第16話 やっぱり見てくれはいいもんね?
「映画行こう!」
ある日学校で蒼は月にそんなことを言われていた。
「いきなりなんでだよ。行かないよ。じゃあな。」
蒼はそういって帰ろうとしていた。
「ほんとにいいの?この映画星乃君の好きな配信者とコラボしてて入場者特典がもらえるんだけど?なんとそんな映画のチケットがここに二枚!」
月はそう言いながらチケットを二枚ひらひらさせる。
「なにしてんだ~早く映画行くぞ~」
蒼はすでに歩き出していた。
やはり彼の第一優先は推しのようだ。
「え!行動が速い!?ちょっと待って~」
そう言いながら月は蒼を追いかける。
「ていうか、星乃君はこのコラボのこと知らなかったの?」
「いや、知ってたけどチケットが手に入らなかったんだよ。」
「え?そうなの?」
「お前はそのチケットどうやって手に入れたんだ?」
「これは美波さんにもらったの!」
「マジかよ。あいつすげぇな。」
「もらったのは私なんだから感謝してよね!」
「はいはい。ありがとうね。」
二人はそんな話をしながらも映画館に向けて歩き続けていた。
学校終わりにすぐということもあって二人の服装は制服であり蒼は髪を軽く整えた程度である。
月も長い金髪を結ぶことなく下ろしているが日ごろからしっかりと手入れをしているようでサラサラしていて夕焼けを反射していてとても綺麗だった。
(ほんとこいつ見てくれは完璧なんだよな。)
蒼はそんな月を横目に見ながらそんなことを考えていた。
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「映画館なんて久しぶりに来たな。」
「そうなの?」
「ああ。中学三年のころに何回か行ってから来てないな。」
「そうなんだ。」
「どうする?ポップコーンでも食べるか?」
「いいね!じゃあ私はキャラメルで。」
「わかった。買ってくるからお前はここで待っててくれ。」
「そんな悪いよ。」
「気にしなくていい。チケットをもらってるんだからこれくらいは奢らせてくれ。」
「そこまで言うならわかった!よろしくね。」
「あ、お前飲み物はどうする?」
「じゃあ、私はコーラでお願いします!」
「了解だ。」
そういって蒼は列に並んだ。
そこから数分してポップコーンを受け取ると月の下へ戻るのだが、
しっかり絡まれていた。
(確かにあいつ見てくれいいもんな。)
蒼はそんなことを考えながら月の下へと歩を進める。
「何してるんですか~?」
「あ?なんだよお前。ナンパの邪魔すんなよ!」
いかつい男が蒼を睨みつけていた。
髪は金色で短く刈り上げておりまさしく不良といった印象を受ける男だった。
身長は蒼と同じくらいあり体格にも恵まれているようだった。
「いやいや邪魔なんてしてませんよ?でも、あなたがナンパしてる人俺の連れなんですよ。それに彼女嫌がってると思いますし。」
「ああ!?」
蒼がそう正論を並べていると男はさらに怒声をあげる。
(はぁ~これだから単細胞は嫌いなんだよな。)
そんな様子の男に蒼は内心で悪態をつく。
「とりあえず陽炎こっちにおいで。」
蒼は今まで月に対してかけたことのないくらい優しい声でそういい手招きをした。
「うん。」
「お前何を勝手に!?」
男は言いながら月の腕を掴もうとした。
「触るな。」
その男の手首を蒼が掴んでいた。
しっかりと力を込めて。
「どうします?結構人に見られてますけどこのまま大事にしますか?」
蒼は落ち着いた様子で男にそういった。
勿論蒼の片手はポップコーンなどが乗ったトレイでふさがっている。
そこからポップコーンが全くこぼれていないところを見るとすごい体感の持ち主のようだ。
それに周囲を見てみれば人が集まってきているためいつ警備員が来てもおかしくはなかった。
「ちっ、」
男は舌打ちだけするとどこかに走って行ってしまった。
「災難だったな。大丈夫か?」
「うん。まあね。助けてくれてありがとう。」
そういう月の頬は少し赤くなっていた。
「いや、全然大したことしてないし。それより早く映画行こう。俺まだ入場者特典もらってないから早く受け取りたいんだ。」
「ほんと星乃君はそればっかりだよね。」
今度は少し不機嫌そうに頬を膨らませていた。
「まあな。これが俺の生きがいだからな。」
蒼はそんな様子の月に目もくれずに言い切った。
「まあ、いっか。そうだね入場はもう開始してるみたいだし行こうか!」
「おうよ!」
こうして二人は映画館の中に入って行った。
(それにしてもあの男よく制服を着た女子高生をナンパしようと思ったな。確かに陽炎はそこら辺の芸能人よりも容姿が整っているが下手すれば普通に通報案件だろうに。)
映画館に入りながら蒼はそんなことを考えていたのだった。
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