第14話 勝手に暴露しないでよ!
「あ、えっと私は、」
あわあわ焦りながら視線をきょろきょろとさせている。
「そいつはただのストーカーだよ。」
蒼は頬杖を突きながらそう答えた。
「ストーカー?」
「ああ。ストーカーだ。おまけに不法侵入までしてくるんだから笑えない。」
「ちょっとそんないい方しなくても、、、」
美波は月のほうをちらっと見ながらそんなことを言っていた。
どうやら気を使っているようだった。
「まあ、確かにしたけどさ。」
月はそういうと頬をふくらませることで不満を訴えていた。
「あ、本当にストーカーなんだ。」
そんな様子の月を驚愕の表情でみつめる美波。
カオスであった。
「月ちゃんは蒼のことが好きなの?」
「そりゃもちろん好きですよ。好きじゃなかったらストーカーになんてなりませんから。」
そういって自信満々に胸を張っている。
「なんで好きなの?言っちゃなんだけど、今の蒼ってそんなに魅力があるわけではないと思うんだけど。顔は整ってるし身なりも清潔ではあるけど三次元に興味なんてないしきっと冷たくされるよ?」
「おい。言い過ぎだぞ美波。自分でもわかっているとはいえ他人から言われると結構きつい。」
「でも、事実だからしょうがないじゃない。」
そういって美波は月に向き直る。
「それは内緒です。」
月は珍しく顔を赤らめながらそう答えていた。
「私にだけ教えてくれない?」
だが、美波は引き下がらずぐいぐいと攻めていた。
「それなら、」
「聞いた通りだから。蒼は適当にそこら辺をぶらぶらしてて!あっ!帰ったらだめだからね。」
「そんな理不尽な、」
「いいから行った行った。」
美波に手でしっしとやられてしまい蒼はフードコートの外に出た。
(本当に帰ったらダメかな。ダメだろうな~。)
そんなことを考えながら蒼はてくてくと歩き始めたのだった。
……………………………………………………………………………………………………
「で、月ちゃんは蒼のどういう所が好きなの?」
「いきなりですね。まあいいですけど、その前に私から質問いいですか?」
「お!いいね~。私そういうの嫌いじゃない。何でも答えたげるからかかってきなさい!」
そういって美波は胸を張っていた。
「じゃあ、美波さんは星乃君のことが好きなんですか?」
「いきなり攻めてくるねぇ~。でも、答えはNOだよ。それに私彼氏いるし。」
「え?彼氏がいたんですか?」
「いるよ?あ!恋敵かと思って心配しちゃった?ごめんごめん。」
美波はあはは~とわらいながらそういっていた。
「じゃあ、次は私の番だ。月ちゃんは蒼のどういう所が好きなの?」
そういう美波の表情には先ほどのふざけたような感じは何もなくまるで観察しているかのような眼差しを月に向けていた。
「星乃君の優しいところが好きです。」
「あれ?でも最近あったんだよね?蒼と。」
「いいえ。それは星乃君が覚えていないだけで私は中学三年生の時に星乃君とあってるんです。」
月はそんなことを言った。
「そうなの?それって何月くらい?」
「えっと、たしか五月くらいだったと思います。」
月は少し考えた後にそういった。
「なるほど、優しいか。」
美波は少し含みのある言い方で優しいという言葉を復唱した。
「どうしたんですか?」
そんな様子の美波を不審に思ったのか月は美波に尋ねていた。
「う~ん、今から私が言うことを誰にも言わないでね?」
美波は話し始める前に言った。
「え、まあいいですけど。」
「月ちゃんは何で蒼がああも三次元のことが嫌いになったか知ってる?」
「え?知らないです。そういう話してくれないし、そもそも苗字すらあんまり呼ばれることがありませんから。」
「理由は二つあってね。一つ目は小学生のころに濡れ衣で信頼していたグループの人から攻められたことがあったの。その時はまだ私がいたし何とか立ち直ったんだけどね。そのあとは何事もなく中学に進学してその人たちと関わることもなく楽しそうに過ごしてたの。でもね、中学三年生の十月ごろかな?蒼が一年間付き合ってた彼女に浮気されちゃって。しかもその相手が小学生の時のグループの男の子でその時に蒼は完全に人を信用することをあきらめちゃったの。これが二つ目。」
美波はいい終えるとふぅと息をついた。
「そんなことがあったんですか?」
「うん。だから正直今の蒼を攻略するのはかなり難しいと思うよ。」
「でも、私あきらめたくないんです。」
月は美波を見つめていった。
その瞳にはあきらめなんて感情は微塵もなく本気で蒼のことが好きなんだとわかる。
「そっか、じゃあ私も協力するよ!」
「ありがとうございます!」
こうして、蒼の知らないところで彼の秘密は暴露され蒼の幼馴染とストーカーによる共同戦線が出来上がっていたのだった。
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