以外と話しているところを見たことがないと思ってな。」


 俺が神楽澪音の告白を断ったことでさらに月に対するあたりが強くなってしまったらと思うとさすがにいい気はしない。


「そっか。じゃあ本当のことを言うけどさ、私には友達はいないよ。星乃君は知ってると思うけど転校したばっかりでなんでか知らないけどハブられちゃって、ははは。」


 そう言いながら月は力なく笑う。


(そんな風に笑わないでくれ。転校したばかりで虐めまがいな行為を受けているなんて話を聞いたら今までどうりに接することができなくなる。)


 きっとこれは俺にも責任があるのだろう。

 彼女が虐めを受ける要因となったのはきっと俺が神楽澪音からの告白を断ったというのもあるだろう。

 であるならば、きっと俺は彼女に対して果たすべき責任があるはずだ。


「そうか。大変だったんだな。それと今まで邪険に接してきて悪かったな。」


 彼女を学校で一人にさせない。

 それが彼女に救われた俺にできる最大限の償いであり恩返しだろう。


「ううん。謝らないで。それに星乃君はそこまで私を邪険に扱ったわけではないから気にしないでよ。」


「わかった。とりあえずゴールデンウイークはどこかに遊びに行こうか。」


「え?いいの?」


「もちろんだ。行きたいところがあったら言ってくれ。」


「そう言われると悩むなぁ~。」


「別に時間はたくさんある。ゆっくり考えればいいさ。」


 俺はそういって月の返答を待つのだった。

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