第12話 やっと買い物に行けるんだね?
蒼は月に連れられてショッピングモールに来ていた。
時刻は十時ごろであり、開店してすぐといったところだ。
だが、日曜日ということもあり人はかなり多かった。
「これ人多すぎないか?」
ショッピングモール内にいる人の数を見て蒼はぼそりと呟いた。
「そう?大体どこもこんな感じじゃない?」
月は蒼のほうを向きながらそう言った。
どうやらこの程度の人ごみは慣れているようだ。
「マジかよ、もう帰りたいんだけど。」
「何言ってんの?ほら行くよ!」
月はそういうと蒼の腕を掴んで歩き出す。
どうやら目的地は決まっているらしくその歩みに迷いはなかった。
「これどこに向かってんだ?」
「服屋さんだよ。」
「それ俺いるか?」
蒼は自分の服を誰かと買いに行った経験があまりないためなんで自分が連れていかれるのかわかっていないらしい。
「もちろん。星乃君に服を選んでもらいたいからね!」
ふふんといった効果音が似合いそうな表情に胸を張りながらそういう月。
そんな様子に周りにいた男性がちらちらと月のほうを見ているのが分かった。
(やっぱりこいつ見てくれはかなりいいよな。実際こんだけの数の男の視線を集めてるわけだし。)
蒼は周りを見ながらそんなことを考えていた。
「ん?星乃君どうかした?」
そんな蒼を不審に思ったのか月が蒼の顔を覗き込むように見つめてきた。
「いや、やっぱりお前って見てくれはいいんだなと思ってな。」
「見てくれはってどういう事?それ以外はだめってこと?」
どうやら蒼はまたも地雷を踏んでしまったようだ。
「いや、そんなことは無いが。」
(やばい、また地雷踏んだ。)
「そう?じゃあ、他にどんなところがいいか言ってみてよ。」
月は蒼にそんな無茶ぶりをしていた。
「そうだな。料理がうまいところとか気遣いができるところかな。」
蒼は言いよどむことなくはっきりとそう言った。
実際蒼は月の料理スキルや気遣いのうまさなどをかなり評価していた。
まあ、ストーカーしてくることを考えるとトータルでマイナスではあるが。
「そ、そうかな。」
月はそう返答しながら蒼の手を掴んでいる手の反対の手で自身の髪抜けをいじっていた。
顔を見ればその頬は少し赤くなっていることが分かる。
どうやらあまり他人に褒められることには慣れていないようだった。
(こいつ、自分からはぐいぐい来るくせに推しには弱いんだよな。)
蒼はそんな様子の月を見ながらそう考えていた。
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「じゃあ、私は試着してくるからここで待っててね。」
月はそういうと試着室の中に入って行った。
(やっぱりこうなるんだな。俺人の服がどうとかあんまりわかんないけどな。)
内心でそんなことを考えながら試着室の前で待つ蒼。
「あれ?もしかして蒼?」
そんな蒼に後ろから声をかける人物がいた。
その人物は蒼がよく知る幼馴染の美波であった。
髪色は綺麗な黒髪でウルフカットにしており、服装は涼しそうなTシャツの上に水色のカーディガンを羽織っている。
下はジーパンを穿いており動きやすそうな格好であった。
「お前美波か?」
「久しぶりだね蒼。こんなところで何してるの?」
「ああ。知り合いの買い物に付き合ってるんだ。」
「もしかして彼女さん?」
美波はにやにやしながら蒼に問い掛ける。
「そんなわけないってお前ならわかるだろ?」
即座に蒼が否定する。
その表情はいつもよりもやや暗くそして声のトーンも数段低く聞こえる。
「そうだったね。ごめんごめん。忘れてたよ。」
美波はあはは~と笑いながらもしっかりと謝る。
こういう所は昔と変わっていないようだ。
「そんなことよりお前こそこんなところで何してるんだ?デートか?」
「いや、今は一人だよ。ほら、そろそろ気温があがってくるから服を買いに来たの。」
「なるほどな。」
二人がそんな会話をしていると試着室のカーテンが開かれた。
「さっきから誰と会話してる、の?」
そこには驚愕に顔をゆがめた月が立っていた。
(これはまた面倒なことになりそうだな。)
そんなことを考えながら蒼は内心であきらめるのだった。
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